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抗原検査と命の選別

大塚耕平

本日(13日)、新型コロナウイルス感染症の「抗原検査」キットが薬事承認されました。通常は1年以上要する審査を短縮しての異例の認可。この状況ですから当然のことですが、治療薬アビガンや「抗体検査」キットも早期承認が必要です。欧米諸国に先んじて1月中旬から感染者が発生していたにもかかわらず、PCR検査数の少なさ、野戦病院準備の遅れなど、問題山積の日本です。


1.抗原検査の特異度

「抗原検査」は「抗体検査」と間違えそうですが、「抗原」は細菌やウイルスのこと、「抗体」は細菌やウイルスに対抗する免疫グロブリンのこと(メルマガ438・439・440号参照)。

「抗原検査」は感染の有無を調べる検査なので「PCR検査」と同じ役割。つまり「抗原検査」「PCR検査」は現在の感染の有無を知る検査、「抗体検査」は既に感染済か否かを知る検査です。

では「抗原検査」と「PCR検査」の違いは何か。それは検査方法の違いです。

「PCR検査」はウイルスの遺伝子を増幅して感染の有無を確認、「抗原検査」はウイルスの突起部分の蛋白質を検出して感染の有無を確認します。

なぜ当初から「PCR検査」とともに「抗原検査」が話題にならなかったのでしょうか。

新型コロナウイルスが未知の「抗原」であったため、専門家は「まず遺伝子レベルの解析が必要」と判断。徐々に構造が判明しウイルス突起部分の固有の蛋白質も特定、「抗原検査が可能になった」ということでしょうか。素人なりに推察です。

ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策チームの中心であるバークス博士もCNNインタビュー(4月28日)で「PCR検査不足を打開するのは抗原検査」と発言。

具体的には、鼻腔から綿棒で検体を採取して溶液を加え、試験紙を浸します。試験紙には新型コロナウイルス固有の蛋白質に結合する人工抗体が含まれており、結合すると視覚的に感染を読み取れます。

診療所や病院でお馴染みのインフルエンザ検査キット。あれと同じです。

「抗原検査」のメリットは簡単なうえに結果が15分から30分程度で判明すること。「PCR検査」は分析に装置と技師が必要なため、結果が判明するのに数時間、確定に約1週間要するのと対称的です。

自宅や診療所、病院でも検査可能であり、早期発見、早期隔離、医療者感染抑止、早期治療、広域悉皆検査、医療資源準備に寄与。検査数増加にもつながるでしょう。

一方、デメリットは「PCR検査」より精度が低い点。インフルエンザの「抗原検査」の場合、「感度」60%、「特異度」98%程度と言われています。

「感度」「特異度」は医療用語。ちょっと難しいですが、「感度」は発症者の「真陽性率」、「特異度」は無発症者の「真陰性率」です。

新型コロナウイルスは「感染している無発症者」にも感染力があることが問題になっていますので、「無発症者を検査して陰性になった場合の正確性」を示す「特異度」が重要。もちろん「発症者を検査して陽性になった場合の正確性」を示す「感度」も大切です。

4月8日、WHO(世界保健機関)は「抗原検査」の精度を34%から80%の低水準と推定。「抗原検査は研究段階であり、医療現場で使われるべきではない」と指摘。WHOの推定どおりであれば、被検査者の半分近くは誤診断を受けることになります。

とくに、実際には感染している無発症者のウイルス量が少ない場合は陰性になる確率が高いと言われており、「特異度」の低さが問題になるかもしれません。

こうした「抗原検査」のメリットとデメリットを鑑みると、引き続き「PCR検査」の体制拡充も進め、両者を併用するとともに、感染済か否かを調べる「抗体検査」も含め、3つの検査を適切に運用していくことが望ましいと考えます。

新聞やTVで連日「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」が報道される状況になりました。それらを理解する努力が、政府の施策や医療関係者の説明を受け止める素養、鵜呑みにしない冷静さにつながります。改めて整理しておきます。

「PCR検査」は「抗原(細菌やウイルス)」の遺伝子(DNA)断片を約100万倍に増幅して、感染の有無を調べます。専門の装置と技師を要し、結果判明に時間がかかります。

「抗原検査」は「抗原」固有の蛋白質を検出し、感染の有無を調べます。30分以内で結果が判明しますが、「PCR」検査に比べて精度が低いのが難点。なお「PCR検査」「抗原検査」とも検体(粘液)は喉や鼻を綿棒でこすって採取します。

「抗体検査」は「抗原」の侵入に対して活動を開始する「免疫グロブリン」を検出し、既に感染済か否かを調べます。血液を採取して15分程度で結果判明。「免疫グロブリン」には種類があり、それを正確に測定できれば「感染していない」「感染したことがある」「感染している」の判別がつきます(詳しくはメルマガ440号参照)。


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