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米中貿易戦争の経緯と現状

大塚耕平

トランプ大統領が帰国しました。大歓待の訪日で、何が話し合われ、何が決まったのか。国民に対して十分な説明、情報公開が必要です。来日直前には、米中貿易戦争もエスカレート。日本にも大きな影響が出ることから、そうした点に関する協議も行われたのか否か。国民には当然、知る権利があります。予算委員会が開催されれば、質していきたいと思います。


1.皮肉な展開

米中貿易戦争がエスカレートしています。メルマガでも累次に亘ってお伝えしていますが、この局面で経過を再整理しておきます。

2001年、中国がWTO(世界貿易機構)に加盟。以後、中国は日米欧諸国と経済関係を深化させてきました。

中国市場への進出を企図した日米欧の政府と企業。中国の経済成長と企業発展に寄与し、実力をつけた中国が日米欧に攻勢をかける「皮肉な展開」となっています。

2015年、中国は国策「中国製造2025」を発表。建国100年(2049年)に世界の覇権を奪還する戦略の一環として、製造業大国を目指すという国策です。

中国に対して安全保障上の脅威を感じ始めた米国。中国が、中国国籍を有する外国在住者や外国企業勤務者に対し、政府への情報提供義務を課した国家情報法(2017年)を制定したこと等も影響しています。

そうした中、2016年の大統領選挙で「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプが勝利。2017年、大統領に就任したトランプは1974年通商法301条に基づき、不公正貿易、知的財産権侵害等の調査を命じ、2018年1月、USTR(米通商代表部)が報告書を提出。

同報告書に基づき、議会及び大統領は、同年8月、外国投資リスク審査近代化法、輸出管理改革法、国防授権法の3法を成立させました。

第1の外国投資リスク審査近代化法は、中国資本による米ハイテク企業の買収阻止を企図。法執行を担うのはCFIUS(対米外国投資委員会)。企業買収や事業売却はCFIUSへの事前届出を義務づけ。安全保障の観点から、航空機、コンピューター、半導体、バイオ等、事前審査対象の27産業が列挙されました。

第2の輸出管理改革法に基き、上記27産業に関して、最先端技術や基盤技術を用いた製品輸出には認可が必要となりました。日本企業の製品でも、米国の製品や技術が一定以上含まれるものは、同法の輸出管理対象。内政干渉、治外法権とも言える強権法です。

第3は、上記2法も包含する国防授権法。FCC(米連邦通信委員会)が米国企業に対して安全保障上の懸念がある外国企業からの通信機器調達を禁止できるようにしました。ファーウェイ(華為)やZTE(中興通機)を念頭に置いていたようです。

3法成立に先立つ7月6日、中国からの輸入品818品目340億ドルに対する制裁関税第1弾を発動。産業用ロボット等に関税率25%を適用しました。

8月23日、第2弾を発動。集積回路、メモリー、半導体製造装置、化学素材等、279品目160億ドルに関税率25%を賦課。

中国もその都度、同日(7月6日、8月23日)、同規模(340億ドル、160億ドル)の報復措置を発動。

9月24日、中国の「報復に対する報復」という位置づけで中国製品5745品目、2000億ドルに対して制裁関税第3弾を発動。

第3弾の対象品には関税率10%を賦課し、今年1月1日から25%に引き上げるとしていました。第3弾は日用品や食料品等の消費財が全体の24%に及びます。

中国は第1弾、第2弾と同様に報復措置を実施。対象は600億ドル。トランプは、「報復に対する報復」に中国が「報復」したことから、中国からの輸入の残り半分も対象とし、全輸入品に制裁関税を課すことを表明。エスカレートの一途です。

意外に知られていませんが、第1弾、第2弾の際に、中国からの輸入規模第1位と第2位の携帯電話とPCを除外。第3弾でも、中国から逆輸入されるアップルウォッチを除外。

米国と中国の産業は、既に人材、資金、技術等の面で複雑に利害が絡み合っており、表面的な報道からだけでは、米中間の深層は窺い知れません。

報復合戦の一方で除外項目の設定。米中の水面下の交渉実態は当事者にしかわかりません。


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