488

アイスランド以上の悲劇

事務所

アイスランド以上の悲劇

3.「自縄自縛」と「袋小路」

黒田総裁が「異次元緩和」に着手した2013年4月時点で、国債(10年債)利回りは既に1%台に低下していました。FedやBOE(イングランド銀行)が4%や5%の高利回り下で量的緩和に踏み切ったのとは環境が異なります。

そして「異次元緩和」を自ら長期化させ、自ら「金融抑圧」によって長期金利をゼロ%程度という超低水準に維持し続けてきた結果、巡り巡って自らの資産運用利回り低下につながるという「自縄自縛」の状況に陥っています。

こういう事態は黒田総裁も予測できたでしょう。だからこそ最初は「2倍、2年、2%」という「トリプル2」を謳ったと推察できます。つまり「異次元緩和」は2年間で政策目的を達成して終了するということでした。

ところがほぼ丸10年継続。マネタリーベースは4倍以上。政策転換したくても債務超過が怖くてできない。しかしインフレ、円安が進み、内外金利差は拡大。「袋小路」に入り込んでしまいました。

黒田総裁は就任時の初期判断を誤ったのか、それとも撤退のタイミングを誤ったのか。いずれにしても残り任期は1年を切りました。

仮に債務超過が現実化した場合、対応は2通り考えられます。ひとつは政府が税金によって補填すること。要するに国民の負担(血税)に依存することになります。

もうひとつは、債務超過を生み出す原因を除去すること。つまり、国債等の保有資産を売却してBS規模を縮小すること。つまり出口戦略です。

しかし日銀は、昨年3月19日の「金融政策の点検」においても、2016年9月の「総括的検証」においても債務超過問題や出口戦略には言及しませんでした。

物価目標実現のためには「長短金利操作(YCC)付き量的・質的金融緩和」の継続が適当との「木で鼻をくくった」ような見解を示すばかりです。

戦略と戦術を誤った参謀本部が、戦況を軽視または無視して作戦続行を命令する愚行を彷彿とさせます。

続行すればするほど日銀のBSは膨張し、BSが膨張すればするほど債務超過の懸念は高まります。

仮に日銀の債務超過を税金で補填する展開になった場合、「異次元緩和」という「金融抑圧」によって国が享受してきた利払費抑制という恩恵の「ツケ」を、巡り巡って国民が負担するという構図です。

今年度当初予算に計上された利払い費はわずか8.2兆円。1000兆円以上の国債発行残高に対して8.2兆円ですから、利回りは1%以下ということです。

上述のように仮に1.2%利上げをすれば、利払い費が12兆円増加することになります。予算編成を圧迫し、日銀の損失補填も容易ではありません。

日銀はそういう事態に陥るまで、「異次元緩和」と「財政ファイナンス」の修正に着手しないのでしょうか。いや、着手したくてもできないと見るべきでしょう。

日銀が必要な時に金利引上げができなければ、「円安」「インフレ」「円安」というサイクルが続きます。国内からの資金流出を助長し、「アイスランド危機」のような事態になりかねません。

「自縄自縛」と「袋小路」に陥っているために「金利を上げたくない(上げられない)ので上げない」という不真面目な態度も、金利を上げないでよい論理を説明するために「国民の物価上昇許容度が高まった」という詭弁を弄することも、永久に続けられるわけではありません。

インフレや円安が臨界点を超える段階では、国内からの資金流出が加速し、不真面目な態度も詭弁も続行することができなくなるでしょう。その段階では「アイスランド危機」と同じく、資本移動規制に追い込まれる可能性も否定できません。

その先にあるのは「アイスランド以上の悲劇」です。そうならないために、今できることはRMT。財源捻出と出口戦略と財政健全化を同時に見据えた対応です。

「不都合な真実」に目を向けない日本社会。金融政策や財政状況に止まりません。手品のような解決策はありませんが、まずは様々な実態を正直に説明することが解決の道への第1歩です。

(了)



関連する記事はありません。

 menu LINK