宇宙エレベータから考える、日本の技術革新・産業構造

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3.宇宙エレベータ

宇宙エレベータはロシアの物理学者ツィオルコフスキーがエッフェル塔から着想し、1895年に自著に記した構想。天に向って塔を建てていくと、静止軌道上で遠心力と重力が釣り合うと考えました。

1959年、ロシアの技術者アルツターノフは、静止軌道上からその上下にケーブルを伸ばす方法での宇宙エレベータ建設構想を発表。

当初は空想夢物語でしたが、近年、理論的には実現可能であり、技術革新によって手の届く域に達しつつあります。

宇宙エレベータにはロケットのような墜落、爆発リスクがないほか、大気汚染の心配もありません。

興味本位でポイントを整理すると、次のとおりです。人工衛星は地球の重力で下(内側)へ引っ張られる力と、遠心力で上(外側)に飛び出す力が一致して均衡。高度を維持して周回し続けます。

赤道上の高度約3万6千㎞を周る人工衛星は周期が地球の自転と同じ。地上に対して天の一点に静止しているように位置するため、静止衛星と呼ばれます。

静止衛星から地上へケーブルを垂らすと、ケーブルを吊り下げた分だけ下に引っ張る力が強くなり、落下します。

そこで、反対側にもケーブルを伸ばしてバランスをとれば、衛星は静止軌道高度を維持して回り続けます。このケーブルに取り付けられる昇降機が宇宙エレベータです。

技術的に宇宙から地上へ下ろす強度を持つケーブル素材がなかった間は空想夢物語。ところが、グラファイト・ウィスカー(針状炭素)等が発見されたのに続き、CNT発見によって実現性が高まりました。

まず静止軌道上に人工衛星を設置。地球側に伸ばしたケーブルが地上に達した後、それをガイドにしてさらにケーブルを何本も張って構造物を構築。大真面目に考えられています。そのケーブル素材がCNTです。

ケーブルの想定全長は約10万 km。下端(地上)、静止軌道、上端の3ヶ所に発着拠点を設置。上端の移動速度は当該高度での地球重力脱出速度を上回り、燃料なしで地球周回軌道から脱して惑星間軌道に飛び出すことが可能です。

化学ロケットは地球重力圏から宇宙空間に進出するのに莫大な燃料が必要です。原理的には、ロケット重量の90%以上を燃料が占めます。恒常的に大量の物資・人員を輸送するには非効率であり、それに代わる経済的輸送手段が宇宙エレベータです。

CNT発見後、実現に向けたプロジェクトが米国でスタート。嘘みたいな本当の話です。1999年にNASA、2000年にロスアラモス国立研究所が各々計画書を作成し、それらに基づいて開発企業(リフトポート社)がシアトルに設立され、研究開発、実験を継続中と聞きます。

また米国では、2031年実現を目指し、全米宇宙協会等が中心となって、関連国際会議や技術開発のための競技コンテストを毎年開催しているそうです。

日本でも2009年から宇宙エレベータ協会主催の技術競技会が開催され、2012年には大手ゼネコンが2050年実現を目指す計画を公表しています。

宇宙エレベータには、低軌道の人工衛星やスペースデブリ、航空機等との衝突リスクがあります。スペースデブリ回収や衛星情報共有等、国際的協力の下での対策が必須です。

宇宙空間は過酷な環境であり、宇宙エレベータも太陽光や宇宙放射線等による劣化が懸念されます。建設や維持管理のコスト水準は現時点では見積もり難く、宇宙エレベータの建設・利用に伴う便益に見合うか否かが問題です。

因みに、国際宇宙ステーションの建設・運用にはこれまでに1000億ドル(10兆円)以上の費用がかかっています。資材を全てロケットで打ち上げているため、専門家は国際宇宙ステーションの方が宇宙エレベータよりも高コストと見ています。

夢のような話ですが、きっかけは夢ではない日本の技術開発や企業・産業を巡る厳しい環境の話。日本の研究者やエンジニア、若者が夢を抱ける状況を生み出さなくてはなりません。

(了)



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