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グレートリセット

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3.シューマッハとローマクラブ

1966年、ドイツ生まれの英国の経済学者、エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハは仏教経済学を提唱しました。シューマッハはジョン・メイナード・ケインズに師事しており、本来の専門は近代経済学です。

イギリス石炭公社の経済顧問を務めていたシューマッハは、1955年にビルマ政府の招聘で同国を訪れた際、仏教徒の生活に感銘を受け、仏教の考え方、とくに八正道に基づく仏教経済学を提唱しました。

仏教は少欲知足や、物質を含めたあらゆる事物に執着しないこと、非暴力等を勧めています。

そのため、簡素(少欲知足、無執着)と非暴力を基本とする社会システム、「最少消費で最大幸福」を得ることを目的とし、自己利益だけではなく、他者の利益も考える社会や経済を推奨しています。

こうした仏教主義に対し、資本主義は物質の消費量を幸福の指標とし、自己利益、自己の効用の最大化を目的としています。

仏教主義と資本主義は対極をなす経済思想とも言え、「最少消費で最大幸福」と「最大多数の最大幸福」は対比されるべき概念です。

また、石炭公社勤務の経験と経済学者としての知見から、化石燃料の枯渇や弊害を予測し、警鐘を鳴らしました。

1973年に出版した著書「スモール・イズ・ビューティフル」で予想したエネルギー危機が第1次石油ショックとして的中し、同書は世界で注目を浴びて各国語に翻訳されました。

シューマッハは、大量消費を幸福度の指標とする現代経済学と科学万能主義に疑問を呈し、先進国から発展途上国への技術支援のあり方として、現地の環境に適した「中間技術(適正技術)」の必要性を説いています。

「中間技術」とは、環境破壊をせず、循環型の資源利用を促す技術、人間と自然が共存可能な技術という解釈が可能です。

シューマッハの理論や思想は十分に研究されていないものの、エコロジー経済、循環型社会を目指す経済思想、経済政策体系と言えます。

コロナ禍がグレートリセットの訴えにつながり、現時点において、人間はシューマッハやローマクラブが鳴らした警鐘に漸く応えようとしているように思えます。具体的な成果につながるか否かは、未知数です。

ローマクラブは1970年に設立された民間シンクタンクです。イタリアのオリベッティ社会長アウレリオ・ペッチェイと英国人科学者アレクサンダー・キングが、資源・人口・軍拡・経済・環境破壊等の地球的課題に対処することを目指して設立しました。

本部はスイス。1968年、世界各国の科学者・経済人・教育者・各分野の学識経験者等の約100人がローマで準備会合を開催したことからローマクラブという名称になりました。

ローマクラブが資源と地球の有限性に着目し、1972年にまとめた研究報告書の中で言及した概念が「成長の限界」です。

同報告書は、人口増加や環境汚染等の傾向が改善されなければ、100年以内に成長は限界に達すると警鐘を鳴らしました。

人間は「成長の限界」を超えるため、科学技術を進歩させ、開発と貿易による発展を追求し、結果的に問題をさらに深刻化させ、むしろ「成長の限界」リスクを高めていると指摘しました。

報告書の中に有名になった一文があります。曰く「人は幾何級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」。

子供が生まれてその子供がまた子供を生むため、人間は「掛け算」で増えていきます。一方、食料は同じ土地では年1回、同じ量しか生産できません。つまり、食料供給量は「足し算」でしか増やせない。この点を踏まえた警句です。

この文のオリジナルはトマス・ロバート・マルサスの著書「人口論」に登場します。人間は、マルサスやローマクラブの警鐘に応え得るでしょうか。

「100年以内に成長は限界に達する」とのローマクラブの警鐘から51年目に入りました。

現時点においてもなお、人間は食料不足も遺伝子工学や人工栽培等の科学技術で乗り切れると過信しているように見受けられます。

ローマクラブは現在も活動を続けており、日本支部は何と中部大学の中に設置されているそうです。先日のFacebookライブ「三耕探究」の中で、同大学の古澤先生から教えていただきました。

(了)



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