439

抗体検査の精度が鍵

大塚 耕平

抗体検査の精度が鍵

2.迅速検査と定量検査

メルマガ前号で、集団免疫、PCR検査、抗体検査等について解説しました。4月3日、その内容に基づいて参議院本会議で安倍首相に質問しました。

質問のひとつは、日本が集団免疫戦略を採用しているか否かです。なぜなら、PCR検査件数の少なさから、諸外国では日本が暗黙裡に集団免疫戦略を採用していると推測する向きがあるからです。安倍首相は答弁で否定しました。

ではなぜ検査数が少ないのでしょうか。PCR検査には「発症者対応」と「感染者対応」の2つのアプローチがあります。前者は発症者を対象に感染を確認する検査、後者は未発症者も対象にして可能な限り多くの感染者を探し出す検査です。

早くから未発症感染者にも感染力があることが確認されていた新型コロナウィルス。「発症者対応」では未発症感染者を放置することになり、結果的に感染を拡大させ、未発症(未自覚)者、軽症者は回復後に抗体を有し、免疫を持つことになります。

つまりPCR検査の「発症者対応」は、結果的に集団免疫戦略を採用する場合と同じ現象を容認することになります。

4月13日、さいたま市保健所長が「検査対象者を絞っていた」と発言。理由は軽症者や未発症者感染者が病院にかかることによる医療崩壊を回避するためだったと説明。

また、NHKスペシャル「パンデミックとの闘い」の中で、政府対策本部リーダーである押谷仁東北大学教授はPCR検査数が少ない理由を問われ「それがわれわれのポリシーだ」と答えていました。

両者の発言から推察すると、理由はどうあれ、結果的に集団免疫戦略的現象を容認していたとも言えます。安倍首相の答弁は、その点を認識していないように感じました。

しかし、政府はここにきてPCR検査数を増加させ、緊急事態宣言を全国に拡大させるなど、方針を転換。対策本部も感染者を探す方向に舵を切ったようです。

検査数を増やせば感染者数も増加します。そこで重要になるのが抗体検査。メルマガ前号で示したとおり、「PCR検査で陰性、抗体検査で陽性」の人は行動制限が必要なくなります。

英独はこの考え方に基づいて該当者に「免疫成立証明書」を発行し、優先的に経済活動に復帰させることを検討中。気になるのは抗体検査の精度です。

抗体検査には「迅速検査」と「定量検査」の2種類があり、英独で導入されつつあるのは「迅速検査」。簡単なキットで診療所や自宅で自己検査できるものです。

一方、免疫状態の正確な把握には血中抗体量を測定する「定量検査」が必要です。抗体発生後の時期(初期、中期、後期)によって免疫状態は異なり、正確な把握のためには「定量検査」が必須と聞きました。

抗体にはウィルス感染初期に発現する「免疫グロブリンM(IgM)」と、中期に発現して回復後も血中に残る「免疫グロブリンG(IgG)」の2種類があるそうです。

M陰性・G陰性は「未感染」、M陽性・G陰性は「感染初期」、M陽性・G陽性は「感染中期・後期」、M陰性・G陽性は「治癒後(免疫獲得)」を表します。

英独で使用予定の「迅速検査」キットでは抗体の有無しか判定できず、免疫獲得を証明する「M陰性・G陽性」状態を正確に検出できないようです。

英国は購入した「迅速検査」キットの精度が低いことを認め、スペインも中国から購入した「迅速検査」キットの精度が表示通りでないために返品したと報じられています。

一方、経済再開を優先する米国トランプ政権下では、食品医薬品局(FDA)が米企業開発の「迅速検査」キットを承認。当該キットの検査精度は不明です。

陽性の被検者は行動制限をしなくなりますが、検査精度が低ければ再感染のリスクに晒されます。4月13日、WHOも感染者が抗体を有するようになるかは不明と表明。新型コロナウィルスの特性はまだよくわからない状況が続いています。

信頼性の低い「迅速検査」を拙速利用するよりも、抗体量を検出できる「定量検査」の確立を優先する専門家の意見もあります。「定量検査」を確立したうえで、多くの臨床データに基づいて信頼性の高い「迅速検査」を作るべきとの主張です。

問題はそれまで待てるのか、行動制限を伴う社会的隔離政策を続けられるのか、という点です。欧州各国ではピークアウトを報じ始めていますが、それは集団免疫の成立によるものではなく、ロックアウトに伴う人的接触機会の減少に伴う現象に過ぎません。感染爆発が再燃する危険性があります。


 次のページ3.新しいBC(紀元前)


 menu LINK