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羽田新ルート

大塚耕平

緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルス感染症対策に引き続き注力します。感染症の影響で東京オリパラは1年延期になりましたが、既に始まった東京オリパラ対応もあります。3月29日運航開始の羽田空港の新ルートもそのひとつ。安全等の観点から問題があり、3月26日の財政金融委員会で総理に再考を促しました。6月2日に行った国交省航空局からのヒアリングも踏まえ、経緯と課題を整理します


羽田新ルート

1931年に東京飛行場として開港した羽田空港。戦後、接収したGHQ(連合軍総司令部)が拡張工事を行い、1952年に日本に返還。東京国際空港に改名されました。

1960年代の高度成長、1964年の海外旅行自由化等を映じて発着便数が急増。沖合展開も検討されましたが、当時の土木技術では工事難度が高く、米軍横田基地との空域問題もあり、1966年、首都圏第2空港(新東京国際空港)を成田に建設することが決まりました。

1978年、成田空港が開港。以後、国際線は成田、国内線は羽田という運用が基本となりました。その後、沖合展開土木技術の進歩(滑走路増設)、横田空域の一部返還、日韓ワールドカップ等を契機とした国際チャーター便需要増等から、羽田の国際便も再度漸増。

2000年代に入ると徐々に、欧米長距離便は羽田、短距離アジア便やLCCは成田という運用傾向が強まり、今日に至っています。

現在、羽田は滑走路4本、成田は2本。羽田拡張の限界を睨み、成田の3本目滑走路新設(2028年度完成目標)と既存滑走路1本(2500メートル)の1000メートル延伸を計画中。

そうした中、東京オリパラ開催が決定(2013年)。翌2014年、羽田の国際線増便のための規制緩和を検討する国交省協議会がスタート。

2016年、東京都心上空を通過する離発着を承認。2019年8月8日、2020年3月29日から新ルートの運航開始を発表。都心を低空飛行する新ルートの実現が決まりました。

3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響で航空便は大半が欠航となっていましたが、3月29日から運航開始。

現在も減便が続いていますが、通常運航に戻ると、新ルート運用によって国際線発着回数が年間6万回から9.9万回に増加。発着枠は1日当り50枠(離発着で1枠)増便となり、うち24枠を米国路線に充当。日米航空会社に12枠ずつ振り分けています。

既に運航開始となった新ルートですが、騒音面、安全面等で問題を抱えています。経緯と事実関係を整理します。

国交省は今年1月30日から2月12日にかけて、実際に乗客が乗る国内線・国際線1267便で試験飛行を実施。乗客には告知されていなかったようです。

北風と南風に対応した試験を各7日間、午前7時から午前11時、午後3時から午後7時までの間に実施。新ルート、とくに進入路のポイントは、都心上空を低空で飛ぶこと、騒音を減らすために降下角(着陸進入角度)を引き上げる(結果として急降下になる)ことです。

降下角3.0度から3.45度への引上げ(急降下)の問題は次項で扱うこととして、まずは急降下によって騒音減少の効果があったか否かです。

国交省は騒音の最大推計は80デシベルと説明してきましたが、その前提や根拠は非開示。騒音は便ごとの重量や使用フラップの角度等によって変化します。国交省は降下角を上げれば着陸までの飛行高度が上がり、騒音が減ると主張していました。

試験飛行での騒音測定は新宿、渋谷、品川、大田各区など都内15ヶ所と川崎市、さいたま市、川口市等、19ヶ所で行われました。

実測値と推計値を比較した結果、6割が推計通り、2割が推計値より大きく、2割は小さかったと発表。国交省は降下角引上げによって騒音軽減効果が得られたとしていますが、自治体やマスコミの独自測定では違う結果が出ています。

5月4日の日経新聞によれば、同社が行った観測結果の75%で騒音軽減効果はなく、40%は従前より大きくなったと報じています。

大井町で85デシベル以上、川崎市で90デシベル以上と、学校や企業の活動に支障の出るレベル。パチンコ店内並みの騒音値です。3.45度で急降下するとエンジン出力や揚力調整に伴う抵抗が増えることが影響しているかもしれません。

エンジン出力はスラストレバーで調整します。風や気温の変化、降下角の調整等で必要に応じてフラップを大きく出した場合には80デシベル超は当然との情報もあり、推計値80デシベルが過小評価だった気がします。

IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)の独自調査でも、降下角を引上げても騒音軽減効果があったとのデータは得られなかったようです。


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