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5G・EUVからみる世界の半導体動向

大塚耕平

2.タイムラグ

5Gで利用する周波数帯域については、現在(10月28日から11月22日まで)開催されているWRC19(2019年世界無線通信会議)で審議中。しかし、WRC19の審議を待つことなく、各国で国内割当を実施して既にサービスがスタート。

冒頭で述べたように、中国では今月1日からの5G商用サービス開始。中国政府は、5G普及によって2030年までに16兆9千億元(約260兆円)の経済効果と約2千万人の雇用創出を見込んでいます。

中国メディアの報道では、中国通信3社の5G契約予約数は既に1千万件超。中国は5Gを活用した新サービス、5G関連製品で世界の主導権を握ることを企図。その戦略が、ファーウェイ等を巡る米中貿易戦争につながっています。

もっとも、世界で最初に5G商用サービスを始めたのは米国。ベライゾンワイヤレスが昨年10月に世界初の商用サービスを開始。昨年末にはAT&T、今年はスプリントとTモバイルが参戦。北米主要4通信事業者が世界をリードしています。

極東では韓国が先行。今年4月、SK telecom、LGU+、KT(コリアテレコム)の3社がソウル等の大都市で5G商用サービス開始。来年には全国展開の予定です。

欧州では今年、スイスSwisscom、スウェーデンTelia、フィンランドDNAとelisa、英国BTが商用サービス開始。年末までに英国Vodafone、来年はスペインTelefonica、ドイツテレコムも参入予定です。

オセアニア・アジアでは豪州が先行。今年に入って豪州のTelstraとOPTUSの2社、その後はシンガポールSingTelが商用サービス開始。今後、中近東(サウジアラビアSTC等)、中南米諸国が続きます。

日本でも既に総務省が周波数帯域の割当を発表。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルネットワークの4社が割当を受けました。

ほかに、局地的な5G商用サービスを先行させるためのローカル割当(4社及びそれ以外の地方事業者による地域限定利用向けの割当)帯域も設けました。

3.7GHz帯と28GHz帯に割当を受けた楽天モバイルネットワークは10月から携帯電話事業に参入。第4のモバイルキャリアとなりました。

日本における5G関連市場に関して、この分野の専門調査会社(IDC Japan)が6月に2023年に向けた予測を発表しています。

基地局や通信機器等のインフラ投資は2021年から加速し、2023年には約4000億円。インフラ整備を受け、2025年頃から5Gの本格的普及を見込んでいます。

5G携帯電話は今年末から出荷の見通し。当初は10万円超の高額であること、5G対応アプリがまだ少ないこと、政府方針(4Gと5Gの分離)等の影響を受け、2023年時点での出荷台数は870万台(全出荷台数の28.2%)にとどまると予測。

4G携帯電話は2011年に登場し、普及に約6年。4Gフル規格のLTE Advanced系が登場したのは2015年以降で、現在も拡販中。こうした経験を踏まえると、5G携帯電話普及にも数年から10年程度かかると予測。2020年代は5G時代です。

その前提で、2023年の携帯電話を含む端末とのモバイルネットワーク接続数を2億4千万超、うち5G接続は13.5%相当の約3300万回線と予測しています。

世界の5G携帯電話市場についても言及。早期普及を見込んでいるのは、北米、オセアニア、アジア、西欧の各地域。

2023年では、5G端末の60%超は米国。日本を含むその他諸国は30%程度。米国の普及が早い要因として、国土に平地が多く、5G基地局設置が容易であることも指摘しています。

ここ数年の中国の変化の加速振りを勘案すると、個人的には、中国の大都市部は米国をはるかに凌ぐ5G社会になると予測します。

一般的には世界で5G端末普及が加速するのは2025年以降の見込み。米中とは2年の時差(タイムラグ)。この時差が両国の技術覇権国家としての優位性を担保します。

世界の技術革新に遅れ気味の日本。ここは米中に先行し、東京五輪直後の2021年に5G社会を実現すべく、予算も政策も集中投下することが必要な局面。それがまさしく国家戦略。

様々な分野で世界の実状と潮流を把握し、そうした国家戦略を立案・実行できない今の日本の体質。これを改善しないと、日本の低迷は継続かつ深刻化します。


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