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防衛費GDP比2%目標

事務所

防衛費GDP比2%目標

国会が始まるとNHK日曜討論が各党議論を放映します。今週末12日(日)も出演しますが、防衛政策もテーマのひとつなので、今回は頭の整理にその話題を書きます。まったく別件ですが、6月5日に国民民主党のパーティが東京で開催されます。販売ノルマがあります(苦笑)ので、私経由でご協力いただける皆様向けに「東京開催+オンライン」で経済情勢や国際情勢に関する参加人数限定セミナーを計画しています。是非ご協力、ご参加ください。後日ご案内申し上げます。

1.成長なくして財源なし

現在の国会では、賃上げ、子育て・教育、電力・エネルギー確保等の論点に関心が集まっていますが、もちろん防衛政策や財源としての防衛増税の議論も行われています。

防衛増税の具体的な手法としては、第1に法人税に対する税率4%から4.5%の付加税、第2に所得税に対する税率1.0%の付加税、第3にたばこ税の1本3円相当の引上げ等によって賄うことが想定されています。

しかし、これらの防衛増税は「令和6年以降の適切な時期」に行うとされているので、令和5年度当初予算案には当該増税は含まれていません。結局先送りになる可能性の方が高いでしょう。

1月27日の代表質問で「成長なくして財源なし」と岸田首相にお伝えしました。防衛財源のみならず、継続的に財源を生み出すには経済成長を実現することが必達です。

今年度の防衛財源については、外為特会からの繰入れ等による税外収入3.1兆円、国立病院機構等からの国庫返納等を定める財源確保法による税外収入1.5兆円、歳出改革による0.2兆円等によって賄うことになっています。

もちろん財源の議論も必要ですが「有事を起こさないこと」あるいは「有事の際に適切に対応できる態勢を整えること」の方が優先度の高い話です。

日本の安全保障政策、防衛政策は転換点を迎えました。「見たくないものは見ない」という日本社会のお家芸ではもはや誤魔化すことができないほど安全保障環境が厳しくなってきたからです。

昨年12月に決定された防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)は、反撃能力保有や新領域(サイバー、宇宙等)重点化等、遅きに失したものの、現実を直視した内容になりました。

その結果、2023年度当初予算案で防衛関係費(米軍再編経費等を含む)は過去最大6兆8219億円、前年度当初比26%増となりました。

岸田首相は「防衛力抜本的強化『元年』予算」と銘打ち、今後5年間で43兆円を防衛費に充てることを明示。初年度である今年度予算の防衛関係費は公共事業関係費(6兆600億円)を初めて上回り、一般歳出で社会保障関係費に次ぐ規模に浮上。

予算案によって実現を目指す防衛力強化策は7本柱から構成されています。その項目、及び充当された予算額から、防衛省・自衛隊の考える優先順位がよくわかりかす。

7本柱の第1は、反撃能力を構成するスタンド・オフ防衛能力。米国製巡航ミサイル「トマホーク」取得、国産「12式地対艦誘導弾」能力向上型の開発・量産、迎撃困難な極超音速誘導弾の研究等です。全体として、敵の射程圏外から反撃を可能とする長射程ミサイル等に関わるものです。

第2は統合防空ミサイル防衛能力。イージス・システム搭載艦整備、極超音速滑空兵器の迎撃技術研究等です。

第3は無人アセット防衛能力。攻撃型をはじめ多様な無人機の試験導入を掲げています。これも遅きに失していますが、遅くてもやらなくてはなりません。

第4は戦闘新領域を加味した横断作戦能力。2027年度に4000人のサイバー専門人材育成を目指し、陸自通信学校(神奈川県横須賀市)を「陸自システム通信・サイバー学校」に改編します。

警戒監視に特化した哨戒艦4隻を建造(357億円)するほか、陸海空領域横断作戦能力向上のためにフィンランド・パトリア社製装輪装甲車26両取得(136億円)。このパトリア社製装輪装甲車については、最後の方でも取り上げます。

第5は指揮統制・情報関連機能。AIを活用した意思決定に関する研究を進めるそうですが、これも今更感。しかし、やはり遅くても始めなくてはなりません。

第6は機動展開能力・国民保護機能。詳細はよくわかりませんが、緊急に桟橋を海上に浮かべて島と繋げる揚陸支援システム研究等を掲げているところから、台湾・尖閣諸島・南西諸島・朝鮮半島等における有事の際の国民救出を想定しているようです。


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