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激動の車載用電池産業

大塚耕平

3.4つの材料:正極材・負極材・電解液・セパレーター

拡大の一途の車載用電池市場ですが、関連メーカーにとってはいくつかの課題があります。

第1は投資リスク。車載用電池の製造技術は急速に進歩し、大量生産化、装置産業化が著しく進展。その結果、投資規模、投資リスクが拡大。

技術的優位性で先行していた日韓欧米勢にとっても投資リスクは大きく、自動車部品世界最大手の独ボッシュですら車載用電池の内製化を断念。替わって台頭したのが中国勢です。

日本勢の中ではトヨタがパナソニックと連携。報道等から推測すると、他の自動車メーカーへの外販も行って生産量を確保。自社内で閉じない供給体制で投資リスクに対応しようとしています。

第2は資源確保。電池の正極材に使うコバルトの国際価格は急騰。独VW等は長期供給確保のために産出国を囲い込んでいると聞きます。しかし、供給量の過半を占めるコンゴの児童労働問題等、安定供給を脅かす不安定要素もあります。

日本企業は電池リサイクルの技術や仕組みづくりで先行しており、リサイクルで資源確保への懸念を軽減することも課題です。

第3は、中国の政策及び市場動向。中国は今年からNEV政策を本格起動させる一方、EV購入補助金は数年でフェイドアウトさせることが予想されます。補助金なしでは、航続距離が短く、充電に時間のかかるEVを中国の消費者が今後も購入し続けるインセンティブは必ずしも高くありません。

中国政府及び中国市場の動向如何は、自動車メーカー、車載用電池メーカーの戦略に大きな影響を与えます。

第4に、その結果としての価格。電池価格はEVの収益性を左右します。電池価格を抑えるためにはスケール・メリットを追求する必要があり、だからこそ大量生産化、装置産業化が進んでいます。

各社は投資を競っており、世界の車載電池生産能力が2020年には2016年比で4.5倍に増大する見通し。電池価格低下は自動車メーカーには福音ですが、電池メーカーには経営リスク。2019年は低価格化と過当競争の鬩(せめ)ぎ合いが続きます。

第5に利益率。投資負担、原料高騰、購入補助金廃止、価格低下で、電池メーカーの利益率は下落します。CATLも好調と言いながら、粗利益率は2016年43.7%、2017年36.29%、2018年上半期32.77%と低下傾向。

そんなCATLは、本格的な日本参入を開始。2017年11月に横浜ランドマークタワーに日本法人設立。EVに注力する日産のお膝元です。

日産はNECと合弁で立ち上げた電池事業子会社を同年に中国系ファンドに売却。CATL等からの外部調達方針に転換しました。CATLの日本国内での動きにも注目です。

2019年、日本及び日本企業はどのような戦略で戦うべきか。そのヒントは電池の構成材料にあると思います。

LiBはリチウムイオンが正極と負極の間の電解液の中を往来することで充放電します。セパレーターは超微細な無数の穴が開いたフィルム膜。正極と負極を隔離し、異常発熱防止や、正極と負極との間のイオン伝導性(電気伝導)確保に寄与します。

正極材、負極材、電解液、セパレータ―の4つの材料で日本企業はいずれも比較優位に立っています。

主だった企業は、正極材でトップを走るのが住友金属鉱山。負極材では日立化成。最近までトップでしたが、負極材は中国メーカーも台頭。

プラス極とマイナス極の電気の通り道となる電解液は三菱ケミカルや宇部興産が有力。三菱ケミカルは日米欧中で能力増強中。両社は中国で合弁事業をスタートさせています。三井化学も追随。

セパレーターは電池の安全性を守る要。ここでは住友化学や旭化成が高いシェアを維持。セパレーター材料の原反は利益率が高く、この分野では東レが伸長。

こうした材料系で比較優位を維持すれば、製品としてのLiBでCATL等の中国勢の優位性が高まっても、日本は製品の上流で優位な立場が続きます。

これは、メルマガVol.410で取り上げた半導体でも同じ。日本は半導体の上流のシリコンインゴットで比較優位に立っています。

こうした分析の上で産業政策を企画立案し、密かに実行に移していく国家としての政策力、実行力が問われています。産業界をサポートするために、霞が関も永田町も不断の情報収集努力が必要です。頑張ります。

(了)