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新型コロナウィルスと武漢封鎖

大塚耕平

新型コロナウィルスと武漢封鎖

3.生物兵器

原因不明の感染症パンデミックとなれば、様々な憶測情報が氾濫することは想定の範囲内。案の定「中国生物兵器説」という怪情報が流れています。

1月24日、米国ワシントンタイムズ(一流紙ではありません)が、武漢肺炎の感染源が「中国科学院武漢病毒研究所での秘密研究開発に関連」と報道。証言者は元イスラエル軍情報官ダニー・ショーハム、取材記者は米中軍事情勢に詳しいビル・ガーツ。

記事は「武漢市には中国生物兵器開発に関わる2つの重要施設がある」と指摘。ひとつは「武漢国家生物安全実験室」。2015年建設開始、2017年完成の研究機関です。

もうひとつは2018年に設立された「武漢生物製品研究室」。世界トップクラス、バイオセーフティーレベル4の研究組織で、実験用に1500株以上の各種ウィルス分離株を保有。

記事によると、同実験室、同研究室とも、武漢海鮮市場から約30キロメートルの距離にあり、いずれも「中国科学院武漢病毒研究所」の傘下にあるそうです。

同研究所の北京の施設ではSARS流行当時にSARSウィルス研究にも従事。英科学誌ネイチャーは2017年、武漢での同研究所活動もウィルス漏洩事故に繋がる恐れがあることを指摘していたそうです。

中国政府は「武漢肺炎の感染源は野生動物である」としており、1月28日新華社通信も「武漢華南海鮮市場でウィルス大量検出」と報じています。しかし、タケネズミ等を食する文化は昔から続いており、なぜ今回発症したかの合理的説明にはなっていません。

中国は生物兵器の製造・保有を否定。一方、米国による世界各国の大量破壊兵器(核・化学・生物)実態調査では、中国は生物兵器保有国とみなされています。

こういう憶測や怪情報が飛び交うこと自体が人間世界の愚かさを象徴しています。メルマガ前号で紹介した「世界終末時計」が過去最短を更新したのも止むを得ないことです。

世界終末時計(Doomsday clock)とは、核戦争等による人類絶滅(終末)を午前0時に準(なぞら)え、終末までの残り時間を「あと何分」と示す時計のこと。

日本への原爆投下から2年後、冷戦時代初期の1947年に米国の科学者等が危機を感じて始めた企画です。具体的には米国「原子力科学者会報」の表紙絵として誕生しました。

1989年からは、核兵器のみならず、気候変動による環境破壊や生命科学等の脅威も考慮して残り時間が決定されています。残り時間の過去最短は2分、過去最長は17分。これまでの推移はメルマガ前号を参照してください。

1月23日に発表された今年の残り時間は予想どおり過去最短を更新して1分40秒。核戦争と地球温暖化という2つの脅威に加え、トランプ米大統領を筆頭に世界の指導者がそうした脅威に対処するための努力を行っていないと指摘しました。

20世紀以降の新型感染症も、地球温暖化や自然環境破壊に伴う病原菌と人間との関係変化が影響しているかもしれません。

感染拡大抑止、パンデミック制圧が急務ですが、経済への影響も気になります。上述のとおり、中国政府は団体旅行や海外渡航を禁止。春節前後には延べ30億人の中国人が大移動するとみられていたことから、旅行・渡航禁止の影響は小さくありません。

2019年の中国人訪日客数は959万人(インバウンド全体では3188万人)。2020年の予想インバウンド需要は約5兆円(2019年4.8兆円)であり、そのうち中国人(除く香港人)は4割の約2兆円(2019年1.7兆円)。中国のインバウンド需要減少は実質国内総生産(GDP)押し下げ要因にもなります。

武漢肺炎の影響はインバウンドにとどまらず、中国経済減速を通じた日本経済への影響も懸念されます。武漢市のある湖北省は人口5902万人で、工業生産額の約2割を自動車関連産業が占めています。

武漢市には約700人の日本人が駐在しており、進出日本企業は自動車等約160社。既に多くの駐在員や家族が帰国しており、日本企業の現地活動への影響は必至です。

波乱の幕開けとなった2020年。今年もメルマガで有意な情報をお伝えできるよう、努力します。

(了)



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