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アイスランド以上の悲劇

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アイスランド以上の悲劇

今週14日「日本発の津波が世界を襲う」というネット上のコラムが一部の市場関係者の間で話題になりました。日本の財政状況に警告を発しているフェルナンド・ウルリッチというエコノミストの動画内容の要約です。このように言われること自体、日本の危機を表しています。このメルマガが着信する頃は、日銀政策決定会合の真っ只中か、終了後でしょう。決定事項に注目したいと思います。

1.アイスランドの悲劇

アイスランドで昨年稼働した「オルカ」については、メルマガ474号(2021年11月9日号)で取り上げました。

ジオエンジニアリング(気候工学)の手法のひとつであるCO2直接回収(Direct Air Capture)プラントです。

「CO2収集機(コレクター)」のフィルターで大気中のCO2を吸着し、地下貯留する仕組みです。プラント稼働には近郊のヘリシェイディ地熱発電所の廃熱を利用します。

DACプラントでは再エネを使用することが大前提です。除去するCO2量よりもプラント稼働で排出するCO2量が多ければ意味がありません。

そういう観点で火山国アイスランドは適地です。日本も火山国。地熱発電の潜在力は世界有数であることから、DACプラントを造る敵地としてアイスランド同様に有望です。

「オルカ」を取り上げる以前にも、アイスランドに注目した機会がありました。それはリーマン・ショック後の「アイスランドの悲劇」です。

アイスランドは2008年のリーマン・ショックが直撃し、株価や地価が暴落。大手銀行が相次いで破綻し、その救済のために財政が急激に悪化しました。

アイスランド通貨クローナは急落。アイスランド中央銀行は政策金利を18%まで引き上げて通貨防衛を図りましたが、経済や財政運営の観点から金利引上げには限界があり、市場の圧力に屈しました。

アイスランドは「通貨暴落(為替減価)」「金融引締の制約(限界)」「資本流出」という「負の連鎖」に直面し、教科書通りの「通貨暴落を契機とする金融危機」に陥ったのです。

アイスランドに残された選択肢は資本移動規制のみ。結局、2008年11月に資本移動規制を導入。通貨の信認が失われるとこうなるという「お手本」です。

IMF(国際通貨基金)の支援はあったものの、アイスランドは自力で経済と財政を立て直しを余儀なくされ、税金や公的手数料等が5割増、2倍に上昇。

重い負担に耐えかね、全人口の約3%が国外流出。日本の人口に換算すると約300万人です。その後の厳しい経済環境に国民の不満は高まり、2010年初には金融危機の元凶となった民間銀行幹部の豪邸を暴徒が焼き討ちしました。

2010年9月、金融危機対応を巡る政府の不手際を弾劾するための特別法廷が設置され、2012年4月、同法廷は当時のゲイル・ホルデ首相に有罪判決を下しました。

アイスランドが国民の重い負担によって財政状況を改善し、資本移動規制を解除できたのは2017年3月。規制導入から8年4ヶ月後のことです。

日本の現状は巨額の財政赤字と中央銀行資産の肥大化。これを「問題だ」という意見と「問題ではない」という意見の両論があります。

その点はメルマガ476号(2021年12月14日)で整理しました。前者をTMT(伝統的金融理論)、後者をMMT(現代的金融理論)と称して解説しました(ご興味があればHPからバックナンバーをご覧ください)。

問題かどうかは別にして、ここまで財政赤字と中央銀行資産が膨脹した中でTMT的立場の論者が早急な財政健全化を訴えてみても所詮「絵に描いた餅」。

一方、MMT信奉者の「国債はいくら発行しても大丈夫」という主張も、壮大な社会実験。財政崩壊しないことを誰も保証できません。

したがって、現状を前提として何ができるかを具体的に考え、実践するRMT(現実的金融理論)を推奨しました(これも、ご興味があればHPからご覧ください)。

この一連の内容に関して、今年3月、国会議員の中でMMT信奉者の代表格と言える西田昌司参議院議員のYouTubeチャンネルで対談しました。

僕はRMT的立場ですので、TMT的立場よりはMMT的立場とも議論の接点は見出せる展開でした。これもご興味があれば、西田議員のYouTubeチャンネルでご覧ください。

その中で、西田議員に伝えたことは、仮にMMT的主張(国債が国内消化されている限り発行量に限界はない)が国内的には理解されても、海外が日本の経済や財政の状況に懸念を抱けば、円売り、円安、円暴落という形で危機に発展する可能性はあるということを申し上げ、その点の認識は一致しました(と思っています)。


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