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洋上風力発電

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3.再エネ海域利用法と改正漁業法

浮体式への期待は大きいものの、着床式が既に世界で数千台30GW以上稼働しているのに対し、浮体式は昨年8月時点で5ヶ国8プロジェクト15台5.5MW規模。

これまで浮体式が進んでいない最大の理由はコスト。主に初期建設費用が原因ですが、前項で示したとおり、沖合化、大規模化で今後採算が改善する見込みです。

波や潮流の影響で傾く危険があるという技術的問題も徐々に改善し、EEZ等の沖合風況データや関係法の整備も進み始めています。

それにしても「20年遅れ」に至った過去数年間は残念です。2012年開始の再エネ固定価格買取制度(FIT)では、太陽光は42円(石炭火力発電コストの3倍超)、設営コストを上回る水準に設定されて太陽光バブルが起きました。

一方、洋上風力買取価格は36円。それなりの水準でしたが、設営コストはカバーできず、普及するはずありません。本気で導入促進する気がなかったということでしょう。

そもそも、政府がエネルギー基本計画に再エネを「主力電源化」と明記したのは2018年。洋上風力本格化の法整備は2019年です。そこまでの不作為が「20年遅れ」の原因です。

現在の第5次エネルギー基本計画では、2030年総発電量に対して風力が占める割合は僅か1.7%程度。

一方、日本風力発電協会は洋上風力の中長期導入目標を2030年10GW、2050年37GWと設定。既に準備中、審査中案件が実現すれば、十分達成可能と見込んでいます。官民の意識格差は大きく、要は政府のヤル気次第です。

第6次エネルギー基本計画は9月3日からパブコメが始まりました。本気の計画になるように注視していきます。

2019年に制定されたのは再エネ海域利用法。洋上風力の事業要件を満たす海域を促進区域とし、事業者に最大30年間占用を認める内容です。日本版「セントラル方式」です。

昨年末には政府が洋上風力産業ビジョン(第1次)を策定し、風力発電業界も「日本洋上風力タスクフォース」を立ち上げ「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を組織。2030年までに10GW、2040年までに最大45GWの案件実現を目標としました。

発電コストも2035年までに9円以下とする野心的目標を掲げています。北欧水準に近く、国内の原発、石炭火力より安くなります。

送電網や基地港湾の整備、洋上風力発電設備の国内サプライチェーン形成も謳っています。英国では北海石油産業が洋上風力産業に転換しました。日本でも造船、鉄鋼等、洋上風力産業の裾野はかなり大きいと思います。

こうした動きに先立つ2018年12月、70年ぶりに改正された漁業法が昨年12月に施行されました。改正漁業法も洋上風力の沖合進出と重要な関係があります。

現在の実施及び計画中案件は離岸距離数km以内、年間平均風速7.5m前後の海域ですが、沖合には中速海域(同8.5m前後)高速海域(同9.5m前後)が存在します。

沖合進出には漁業との共生が課題となります。改正漁業法によって漁業者以外の民間企業も漁業権獲得が可能となり、洋上風力設備を利用した水産資源保護区設定や養殖事業等が構想されています。

日本は漁業権が強く、昨年も千葉県沖案件で地元漁業関係者が100億円超の支払いを求めています。国が利害調整に腐心しないと、「20年遅れ」の挽回どころか、日本は洋上風力の流れから完全に離脱します。

現状の一部事例等を記します。2007年から戸田建設が長崎県五島市沖で試験を始めた浮体式は2016年に国内初の実用化に至り、2MW級の商用運転を行っています。海中最深部からブレード先端までは全長172m、海面部分は高さ96m、円筒最大直径7.8m、総重量約3400tだそうです。是非見学したいと思います。

上述の再エネ海域利用法によって促進区域に指定されているのは、現在「長崎県五島市沖」「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」「秋田県八峰町・能代市沖」の5ヶ所。有望区域は7ヶ所、準備区域は10ヶ所が指定されています。

東京電力と中部電力の火力発電会社であるJERAは、昨年6月、フランスのIDEOL社と浮体式開発会社設立に合意。欧州案件に応札し、その後は国内案件にも着手する計画。やはり昨年、浮体式に取り組む米プリンシプルパワー社に東京ガスが出資しました。

今年春に秋田沖の促進区域に投入された高さ85メートル、筒4本と巨大クレーンを持つ洋上風車専用据付船は、丸紅が2012年に買収した英国洋上風力企業の所有です。

2010年代に経産省から聞かされた「深度が十分な港湾がない」「遠浅の海がない」「北欧のような風が吹かない」「送電線予備枠がない」等々の説明が繰り返されないことを期待します。できない理由を並べるのではなく、どうやったらできるかを考える局面です。

欧州の実績では、海域選定、許認可、資金調達、建設等、計画から発電開始までに要する平均期間は約11年。日本ではこれを短縮することがキャッチアップの必須条件です。

政府による大規模な導入目標、長期間に亘る促進政策、投資環境整備が必要です。開発中、計画中案件が約30GW分も積み上がっている日本。雲散霧消しないように側面支援していきます。

(了)



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