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グレートリセット

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2.世界幸福度ランキング

人々の幸福度はGDPだけでは測れません。新たな挑戦をする実例も出てきました。2019年、ニュージーランドは「幸福予算」と呼ぶ新しい予算の枠組を創設しました。

ジャシンダ・アーダーン首相は、この予算を精神衛生、子どもの貧困や家庭内暴力といった社会問題に対処するために使用すると決定し、公共政策の達成目標に「幸福」という概念を導入しました。

幸福度はGDPで定義される富のレベルだけでは決まりません。幸福度は、富や物的消費の多さより、利用可能な医療等の公共サービスの充実度や社会の安定性等の無形要素も影響しています。

2008年、ブータンのジグミ・ティンレイ首相が国連総会の演説で「GNH(国民総幸福、Gross National Happiness)」という新しい概念を紹介しました。世界がリーマンショックで右往左往している真っ只中でした。

成長至上主義、市場万能主義に対するアンチテーゼとなり、先進各国やグローバリズム、新自由主義に対する強烈なメッセージでした。

ヒマラヤに抱かれ、伝統文化を守る神秘的で清貧な国からのメッセージであったため、強烈な印象を受けたことを記憶しています。

GDPは生産活動や経済活動が対象であり、物質主義的な豊かさを数値化しています。GDPには格差や不公正は反映されておらず、非経済的な要素も加味されていません。したがって、GDPだけで国民の幸福度や社会的公正は評価できません。

一方、GNHは幸福度を示す尺度であり、幸せや豊かさを感じる心理を数値化しています。

もともとは1972年、ジグミ・シンゲ・ワンチュク国王の提唱で初めて調査され、以後、国の政策に活用されました。国民1人当たりの幸福を最大化することによって、社会全体の幸福を最大化することを目指しています。

ブータンでも国際化が急速に進む中、ブータンでは当たり前であった価値観を改めて指標化し、国の運営に反映する必要があったと聞きます。

2年ごとに人口(約70万人)の約1%に聞き取り調査を実施。合計72項目の指標に1人あたり5時間の面談を行い、これを数値化して、統計処理を行い、経年変化や地域の特徴、世代特性等を把握します。

調査項目は、心理的幸福、健康、教育、文化、環境、コミュニティ、良い統治、生活水準、自分の時間の使い方の9つのカテゴリーに分類されます。

GDPでは計測や判断ができない項目の典型例が心理的幸福です。正・負の感情(正の感情が、寛容、満足、慈愛、負の感情が怒り、不満、嫉妬)を心に抱いた頻度をヒアリングし、国民感情を示す地図を作成。どの地域の、どのような境遇の国民が、どのような感情を抱いているかが判別できるそうです。

GNHに対する批判もあります。例えば、質問項目の恣意性、誘導性です。GNHは幸福の主観的判定を誘導すること、政府が国益に沿うようにGNHを定義することも可能であり、GNHの測定は非科学的であるとの指摘もあります。

そういう批判を理解したうえでも、グレートリセットが叫ばれる中、社会や経済、そして公共政策は、新しい価値観や判断基準に挑戦していく局面です。

国連も世界幸福度ランキングを公表するようになりました。2020年版のランキングベスト10は、北欧4ヶ国を含む欧州が9ヶ国、欧州以外はニュージーランドだけ。日本は韓国61位より劣る62位。GDP世界2位の中国は94位です。

3月20日に公表された2021年版では、日本は順位を上げたものの56位。韓国62位、中国84位。フィンランドは4年連続世界一。ベストテンの顔ぶれは不動です。

ブータン国立研究所所長であるカルマ・ウラは、GNHについて次のように述べています。

「経済成長率が高い国や医療が高度な国、消費や所得が多い国の人々は本当に幸せだろうか。先進国でうつ病に悩む人が多いのはなぜか。地球環境を破壊しながら成長を遂げて、豊かな社会は訪れるのか。他者とのつながり、自由な時間、自然とのふれあいは人間が安心して暮らす中で欠かせない要素だ。GDPの巨大な幻想に気づく時が来ているのではないか。」


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