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羽田新ルート

大塚耕平

3.45度ダブルRNAV

騒音面、安全面で異例の新ルート。上記以外にも様々な指摘が聞こえてきます。

第1に、試験飛行はAIP(航空路誌)という各国当局や航空会社への公式通知資料の発行後だったという指摘。AIPは試験飛行後に発行するもの。試験飛行なしでのAIP発行は異例との指摘ですが、国交省は「昨秋に試験飛行を1回行った」と説明しました。

第2に、不適切な季節の試験飛行だったとの指摘。試験飛行は北風の時期。新ルートは北からの進入なので北風はテールウインド(追風)。速度が増してエンジン出力を抑制できるため、騒音も軽減。試験飛行は騒音が最大となる季節に行うべきでした。

第3に、夏場の危険性等の指摘。気温が上昇すると、航空機の気圧高度計は実際高度よりも低く表示されるため、降下角がより急になります。例えば摂氏35度であれば、結果的に4.0度超の降下角になる可能性もあるようです。

気温が高くなるとエンジン性能が低下。出力を上げる必要があり、その結果、騒音も大きくなります。つまり、夏場は安全と騒音の両面で懸念があるとの指摘です。

これほど様々な指摘がある中での降下角3.45度の強行。他に理由があるような気がしますが、本件を説明する航空会社内の資料に以下のような記述があることが判明。

「RNAV進入はFAF通過後、3.45度の降下角で公示されている。これはRNAV(GNSS)Rwy16RのFAFであるT6R76が横田空域内に位置している事に起因しており、横田空域内のTrafficと垂直間隔を確保する必要があるため、FAFであるT6R76に3800ft At or aboveという制限が付されている。FAFからThresholdへ直線で結ぶと約3.45度の降下角となる事から、FAF以降の降下角が3.45度のRNAV進入となっている。」

RNAVは「広域航法」。空港からの無線誘導ではなく、GPSを活用して自分の位置を把握して着陸する方法。GNSSは「衛星測位システム」。Rwy16Rは「羽田A滑走路」。T6R76は中野付近の座標。FAFは最終降下開始地点。Thresholdは「滑走路末端」。

要するに、米軍横田空域との関係で中野付近上空を高度3800フィート(約1222メートル)以下で飛ぶ米軍機と距離を保つために降下角3.45度になったと説明しています。

さらに資料は「一方、Rwy16L進入の経路は横田空域には抵触していないものの、Rwy16Rの経路と横方向で2kmも離れていない事から、経路近傍の地元住民への騒音軽減の公平性の観点からRwy16R同様に3.45度で公示されている。」と続いています。

Rwy16Lは「羽田C滑走路」。つまり、A滑走路への進入ルート直下の住民との騒音の公平性の観点から3.45度になったと説明しています。

非常に分かり易い説明です。賛否や是非は別にして、日米安保条約、日米地位協定、横田空域の問題は周知の事実。正直に説明することが政治や行政の責任です。事実の隠蔽、文書の改竄・廃棄・捏造、情報公開に後ろ向きという昨今の悪弊が脳裏を過ぎります。

東京オリパラに無理に間に合わせて降下角3.45度の新ルートを選択した結果、もうひとつ断念したものがあります。それはILSによる安全な着陸。

ILSは「計器着陸装置」。滑走路近くの地上施設から指向性誘導電波を発信し、その電波に誘導されて航空機が滑走路に接近します。

羽田空港には3.0度に対応したILSが設置されています。3.45度着陸をILSで行うためには別途の機器や設備の設置が必要なため「間に合わない」との国交省の説明でした。

ILSが間に合わないために、AとCの平行滑走路に3.45度で同時進入させるダブルRNAV。大都市域内の大空港では異例の対応です。

2月2日の試験飛行時に練馬と板橋の区境付近で落下物目撃との報道もあったことから、これも国交省に確認したところ「事実ではありません」との回答。

伊丹、福岡等、市街地上空を飛行している他空港でも落下物への懸念は同じですが、別のルートがあれば、市街地上空は極力回避した方がよいと思います。

現時点で安全運航に努めているパイロットや管制官には敬意を表しつつ、東京都心上空低空飛行による離着陸は再考すべきです。航空需要の先行きも不透明な中、一旦元に戻し、国際線増便が必要になれば、関空、中部、福岡、札幌等で受け入れるのが適切です。

もっと計画的、戦略的なインバウンド対応の航空政策を指向すべきです。慌てて導入した「3.45度ダブルRNAV」が事故につながらないことを祈ります。

(了)



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