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抗体検査と血清療法

大塚 耕平

抗体検査と血清療法

3.血清療法

「抗体検査」によって抗体保有者が把握できれば、抗体保有者から血清を採取し、重症患者に投与することも可能になります。

3月24日、米国食品医薬品局(FDA)は回復した感染者から血清を採取し、重症患者に投与する方針を発表。回復した感染者の血液中にはウィルスに対する「中和抗体」が生成されており、それを重症患者に投与して免疫機能を強化する治療法です。

新型コロナウィルス感染症に対する有効な治療薬、治療法が存在しない状況下、FDAは臨床研究の位置づけで血清療法開始を決断。感染者が急増しているニューヨーク州で先週から実施されているとの情報が入っています。

3月9日、横浜市立大学の研究チームが新型コロナウィルス感染症の患者の血清から抗体検出に成功しました。報道によれば、30分程度で抗体を検出可能なようです。日本でも臨床治療への活用が急がれます。

以上の整理と諸情報に基づけば、新型コロナウィルス感染症に対して下記のような基本方針で臨むことが合理的と考えられます。

第1に、特定されたクラスター(患者群)等を対象に徹底した「封じ込め」対策を行う。

第2に、感染経路不明の感染者が増加している状況下、「感染速度抑制」対策として、入国管理政策のほかに、外出自粛等の行動規制を伴う社会政策を行う。

第3に、「PCR検査」の能力増強、及び「抗体検査」「血清療法」の実施に向けた準備を進める。「PCR検査」「抗体検査」「血清療法」に十分な資金と人材を投入する。

第4に、上記第3の準備ができ次第、「PCR検査」と「抗体検査」を併用。「PCR検査」陰性、「抗体検査」陽性の人は、本人の感染リスクも他者に感染させるリスクもないことから、行動規制の対象としない。また、抗体保有者の血清を用いた治療も行う。

第5に、その間にワクチン開発に十分な資金と人材を投入し、一刻も早い完成を目指す。

第6に、上記の対応が効果を発揮するまでの間、徹底した経済対策を行い、感染症「根絶」前の経済破綻を防ぐ。十分な収入保障は行動規制遵守を担保することから、「経済対策は感染対策でもある」との認識が必要である。

以上のとおりですが、こうした基本方針が有効に機能するためには、「PCR検査」「抗体検査」「血清療法」等に関する国民の正確かつ冷静な理解が必要です。

「抗体検査」による陽性者(感染済者)数は相当の数に上ることが予想されますが、その事実を国民が冷静に受け止めることが肝要です。「抗体検査」陽性者が多いということは、致死率が低下することと同義です。そうした因果関係を理解してもらう必要があります。

なお、国民全体に「抗体検査」を行うには大量の「抗体検査キット」を用意する必要があります。まずは一部の自治体等で試験的に行うのが現実的です。米国でもコロラド州の小規模自治体で試験的に実施しているようです。

冒頭で記したように、英国ジョンソン首相は「集団免疫」戦略から「感染速度抑制」戦略に転換しました。感染拡大を遅らせ、医療リソースへの負荷を減らすことを企図しています。

同時に「PCR検査」「抗体検査」の違いを理解し、国民に「ステイ・アット・ホーム(家にいろ)」と訴え、重症化しない限り「PCR検査」を実施しない方針とも聞きます。

3月25日、オックスフォード大学研究チームが「19日時点で英国総人口の68%が既に感染している」とする論文を発表。メンバーのひとりであるポール・クレナーマン教授(免疫学)は「大規模な抗体検査の必要性を強調するのが目的」と説明しています。

ワクチンが完成するのは早くて年末、おそらく1年後と言われています。その間、経済活動をストップさせ続ければ感染症よりも深刻な社会的被害が発生することは必至。

日本でも今一度「封じ込め」「感染速度抑制」「根絶」の3段階の対策の使い分け、「PCR検査」「抗体検査」「血清療法」「ワクチン開発」の時間軸を整理し、論理的な戦略で新型コロナウィルスと向き合うことが肝要です。

(了)



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