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激動の車載用電池産業

大塚耕平

2.ホワイトリスト

中国政府はEV・PHV・FCV(燃料電池車)を「NEV(新エネルギー車)」と位置付け、専用ナンバープレートやオークションが必要な希少ナンバープレートを無料割当する等のNEV普及策に腐心。CATL成長の原動力はこのNEV(新エネルギー車)政策です。

ガソリン車より割高なNEVへの補助金政策も展開。EVで上限4万4000元(1元16円換算で約70万円)、PHVで2万4000元(同約38万円)です。

こうした政策の結果、NEV販売台数は急伸。2015年に米国を抜いて世界最大のNEV、とりわけEV大国になりました。しかし上述のとおり、それでもNEV販売比率はまだ約3%。爆発的普及はこれからです。

中国はNEV販売台数を2020年200万台、2025年700万台(NEV販売比率20%超)、2030年1000万台という目標を明示。野心的な目標の狙いを、表向きは都市部等の深刻な大気汚染対策としています。

中国の大気汚染の主因は重工業での石炭使用に伴う煤煙、古いディーゼルトラック等からの排気ガス。かつて日本が行ったような工場やトラックの排出物規制の強化等でも対応可能。また日本で既に成熟しているPHVの普及も有用です。

しかし、中国がEVに腐心する本当の狙いは、PHVは日本が先行しているため、日米欧で本格的量産化が進んでいないEVで主導権を握ろうとする産業政策です。

中国工業・情報化部が2017年4月に発表した「自動車産業の中長期的発展計画」は、中国を「自動車大国」ではあるがコア技術やブランド力が弱いと分析。それらを向上させ、2020年には世界トップ10のNEVメーカーを数社育成、2025年には「自動車強国」に成長させると明示しています。

つまり、中国のNEV政策、とりわけEVに関する政策は環境対策ではなく、「中国製造2025」の一環。「中国製造2025」についてはメルマガVol.408・409・410をご覧ください。

CATLが創業した2011年以降、先行していた日韓米欧の電池メーカーはダンピング的な価格戦略で拡大する中国市場でのシェア確保に注力。

これに対して、中国政府は自動車メーカーがEV補助金受給に際し、中国政府推奨メーカーからの電池調達を暗黙の条件としました。推奨メーカーの一覧は通称「ホワイトリスト」。

2016年、国家工業・情報化部が発表した「ホワイトリスト」からパナソニック、サムスンSDI、LG化学等の日韓欧米企業が外れ、CATLがリスト入り。中国自動車メーカーは中国政府の意向を踏まえ、外資系企業との取引を縮小。その結果がCATLの急成長です。

そうした中で迎えた2019年、NEV政策とりわけEV政策はさらに節目を迎えます。中国政府は、国内で操業・営業する自動車メーカーやディーラーに対し、中国国内での生産と輸入の一定割合をNEV車にすることを義務付け。

19年は10%、20年は12%。しかも、「ホワイトリスト」メーカーから車載用電池を調達しなければNEV車とはカウントされません。

関係企業の対策は急務。結果的にCATLがその恩恵を受けます。そもそも既にCATLの技術力は相当高まっており、性能や規模(価格)を考慮すると、当面はCATLを採用する選択肢が有力です。

日産、ホンダに続き、トヨタもCATLからの調達を検討中との報道を見ました。世界の有力自動車メーカーは、電池は内製するか、技術的優位にあった日韓大手電池メーカーからの調達に依存していましたが、2019年はその戦略が転換を迫られます。

EV製造の義務付けに関し、基準未達の自動車メーカーは基準達成のメーカーから「クレジット」と呼ぶ製造枠を購入する仕組み。BYDは今後3年間で少なくとも140億元(2240億円)の利益を得ると言われています。

2019年はEV及び電池等の関連技術、同分野における勢力図、中国自動車市場を巡る動向等の大転換点になる可能性があります。


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