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激動の車載用電池産業

大塚耕平

7日、国際政治学者イアン・ブレマー主宰の米コンサルティング会社「ユーラシアグループ」による毎年恒例の「世界の10大リスク」が発表されました。第1位は「米欧政治の混迷」、第2位は「米中摩擦激化」、第3位は「サイバー攻撃」。例年のように、14日のセミナーでも説明させていただきます。

1.千人計画

電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の環境対応車や電動車に欠かせない部品が車載用リチウムイオン電池(LiB)。

その分野で中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が市場を席捲しつつあります。

中国南部の小都市・福建省寧徳市にある同社。周辺には同社以外に目立った建物はない典型的な中国の田舎町。中国語社名は地名が由来になっています。

主力のLiBが売上げの約9割。LiB及びバッテリー管理システム、バッテリー材料リサイクルが同社の3大事業です。

ルーツは1999年に香港で設立されたAmperex Technology(ATL<アンプレックス・テクノロジー>)という電池メーカー。2005年に日本のTDKに買収されて子会社化。米アップル等に電池を供給していました。

2011年、曾毓群氏や黄世霖氏(両氏とも現CATL幹部)が技術者の一団を引き連れてATLを退社し、CATLを設立。

CATLが製造するLiBはTDKが開発したリチウムポリマー電池がベース。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのCATLのルーツと技術の源流は日本です。

CATL急成長の要因は4点に整理できます。第1は創業直後、多くの中国自動車メーカーと長期戦略提携を結び、これが成長の基礎を構築。この点は、自社グループ向けにLiBを内製化した自動車メーカーBYD(比亜迪)とは対照的です。

第2は国策の波に乗ったこと。創業直後のCATLは資本金僅か100万元(1元16円換算<以下同>で1600万円)。しかし、全額国内資金だったことから、国内電池メーカー育成を企図していた中国政府にとって最適な民族ブランドでした。

先行する外国電池メーカーの進出を国策でブロックし、CATLの成長をアシスト。同社はパナソニック、サムスン等の日韓勢のみならず、国内ライバルのBYDも抜き、世界シェアトップの車載用電池メーカーになりました。

第3に、この間、2012年に提携した独BMWから技術を吸収したことも成長に寄与。BMWや独VW等の海外自動車メーカーのサプライチェーンにも加わり、現在、欧米を中心に世界の有力自動車メーカー約20社にLiBを供給。

また、中国政府と連携し、世界の自動車部品大手メーカーから高待遇で技術者を大量スカウトする「千人計画」を推進。独ボッシュ出身者だけでも約30人をスカウト。

第4は中国が世界最大の自動車市場になったこと。今や、中国の年間自動車販売台数は約3000万台、日本の約500万台の6倍です。

EV(一部PHVを含む<以下同>)比率は日本の約1%に対して、中国は約3%。上海や北京等では同比率が約10%に接近。主要都市ではEV用充電設備が普及しています。

つまり、中国は自動車大国であり、EV大国にもなりました。2017年のEV販売台数は約78万台。欧州約28万台、米国約20万台、日本約6万台と比べると断トツです。

そのため、車載用電池メーカーのCATLも急成長。創業僅か6年後の2017年の売上げは199億元(3184億円)、純利益も42億元(672億円)。

同年の車載用LiB出荷量は11.8GWh。中国市場で約30%のシェアを占め、世界においてもパナソニックを抜いてEV用電池メーカーでトップになりました。

CATLは中国国内に3つのLiB工場を有していますが、最近では欧州にも進出し、独チューリンゲン州に初の海外生産工場を建設。同社の生産能力増は「ギガファクトリー」を脅かしています。

「ギガファクトリー」は、米テスラがパナソニックと共同で米ネバダ州に建設した巨大LiB工場。2017年1月から生産を開始しました。

その最終生産能力は年間35GWh、日産EV「リーフ」用のLiBなら87万5000台分。EV人気車種「リーフ」の累計生産台数40万台に比べ、「ギガファクトリー」の生産能力はその倍以上。それを1年で生産する能力です。

ところがCATLは、国内外での設備投資増で2020年までに年間50GWhの生産能力を目標としています。しかも「ギガファクトリー」超えのCATL工場の生産計画分の大半が受注済みと聞いています。昨年IPO(株式新規公開)で調達した約2000億円の資金はその設備投資に充てられています。

欧州ではLG化学、サムスンSDI、ノースボルト、BYDも工場増設。今年から本格出荷される予定であり、CATLを含め、2019年は車載用電池の激戦がさらに過熱します。


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