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日露平和条約の「回避すべき展開」

大塚耕平

来週から通常国会が始まります。統計不正問題、米中貿易戦争、消費税増税等、諸問題山積の中、安倍首相は日露平和条約締結、北方領土返還を目指した動きを活発化。私も2016年に北方領土に渡航しました。諸情勢を勘案すると、返還が実現する可能性は低く、この時期に傾注する意図は別のところにありそうです。国際情勢が激変する中、誤った外交交渉にならないよう、この問題も国会で議論していきます。


1.相互に受け入れ可能な解決策

「太平の眠りを覚ます上喜撰、たった四杯で夜も眠れず」。幕末、ペリー提督率いる黒船来航の際に流行った狂歌です。銘茶の「上喜撰」を「蒸気船」に、「四杯」の「杯」は船を数える単位にかけ、ペリー艦隊の4艙の蒸気船を指しています。

私の認識では、日本が国際情勢の激変に直面するのは史上6度目。第1は、古代日本が律令国家として確立する契機となった中国大陸(隋・唐)と朝鮮半島(高句麗・百済・新羅)の激変期。

663年、白村江の戦いで唐・新羅連合軍に敗れた倭国。百済から大量の亡命者を受け入れ、朝鮮半島から撤退。唐への朝貢を止め、日本という国の原形を形成していった時期です。

第2は元寇(蒙古襲来)。元・高麗連合軍が日本に侵攻してきた文永の役(1274年)と弘安の役(1281年)。中国では元日戦争、韓国では日本征伐と表現されます。

第3は豊臣秀吉の朝鮮出兵。明・李氏朝鮮連合軍と戦った文禄の役(1592年)、慶長の役(1598年)。中国では朝鮮戦争、韓国では倭乱とも言われます。

第4は、幕末から明治維新(1868年)。欧米列強諸国の圧力に直面した日本は、国際社会と対峙し、アジアで唯一の近代国家として列強の仲間入りを果たします。

第5は、敗戦(1945年)と東西冷戦開始(1949年)。西側の一員に組み込まれ、米国の同盟国、アジアで唯一の先進国及び西側の特別な友好国としての地位が保障されました。

現在は6度目。東西冷戦終結(1990年)後の米国覇権が中国の台頭やロシアの復権で脆弱化。欧州も混迷。日本の立ち位置が問われています。

22日、安倍首相はモスクワでプーチン大統領と会談。日ソ共同宣言(1956年)を基礎に平和条約交渉を加速することで合意した昨年11月の会談から3ヶ月連続で25回目。

両氏は北方領土問題について、「相互に受け入れ可能な解決策」を見い出すために共同作業を進めることを確認。

いかなる外交交渉も「相互に受け入れ可能な解決策」でなければ成立しません。そういう意味では教科書どおりのステップ。しかし、解決策を見い出せるでしょうか。

外交の鉄則は「立場が変われば見方も変わる」。北方領土も同様です。日本には日本の見方、ロシアにはロシアの見方があります。

ロシアは「第2次大戦の結果、クリル諸島(北方領土)は合法的に獲得した」との認識。「日本固有の領土」とする日本と相入れません。経緯は以下のとおりです。

江戸時代には日露両国が北方領土に足跡を残しています。1855年の日露通好条約以降、千島列島と樺太は日本とロシアの国境地帯。樺太千島交換条約(1875年)、ポーツマス条約(1905年)、サンフランシスコ講和条約(1951年)の中で、その帰属は変遷を重ねました。

第2次大戦終盤、米英ソのヤルタ会談(1945年2月)で千島・南樺太のソ連帰属を密約。ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、1945年8月9日に対日参戦。日本の無条件降伏(8月15日)後の8月18日、千島列島侵攻を開始。9月5日までに北方領土占領。

日本がポツダム宣言を受諾して降伏文書に調印した9月2日までは日ソ間は戦争状態であり、それ以前の占領行為は合法というのがソ連の立場です。

サンフランシスコ講和条約で日本は千島列島と樺太を放棄。日本は、同条約の千島列島の範囲に北方4島(択捉・国後・色丹・歯舞)は含まれていないという立場ですが、ソ連は含まれていると主張。そもそもソ連はサンフランシスコ講和条約に参加していません。

以後「北方4島はソ連の領土であり、日ソ間に領土問題は存在しない」というのがソ連の立場。

1956年の日ソ共同宣言で国交回復。「平和条約締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」と明記。ソ連崩壊に伴って誕生したロシアのエリツィン大統領と細川首相の間で交わされた東京宣言(1993年)によって、領土問題の存在を認知。

2001年、森首相とプーチン大統領によるイルクーツク声明で東京宣言を再確認したものの、その後は進展がありません。小泉首相以降は、ロシアは領土問題の存在を否定、日本はロシアの不法占拠、4島返還を主張する降着状態に逆戻り。

1983年発効の「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律」第11条によって、日本国民は北方4島に本籍を置くことが可能となり、その手続きは根室市役所が行っています。海上保安庁の「日本の領海等概念図」には北方4島が含まれています。

しかし、現実はロシアが実効支配。ロシアの行政区分ではサハリン州に帰属。人口は約1万7000人、ソ連侵攻時の日本人人口とほぼ同規模。歯舞にはロシア国境警備隊のみが駐屯しています。


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