431

5G・EUVからみる世界の半導体動向

大塚耕平

1989年11月9日、「ベルリンの壁」崩壊。それから30年経過。当時の日本はバブル経済ピーク。冷戦終結で21世紀は米国中心の覇権構造となり、その中で日本も「ジャパン・アズ・ナンバーワン」になると何となく多くの人が思っていた時代。その見通しは外れ、今や米中G2時代。ロシア、EUも交えた新冷戦構造が定着する中、技術革新も劇的に加速。テクノロジーが世界の覇権を決定する時代ですが、日本は対応に窮し気味です。


1.超高速大容量・超低遅延・超多数同時接続

今月1日から中国で5G商用サービスがスタート。中国移動(チャイナ・モバイル)、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)の国有3社が、年末までに北京、上海等の主要50都市に13万基地局設置と発表。日本全土に匹敵する規模です。

5Gの3つのポイントは超高速大容量、超低遅延(通信が遅れない)、超多数同時接続。4K・8K放送や自動運転等の次世代技術の実用化は、5Gの普及にかかっています。

今さらですが1Gから5Gへの変遷を整理しておきます。Gは「Generation(世代)」のこと。5Gは移動通信(モバイルネットワーク)技術の第5世代技術を指します。

移動通信技術は約10年ごとに世代交代。G1(アナログ方式)は1980年代、G2(GSM)は1990年代、G3(W-CDMA)は2000年代、G4(LTE)は2010年代。そして2020年代はG5(NR)です。

G1では日米欧の地域別に技術開発が進展。アナログ無線技術によるモバイルネットワークが形成されました。

G2ではデジタル通信技術が普及。専門家ではないので技術論は概要にとどめますが、GSM(Global System for Mobile communications)は1992年にドイツで実用化された初期デジタル通信技術。日本を含む極東地域では使用されず、日本の携帯電話を欧米に持って行っても使えなかった時代です。

この時代は携帯電話によるデータ通信が本格化。国内では1999年にNTTドコモがiモードサービスを開始。30歳代以上の世代はかなり利用したと思います。

3Gでは技術の国際標準化が進展。1G、2Gの携帯電話は地域限定仕様(つまり、海外出張時に現地仕様の携帯電話を調達)。G3では携帯電話が世界中で使えるようになりました。

国際電気通信連合(ITU、International Telecommunication Union)が標準化を推進。利用開始2000年、使用周波数2000MHz、最大データ速度2000kbpsであったことから、ITUは3GをIMT2000(International Mobile Telecommunication 2000)と命名しました。

上述括弧内のW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)は、より広い周波数帯域を活用できるデジタル通信技術を指します。

3Gの最大の特徴は高速大容量通信。その技術はふたつの系譜に分かれます。ひとつは3G技術をベースに高速化する方法で3.5Gと呼ばれました。

もうひとつは新たな高速化技術LTE(Long Term Evolution)を活用したもので、4Gのベースとなりました。3Gの延長線上の技術という意味で別名3.9G。LTEは文字通り長期的な革新につながる技術として、高速、低遅延、多接続を重視しました。

2012年、ITUはIMT2000の後継標準としてLTEをIMT-Advancedと命名。さらに、3.5Gと3.9Gを4Gと総称しました。

上記のように、4Gには技術的にふたつの系譜が存在。利用者的な視点で4Gを表現すれば「スマホのためのモバイルネットワーク技術」です。

そして5G。上述のとおり4Gは「スマホのための技術」ですが、それとの対比で言えば5Gは「脱スマホ技術」。そのポイントが冒頭の超高速大容量、超低遅延、超多数同時接続の3つです。

IoT(Internet of Things、モノのインターネット接続)が語られ始めて久しいですが、様々な機器が5G経由で通信を行い、2020年代は新たなモバイルネットワーク社会に突入。その典型的事例が自動運転車です。スマホのための4Gに対して、5Gは全ての機器、全てのアプリケーションのための技術です。

3つのポイントを実現するために、現在は未使用の高周波数帯域を使います。ここで難問がひとつ。電波は周波数が高いほど減衰しやすく、遠くまで届きません。

そのため、基地局を約100メートルおきに設置。つまり大量の基地局が必要です。その基地局に使用する通信機器に米中貿易摩擦の主因であるファーウェイ製品が関係しています。高性能で安価だからです。

なお、上記の5Gの括弧内に登場するNRはNew Radio(新無線)。新しいデジタル通信技術を指し、LTEの後継標準となる見込み。2015年に開発が始まり、2017年に仕様公開。詳細はまた勉強しますが(苦笑)、とにかく日進月歩です。

このほかにも、基地局の消費電力を抑制する技術も実用化。多数のアンテナ素子を用いて電波を目的の方向に集中させる「ビーム技術」だそうです。こうした技術でファーウェイが先行しています。

来年にはITUが5Gの国際標準規格を策定。日本が主導権を握るという話は聞こえてきません。様々な分野で国際競争が激化。日本のプレゼンスが問われています。


 次のページ2.タイムラグ


関連する記事はありません。