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洋上風力発電

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洋上風力発電

2.カーボンニュートラルの救世主

洋上風力には着床式と浮体式があります。世界初の浮体式は2009年にエクイノール(当時の社名はスタトイル)がノルウェイ沖で稼働させました。

風車を乗せる浮体には「スパー(円筒)型」「バージ(艀<はしけ>船)型」「セミサブ(半潜水)型」という3種類があります。

「スパー型」は釣りに使う「長い浮き」のような形状をした円筒状の構造物。下半分がコンクリート製、上半分は鋼鉄製が一般的です。

「バージ型」は喫水(浮体最下面から海面までの距離)が浅い構造物、「セミサブ型」は一部を潜水させるために喫水が深い構造物です。

風車の大きさにもよりますが、「バージ型」「セミサブ型」は水深10mから30mぐらい、「スパー型」は100m程度の深度が必要です。

巨大構造物を海上で造ることはできませんので、港湾から曳航します。まずは深度の大きい港湾が必要です。

曳航時にバラスト水(船体に貯留する海水)を操作し、着床式の場合はSEP船(自己昇降式作業台船を有する作業船)も活用。SEP船昇降用脚を海底まで押し下げて台船(プラットフォーム)を海面上に上昇させます。

浮体の海底との係留方式は「カテナリー型」が主流。「カテナリー」は「懸垂曲線」という意味であり、ロープの両端を持って垂らした時にできる曲線のことです。「張力脚型」もあります。海底との係留を垂みなく行うものです。

浮体式の発電コスト(建設コストを含む)は着床式より高額です。しかし今後、欧州では浮体式コストが着床式並みに低下すると予想されているため、欧州では浮体式が主力電源となるパラダイムシフトが起きつつあります。

上述のエクイノールは、2030年までに浮体式コストを4.8円から7.2円程度(1ユーロ120円換算)に縮減可能としています。

実現すれば浮体式の活用が進み、洋上風力設営地点の離岸距離と深度に劇的な変化が起きます。あるいは、離岸距離が長くなり、深度が深くなることで浮体式コストが劇的に下がるとも言えます。鶏と卵の関係です。

2019年に欧州で設営された洋上風力の平均離岸距離は35km。領海(約22km)外側のEEZ(排他的経済水域)に入っており、平均深度は33m。今後は離岸距離100km超、深度100m超でも設営していくことが計画されています。

メリットの第1は、沖合ほど風況の良い海域を利用できることです。平均風速が15%速い海域では発電量が50%以上増加します。発電量増加率が沖合進出による費用増加率を上回れば、発電コストは低減することになります。

第2に、陸上の系統接続に有利な場所に海底送電線の陸揚げ地点を選定できます。

第3に風車大型化。発電量は風車ブレード(風車翼)受風面積に比例するため、大型化は発電コスト低減を意味します。道路等の制約から風車の陸上輸送可能寸法には限界がありますが、洋上では港湾から設営地点に海上輸送するため、大型化が可能です。今後建設される出力10MW超の浮体式の風車は、50階建高層ビル以上の高さになるそうです。

2050年カーボンニュートラルを国家目標とした日本。再エネ発電割合を2019年17%から2050年には50%以上に高めることを掲げていますが、鍵を握る技術のひとつが浮体式です。政府は2040年までに原発45基分相当の事業認定を目指しています。

国土が狭く森林率の高い日本では太陽光と陸上風力には限界があります。一方、日本のEEZ面積は世界6位。遠浅が少ない日本周辺では、着床式よりも浮体式が適しています。

日本近海で離岸距離30km以内、深度200m以内、年平均風速7m以上の海域で、深度50m以内を着床式、水深50m以上を浮体式として試算すると、浮体式の設営可能面積は着床式の約5倍あるそうです。

「20年遅れ」の洋上風力を「カーボンニュートラルの救世主」にできるか否か、その成否は浮体式が握っています。


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