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戦後最長の景気拡大と霞ヶ関文学

大塚耕平

 戦後最長の景気拡大と霞ヶ関文学

  1.   1. 霞ヶ関文学
  2.   2. スロートレード
  3.   3. 十干十二支

1.霞ヶ関文学

12月20日の月例経済報告は国内経済の基調判断を「緩やかに回復」とした結果、政府は景気拡大期間がいざなみ景気に並んで6年1ヶ月に達したと発表しました。

その間の年平均成長率は1.2%。いざなみ景気の1.6%に及びません。因みに、バブル景気は5.3%、高度成長期は11.5%。今回は好調な企業業績の割には労働者賃金や家計所得が伸びず、結果として消費が低迷。好景気の実感がない国民が多いと思います。

政府は「雇用や所得の環境は好調」と強弁していますが、アベノミクスの下、雇用者数は増えた一方、1人当たり実質雇用者所得は年平均0.3%減。

たしかに、労働需給を示す有効求人倍率は高度経済成長期以来の高水準。本当に好景気ならば、この労働需給を反映して賃金が高騰するはず。

そうなっていないのは、実は好景気ではないか、あるいは、失業率低下が少子高齢化に伴う退職増、新人減という構造要因等に影響されているからです。

求人増の主役は引き続き派遣や非正規。求職側は正規社員を希望。このミスマッチが「なかなか人が採れない」「人手不足」という印象につながっています。

さらに、外国人労働者への依存が顕著。労働需給を反映した結果なのか、あるいは、外国人労働者の賃金が安いからなのか。政府も企業も熟考すべきポイントです。

冷静にデータを見ると、輸出は「おおむね横ばい」となっているものの、輸出数量は「減少している」のが現実。生産は「緩やかに増加」との判断ですが、2018年入り後は「横ばい」。輸出が減少、生産が横ばいであれば、好景気とは言い難いと思います。

在庫は既に調整局面入り。生産は2017年12月と2018年3月がほぼ同水準でピークアウト。景気動向指数(一致系列)も2017年12月をピークに低下しています。

「戦後最長の景気拡大」達成を否定するような判断は出さないという忖度(そんたく)による「霞ヶ関文学」の真骨頂です。

現時点での忖度以前に、「戦後最長」実現のための涙ぐましい過去の2つの忖度があります。ひとつは、2014年春以降に関する景気判断です。

景気動向指数のグラフを見ると、消費税率が8%に引き上げられた2014年春頃に景気の「山」があり、2016年春頃までの2年間は明らかに下降局面でした。

景気の転換点を示す「山」「谷」の基準日付は、専門家による景気動向指数研究会の議論を踏まえて内閣府経済社会総合研究所が設定します。

2017年6月に同会が開催され、当該期間の扱いについて議論が行われたものの、2014年春には「山」はなかったとの結論。忖度と言われても仕方のない結論です。

当然のことながら、当該期間が景気後退期と認定されていれば、今「戦後最長の景気拡大」が話題になることはありません。

その一方、2012年3月から年末までを無理に景気後退局面と認定。結論だけ見ると「現政権が誕生して以降は景気拡大」というストーリーづくりを忖度しているように思えます。

もうひとつはGDP嵩上げ。2016年12月、政府はGDP算定方法を改定しました。改定前のGDPは1997年度が過去最高で520兆円、アベノミクス開始2年後の2015年度は500兆円。およそ20兆円減少していましたが、改定後は1997年度と2015年度のGDPは同水準。その結果、2016年度のGDPが過去最高になりました。

具体的には、GDPに研究開発費、防衛装備品、不動産仲介手数料等を加算。特に研究開発費による嵩上げ効果は大きく、GDPを19.2兆円上振れさせました。

国連の統計基準(2008SNA)に合わせたという建前になっていますが、それとは全く関係のない項目も修正されています。それらを合算して約30兆円の上方修正でした。

GDPは国家の基礎的な統計です。GDPを忖度して改竄するようなことが行われているとすれば、もはや先進国とは言えず、中国の統計の恣意性を笑えません。

2009年に発生したギリシャ危機の発端は、政権が替わって統計を精査したところ、実は財政赤字がそれまでの政府発表の倍であったことが発覚したためです。

来年は景気の転換点に遭遇する確率が高いと予想します。過去の霞ヶ関文学の忖度についても、改めて精査する場面が出てくるでしょう。


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