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外国人移民と日本の社会保障制度の現状

大塚耕平

外国人労働者は146万人。今や日本は世界第4位の移民大国と言われることもあります。その現実を直視せず、「移民国家ではない」という前提で運営されている日本。社会保障制度等の歪みが拡大しています。少子高齢化対応のみならず、外国人労働者・定住者の増加に対応した社会保障制度改革も急務です。


1.ローカル採用外国人とエクスパッツ

昨年12月8日に改正入管法が成立。今年4月1日の同法施行を機に、日本の社会保障制度は新たな局面を迎えました。

現行制度構築時に想定していなかった超少子高齢化への対応は積年の課題。そして、新たな想定外の事態が外国人労働者・定住者の急増。対応が急務です。

日本は1951年に批准した難民条約を根拠に、社会保障は内外無差別が原則。つまり「日本人も外国人も同じ扱い」であり、国籍による利用制限はありません。

しかし、社会保障は長期加入が前提。医療の場合、平均的日本人は生涯に2千万円から3千万円の保険料を事実上掛け捨て。この多額の掛け捨てがあって成り立つ仕組みです。

外国人労働者・定住者が短期間の加入となり、負担よりも給付が多くなれば制度維持にはマイナス。制度維持に資する、公平で合理的な仕組み、日本人も外国人も納得できる制度設計が必要です。

日本で働く外国人は、日本での採用者(ローカル採用外国人)、外国企業から派遣された者(エクスパッツ)の2類型。

ローカル採用外国人の場合、社会保険適用事業所に「常時使用される人」は、一部の除外者(臨時・一定期間使用の人)を除き、全員が健保・厚生年金・雇用保険の被保険者。事業所側には加入させる義務があります。

ローカル採用外国人の雇用及び離職の際には、事業所は外国人労働者の氏名、在留資格等をハローワークに届け出なくてはなりません。

エクスパッツの場合も適用事業所に「常時使用される人」はローカル採用外国人と同じ扱い。「常時使用される人」とは、日本の事業所に労務提供し、対価を当該事業所から受給する人。または当該事業所の就業規則の適用状況等から、保険者が総合的に判断します。

社会保険事務所は、日本の事業所から本給が支給されている場合には実質的使用関係あると見做し、社会保険への加入義務ありと判断しています。

日本の事業所からは住宅等の提供のみで、本給が支給されていない場合は、加入不要と判断される場合があります。判断基準は雇用環境や保険者によって区々。個々のケースを確認する必要があります。

就労が短期間(概ね5年以下)の外国人については、各国との社会保障協定によって日本の社会保険への加入が免除される場合があります。社会保障協定については後述します。

因みに、エクスパッツとは英語の動詞「expatriate(外国に定住する)」からの派生語あるいは慣用語です。

今年6月現在の在留外国人は283万人。在留資格ベスト3は、永住78万人、技能実習37万人、留学34万人。国籍ベスト3は、中国79万人、韓国45万人、ベトナム37万人。

うち外国人労働者は146万人。在留資格ベスト3は、身分に基づく在留(永住・結婚等)50万人、資格外活動(留学等)34万人、技能実習31万人です。

旅行で短期滞在している外国人、不法滞在・不正入国者も加えると、瞬間的には400万人近い外国人が日本にいることでしょう。

日本で外国人労働者が目立ち始めたのはバブル崩壊後の1990年代。当初は中小企業を中心に、就労資格のない開発途上国出身の外国人雇用が増加。

社会保険に加入できないため、病気になっても病院での受診が遅れ、結果として病状が深刻化してから担ぎ込まれるケースが頻発。

保険未加入であっても、重病患者に直面した病院は治療を行いました。こうした保険未加入外国人の治療で病院が被る損失が増嵩し、社会問題化。外国人労働力に頼りながら、必要な社会保障を提供しなかった結果です。

そのような事例が集中した東京、神奈川、群馬等では、病院支援のために自治体が損失補填制度を構築。外国人自身の支払能力は厳しく査定したそうですが、1件当たり上限100万円程度の支援が行われました。

その後、2000年代に技能実習、資格外労働(留学生)等を中心に外国人労働者が漸増。1998年に150万人を超えた在留外国人は2005年に200万人を突破。リーマンショック直前の230万人をピークに2012年まで漸減したものの、以後急増。今日に至っています。

その間、在留外国人による日本の社会保障、社会保険の利用に関して、様々な問題が指摘されるようになりました。


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