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2023年世界10大政治リスク

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2023年世界10大政治リスク

バフェットの投資哲学はコロンビア大学時代の恩師、経済学者のベンジャミン・グレアム(1894年生、1976年没)の理論がベース。グレアム自身、「バリュー(割安)投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれるプロの投資家でもありました。

グレアムは1929年の大恐慌を契機に投資の研究を開始。2冊の名著「証券分析」(1934年)「賢明なる投資家」(1949年)を出版。とくに後者は、バフェット曰く「投資についての最高の書籍」。

グレアムは株価変動に拘泥することを戒め、「市場は短期的には投票機械のように振舞うが、長期的には錘(おもり)を計る機械のように機能する」と表現。つまり、長い目で見ると株価はその企業本来の価値と等しくなることを指摘。

投資家は企業の財務状況を分析することに時間を費やすべきであり、自身の分析に従って投資することを推奨。つまり、市場のムードで売買することに否定的でした。

グレアムの影響を受け、バフェットの基本スタイルは長期投資。保有株の内在価値最大化を目的とし、内在価値と乖離した高い株価を好まず、株価は内在価値を反映した妥当な水準であることが望ましいと述べています。

PER(株価収益率)等の指標が単に割安な企業(株)を買うのではなく、数字に表れないもの(例えば経営者の能力等)を含め、分析の結果としての内在価値が高い企業への投資に腐心。普通の企業を格安で買うより、優れた企業を相応の価格で購入すべきとしています。

その基本的考え方の下で、バフェットの「投資の4条件」は、第1に事業内容を理解できること、第2に長期的に好業績が予想されること、第3に経営者に能力があること、第4に価格が魅力的であること。

事業内容が複雑で自分が理解できない分野には手を出さないため、基本的にはハイテク分野、IT企業投資には消極的。その一方、長期的な好業績要因としてブランド力や価格支配力を重視し、その観点からIBM等には投資していました。

バフェットは分散投資を行わず、自ら設定した基準を満たす優れた企業を買収、あるいは株を大量取得。買収企業は元の経営陣に経営を委ね、資本の安定と適正報酬によって安心して経営できる環境を提供。この方針は、企業売却を希望するオーナー経営者を魅了したと言われています。

バフェットには多くの名言があります。個人的に最も感銘したのは「リスクとは自分が何をやっているかよくわからない時に起こるもの」という名言。これは、企業経営のみならず、国の経営にも共通する示唆と言えます。

バフェットはこの投資哲学を堅持し、1965年にハサウェイの経営権を握ってから2015年までの50年間に複利計算で年率21%の収益率を実現。今や総資産9千億ドル(100兆円超)の巨大な投資会社です。

ところが2010年代、ハサウェイの収益率が市場平均並みにとどまり、しかもIT株と中国株に投資し始めました。バフェットも限界を迎え、投資方針を変えたのではないかという憶測を呼んでいました。

上述のとおり、バフェットは「投資の4条件」に照らし、IT分野のように変化のスピードが速く、事業内容の理解が難しいものには投資しないと公言していたからです。

中国株も同じです。中国企業の実態はよくわかりません。しかし2010年代後半、バフェットは「ハサウェイは今後15年間に中国株に対してより大規模な投資を行う」「過去数10年間に中国で起きた変化は信じがたいものであり、こうした変化は今後も続き、中国経済は引き続き成長する」と言及していました。

こうしたことが、バフェットの投資方針に対する憶測を呼んでいたのですが、ここにきてのハサウェイの3年連続トップ10入りと順位アップ。バフェットのIT、中国重視姿勢は示唆に富んでいます。

しかし、そのITを支える半導体を巡る米中対立。ウクライナ戦争も発生して世界経済のデカップリング(分断)が進んでいます。

IT株も中国株も先行きは予断を許しません。しかし、米国や中国自身がIT等の技術革新によって大きく影響されていることは間違いありません。「しかし」という逆接の接続詞が続くことが、深層を読むことの困難な状況を示しています。

イーロン・マスク率いるスペースX社のスターリンク(コンステレーション衛星)をウクライナが使うことによって、ロシアが彼ら自身にとって思わぬ苦戦に陥っています。

ITや宇宙に関わる企業が国家を上回る力を発揮しているとも言えます。ITが世界の経済や社会のエコシステム(生態系)の支配的要素になりつつあります。

バフェットの投資行動はそれが一過性の出来事でないことを示唆している気がします。中国が成長するかどうかは予断を抱けませんが、ITは間違いないようです。

長期的成長や技術力、ブランド力を重視するバフェット。日本株にはほとんど投資せず、日本企業にも関心を示していません。その事実が何を物語っているのか。日本の各界指導者や企業経営者は、深刻に受け止める必要があります。


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