445

DXとコロナテック

大塚耕平

DXとコロナテック

2.コロナテック

「DX」と一緒に語られることが多い「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」についても触れておきます。

どちらも直訳すると「デジタル化」ですが、「デジタイゼーション」は業務効率化のためにデジタルツールやITを活用すること。言わば第1段階の「DX」に呼応します。

「デジタライゼーション」は戦略的、長期的視野でビジネスプロセス全体をデジタル化していく取り組み。言わば第2段階の「DX」。

そして第3段階の「DX」は上述のとおり。日本においては「DX」の認識や理解が第1段階の表層的「DX」や「デジタイゼーション」に留まり、再び「DX」を単なるコストと解し、失敗を繰り返すリスクを感じています。

「DX」の潮流に乗り遅れていた中で発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミック。「DX」による変化に加え、「ウィズコロナ」を余儀なくされることに伴う社会や人々の生活の変化も、経済、産業、企業に劇的な変化をもたらします。

そうした中、最近普及してきた新造語が「コロナテック」。「ウィズコロナ」に伴う諸問題を解決する技術やサービスのことを指します。

そして、生活、ビジネス、教育等、社会の諸活動の形態が変わったことを商機として、「コロナテック」企業が続々登場。「ZOOM」が典型例です。

当然、ITやインターネット関連の新興企業が大半。リアルなサービスや製品を手がける企業もありますが、顧客との接点においてはITやインターネット抜きでは対応できません。

とりわけ、米国と中国の有力スタートアップ企業が突出。パンデミック真っ只中の今年4月から6月の新たなユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場企業)22社の内訳は、米国が13社、中国が3社です。

昨年の新規ユニコーンは物流や旅行等が主流分野でしたが、今年は一変。22社のうち、IT、インターネット、クラウドサービス、データ収集・管理・分析、EC(電子商取引)等の企業が半数超。まさしく「DX」に対応した企業です。

経済や社会の激変は起業(スタートアップ)や企業の戦略転換の好機。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時に中国でネット通販を始めたのがアリババ。今や米国「GAFA」に対抗する中国「BATH」の一角を占めます。

2007年にスマホが登場し、翌2008年にリーマンショックが発生。この機に登場したのがUber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)等。モノの所有から利用、シェアへの変化を先取りしました。

投資資金の流れも変わり、「コロナテック」企業にVC(ベンチャーキャピタル)からの資金が集まっています。

日本勢はそもそもこれまでに登場したユニコーン自体がわずか3社。有望な「コロナテック」スタートアップ企業も現状は台頭せず、国内スタートアップ企業への投資額も年4千億円程度。米中とは桁が2つ違います。

以上のとおり、「DX」に「コロナテック」が加わった劇的変化を適切に認識、理解できるか否か。日本企業の手腕が問われます。

必要なのは、現在の事業やビジネスが消滅する可能性があるという危機感、「DX」に対する的確な認識と適切な戦略、ベンダー任せにしない当事者意識(オーナーシップ)、自らプロジェクトを先導できる評価力、判断力。経営トップの関与は不可欠です。

冒頭で述べたように、日本がマクロ経済政策の幻想を追い求めている間に、世界は「デジタル化」とそれに伴う「生産性向上」の下で、産業も経済も激変。そのことは米中関係を含む国際社会の構造にも影響しています。

その間、日本では人手不足が深刻化。ITを利活用した改革や「DX」的な取り組みで解決することなく、言わば安易に外国人労働者に依存し続けたとも言えます。その結果が「デジタル化遅れ、生産性上がらず」という今日の日経新聞の見出しです。

嘆いている暇はありません。さらに取り残されないように、冷静な情勢認識の下、現在の潮流を先取りし、メルマガ428号(2019年9月29日)で述べたようなリープフロッグ(蛙飛び)の一発逆転に挑戦しなくてはなりません。


 次のページ3.RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)