年金受給繰り下げ手続きと年金財政検証の問題点

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2.年金財政検証

公的年金の財政検証とは、5年に1回、公的年金の財政状況と維持可能性を一定の経済前提を置いて試算する作業。現役世代の収入に対する年金額の割合を示す「所得代替率」の将来推移を算出します。

65歳で年金受給を始めるモデル世帯(40年間働いた会社員と専業主婦)の厚生年金が、その時の現役世代の平均収入の何%になるか(所得代替率)を点検。政府は「所得代替率50%以上」を維持することを約束しています。

2004年の小泉政権による年金国会までは「財政再計算」と呼ばれていましたが、以後「財政検証」と改称。2009年、2014年に続いて、今年が3回目です。

毎回、現役世代も平均寿命まで生きれば年金生涯収支で損はしないという計算結果が算出されます。

今回も夫婦2人のモデル世帯の所得代替率が当面50%を上回る結果を算出するでしょう。しかし、その結果を導き出すために非現実的な経済前提が置かれます。

経済成長率、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回り。財政検証が「非現実的な前提」で埋め尽くされるのは、結果から逆算しているからとしか考えられません。

この点も決算委員会で質しました。詳しくは議事録を読んでいただきたいのですが、概要は以下のとおりです。

直近の2014年財政検証時の前提(標準ケース)は、物価上昇率1.2%、実質賃金上昇率1.3%、実質経済成長率0.4%。

2014年以降5年間の安倍政権下での実績は、物価上昇率0.9%、実質賃金上昇率マイナス0.6%、実質経済成長率1.2%。2つは前提を下回り、1つは前提を上回りました。

安倍首相に「非現実的な前提(例えば、安倍政権下での実績を大きく上回る前提)であれば、財政検証結果を差し戻していただけますね」と質しましたが、曖昧な答弁。どうも雲行きが怪しいです。

「非現実的な前提」で計算しないと、現役世代の年金生涯収支がプラスにならないということは、現実的な前提では採算割れするということです。年金生涯収支がマイナスになれば、公的年金に加入し続けることは無駄と考える人が増えるでしょう。

こうした中、今年の財政検証の公表が遅れています。厚労省は「検証作業を終え次第公表する」と言っていますが、それは何時のことでしょうか。

前回は2014年6月3日公表。厚労省は当初、2014年の日程を意識して財政検証作業を進めていたため、5月末までは2014年のほぼ同じスケジュールで進んでいたそうです。

ところが、前回の発表時期の今月になっても、財政検証の結果を報告する社会保障審議会年金部会の開催日程が決まりません。

厚労省は「作業中」と説明。毎月勤労統計の不正調査などの影響でデータを精査しなければならないことは理解できますが、理由はそれだけではないと思います。

検証結果が「非現実的な前提」でもなお芳しくなく、参議院選前に公表しても政府・与党にとっていいことはないとの判断が働いている可能性があります。忖度(そんたく)です。

3年前の参院選前も、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公的年金の運用成績の発表を遅らせました。

例年7月上旬だった前年度成績の公表が参院選後の7月末に遅延。年5兆円を超す損失が出ていたことから、「損失隠し」との批判を浴びました。

厚労省は財政検証を受けて年金改革関連法案を2020年の国会に提出することが見込まれます。検証結果公表が参院選後になれば、最新データに基づく年金についての論争が参院選でできないことになります。


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