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パルスオキシメーター

大塚耕平

パルスオキシメーター

緊急事態宣言がどうやら延長されるようです。今日、補正予算も成立します。しかし、感染症対策、経済対策ともに遅れ気味。行動制限、営業自粛をいつまでも続けると、経済が崩壊します。「命あっての経済」ですが「経済なければ命はもたない」のも事実。感染症対策と経済対策は表裏一体です。政府任せ、専門家任せにせずに、感染症や対策についての理解を深めたうえで協力することが肝要です。過去のメルマガも参考にしてください。


1.ゲームチェンジャー

英国ジョンソン首相が「ゲームチェンジャー」と称した「抗体検査」。日本でも連日報道されるようになりました。

メルマガ438号(4月1日)で取り上げ、4月3日の参議院本会議で安倍首相に重要性を伝えました。その後のFbライブ(4月10日)及びそのダイジェスト版(4月18日)が多少でもお役に立ったなら幸いです。ダイジェスト版つぎのとおりです。

メルマガ前々号、前号で取り上げたように、「PCR検査」は「今感染しているか否か」を知る検査、「抗体検査」は「既に感染済みであるか否か」の検査です。

「PCR陰性、抗体陽性」であれば「感染回復後の抗体保有者」と推定され、行動制限を解除して経済活動に復帰可能との想定が可能になるからです。だからこそ、ジョンソン首相は「ゲームチェンジャー」と称したのでしょう。

しかし、上記の想定は「感染したら抗体を有する」「抗体によって免疫機構が働く」「抗体は長期間持続して再感染を阻止する」という既知の感染症対策の常識を前提としたものです。

新型コロナウィルスは未知のウィルスです。この前提が適切か否か確証はありません。しかし、この前提で検討を行う以外に現時点では途がありません。完全解明まで行動制限を続ければ、感染で滅びる前に経済崩壊で滅びます。

最終的にはメルマガ前号で取り上げたゲノム解析を行わないと完全解明には至りませんが、当面は引き続き上述の前提に基づいて考えます。なお、細菌やウィルス等の病原体を総称して「抗原」と言いますが、以下はウィルスと記します。

ウィルスに感染した場合、人間の体はウィルスと戦い、ウィルスを分析します。そしてウィルスに対応した「抗体」を生成してウィルスに結合させ、有毒性や増殖を抑止します。「抗体検査」はその「抗体」の血液中の有無を調べる検査です。

ウィルスに対抗する「抗体」のメカニズムも解説してほしいとのご要望をいただきましたので、簡単に素人なりの説明をしてみます。

「抗体」を形成する物質は「免疫グロブリン(immunoglobulin)」と呼ばれるものであり「Ig」と略されます。「免疫グロブリン」はリンパ球から分かれて合成される蛋白質です。

この「免疫グロブリン」には5種類あります。そのうち2種類が今回の新型コロナウィルスの「抗体」と関係があります。

ひとつは「IgM」。感染初期に出現してウィルスと戦います。もうひとつは「IgG」。感染中期以降に現れ、さらに激しくウィルスと戦います。いずれも血液中に存在します。

残る3つのうち、「IgA」は唾液や消化液、痰などの中に存在して、粘膜での防御機構の主役を演じます。「IgE」はアレルギー反応や寄生虫の排除に関与。最後の「IgD」はリンパ球に関係すると言われていますが、実態はまだよくわかっていないそうです。

人の体内にウィルスが侵入すると、それらを攻撃して身を守ろうとするメカニズムが働きます。それを「免疫機構」と呼び、白血球の一種であるリンパ球がその主役です。

「免疫機構」の仕組みは次のとおり。ウィルスが侵入すると白血球の一種である「マクロファージ」がウィルスを喰べ、ウィルス侵入をリンパ球「ヘルパーT」に伝えます。

「ヘルパーT」は別のリンパ球「Bリンパ球」に活動命令を出し、「Bリンパ球」は「抗体(免疫グロブリン)」を出動させてウィルスを攻撃させます。

喩えて言えば、「マクロファージ」は偵察部隊、「ヘルパーT」は司令部、「Bリンパ球」は大隊、「抗体(免疫グロブリン)」は小隊(戦闘部隊)のイメージです。

「ヘルパーT」は、別の攻撃部隊でありウィルスを殲滅する「キラー細胞」にも命令を出します。今回の新型コロナウィルス感染症では「キラー細胞」が話題になっていません。新型コロナウィルスとは初遭遇であり、「キラー細胞」が形成されていないからです。

ウィルスに感染したか否かは血液中の「IgM」と「IgG」を測定することで推測可能です。「IgM」は感染初期に出現するので感染の有無の診断に有用であり、「IgG」は感染中後期に出現するので「免疫機構」の有無の推測に役立ちます。

ウィルスによって「免疫機構」そのものが損なわれると、「免疫グロブリン」が生成されにくくなり、ウィルスに対抗できず、感染しやすく、また症状が悪化しやすくなります。


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