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特段の事情

大塚耕平

特段の事情

新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向です。筆者の動画「三耕探究」の中で説明したゲノム構造の変化からわかるように、武漢由来の第1波、欧州の第2波に続き、現在増えているのは第3波です。関連の動画やメルマガ(435号から441号の5本)も是非ご覧ください。


1.特段の事情

新型コロナウイルスは人種や国によって感染率や死亡率が違うことがデータから明らかになっています。したがって、感染者の国籍情報は疫学的分析や感染経路の把握上、重要です。その観点から、現在の政府の対応について改善が急務の点が2つあります。

第1に国内感染者の国籍別数が明らかにされていないこと。第2に空港検疫での感染者は、国籍別数以前に日本国籍者、外国籍者の内訳すら明らかにされていないこと。

この問題を入管庁、厚労省と議論し始めた4月当初、担当官から「外国人の人権保護の観点から国籍は公表しない」との見解が示されました。

日本人、外国人の区別なく、人権保護は政府の当然の責務です。一方、国民が死活的犠牲を受け入れて営業自粛や行動制限に協力しているなか、入管庁や厚労省が国民に対して最大限の説明責任を果たすことも当然の責務です。

「外国人の人権保護」と「国民への説明責任」は別の問題であり、前者を理由に後者を軽視することは許されません。

大手メディアが報じない重要なデータがあります。入国拒否国からの入国者数(2月1日から7月9日分)を見ると、審査対象者数52388人のうち「特段の事情」による入国者数51572人となっています。

入国拒否国からは入国できないと考えるのが普通ですが、入国希望者をほぼ全員入国させていることがわかります。

4月3日に入国拒否国が24ヶ国から73の国と地域に拡大されました。この日から「特段の事情」による入国者が急増しています。

「特段の事情」とは何でしょうか。入管庁は「特段の事情」として、日本に滞在する家族に会う必要がある場合、日本の教育機関に在籍する子供が再入国する場合、外国に滞在する親族の見舞いや葬儀に出席する場合など、いくつかの具体例を示しています。

しかし、その内容が不透明なため、入管庁に説明を求めたところ、4月14日、「特段の事情」による入国者の7割以上が国際線航空機のクルーであると明らかにしました。

その間の国際線便数で割ると1便あたりのクルーは20人超となり、全部ジャンボジェットでも多すぎるという不思議さは感じましたが、説明に応じたことは一歩前進と言えます。

残りの3割はクルー以外の入国者です。現在もその説明に変わりはないので、7月8日までに1万5千人以上が入国拒否国から入国していることになります。

段階的に入国拒否を行ったため、それ以前の出国者を「特段の事情」で再入国させる対応には一定の合理性がありました。

しかし、4月からすでに3ヶ月以上経過。今も、相変わらず連日数百人単位で「特段の事情」によって再入国しています。例えば7月5日の場合は1057人であり、仮に7割がクルーであったとしても、300人以上が入国拒否国から再入国したことになります。

入管庁の資料には「永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、又は定住者の在留資格を有する外国人が再入国許可により出国した場合であっても、原則として、特段の事情がないものとして上陸拒否の対象となりますので、上陸拒否の対象地域への渡航を控えていただくようにお願いします」と明記してありますが、現実はほぼ全員を再入国させています。これでは原則になりません。

第3波が現実化し、新型コロナウイルスの特性も未解明で、かつ活発な変異も観察されているなか、水際対策は厳格に行うべきです。

「厳格な入国管理」と「国民への説明責任」を果たすためには、入国拒否国からの「特段の事情」による入国者の国籍別人数の公表とその理由の説明は、国民に対する政府の責務です。

入国規制の緩和も検討が始まっています。「特段の事情」により再入国した者、あるいは第三国経由で入国した入国拒否国籍の外国人に感染者がいたか否かなど、政府の情報開示は不十分すぎます。


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