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DXとコロナテック

大塚耕平

DXとコロナテック

3.RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

現在の潮流としてもうひとつ認識すべきはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。ひと言で表現すれば、ホワイトカラー的な仕事のAI的IT化です。

米国ではコロナ対策の補助金申請書類の処理にRPAを活用。日本でも、休業要請に応じた企業への協力金支払い等の膨大な事務をRPA活用で乗り切った自治体があります。

RPAという言葉を認識しているか否かは別にして、RPAは既に現実に利活用されています。世界では先進的な企業、金融機関、官公庁等で導入が加速しています。

ホワイトカラー「的」としているのは、ホワイトカラー、ブルーカラーという区分けはもはや陳腐化しており、実際には両者は融合。生産現場でもRPAは使われています。

20世紀後半以降、FA(ファクトリーオートメーション)が浸透しましたが、今やロボットや工程管理の操作にもRPAが利活用されています。

RPAはソフトウェアロボット(ボット<後述>)やデジタルレーバー(仮想知的労働者)による業務プロセスの自動化技術です。

ワークフロー(業務手順)の自動化ツールとも言えます。ユーザーである労働者(人間)が操作や入力をし易いようにGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を活用している事例が増えています。

例えば、申請書類を受け付け、記載されているデータ等から分別し、仕分けて担当部署に回して所定の作業をするというワークフロー。

この一連の流れをAI的プログラムが人間に代わって行い、人間は作業の条件等を設定。設定に難しいPC操作は必要なく、GUIで表示された簡便な選択肢を操作。このAI的プログラムを「ボット」や「デジタルレーバー」と言います。

オックスフォード大学は、RPA等によって2035年までに全雇用の最大35%が人間から代替されると試算。もともと日本は自動化が遅れていたので、今後急速にRPAが普及する可能性があります。

但し、ここでも日本企業がRPAを単なるコスト削減と考えると失敗するでしょう。ハーバード大学の調査によれば、米国ではRPA導入企業の大半が解雇を行わず、社員により高度な仕事を担わせたそうです。

社員はRPA等のAI的プログラム、つまり「ボット」や「デジタルレーバー」を同僚と感じ、効率性と生産性が一段と向上したそうです。人員削減のためではなく、より効率性と生産性の高いビジネスのために「ボット」や「デジタルレーバー」を導入したのです。

そう考えると「DX」や「RPA」は新しい雇用も生むとも言えます。マイクロソフトは2025年までにデータ分析業務等の新しい雇用が1億4900万人分創造されると予測しています。

但し、新しい知識や技術が求められます。米国はそのための人材再教育に動き出し、コロナ禍で失業した労働者に1人4千ドルの職業訓練費用を支援することを検討。GAFAやマイクロソフト等の企業も教育支援を表明しています。

日本でも、既存の雇用維持のための雇用調整助成金等に加え、「DX」や「RPA」に対応した新たな雇用政策、労働者の教育政策が必要です。

ところで、上述のボット(bot)は「ロボット」から派生した新造語。FAで人の代わりにモノを組み立てるロボットと異なり、ボットはPC上で人が操作する代わりに動く「自動プログラム」「仮想ロボット」のことです。

ボットは最初、iPhoneやSNS等の補助プログラムのことを指しました。例えば、iPhoneに入っているSiriもボットの一種。「明日の天気は」と聞くとSiriが自動検索して明日の天気を回答してくれます。Twitterの自動再ツイート機能や、相手の発言に自動返答してくれる機能もボットです。

例えば、電話の人工音声案内もボットの一種。生身の電話交換手を代替し、目的の部署や人までつないでくれます。架電者に番号プッシュ対応を促したり、音声認識が高度化すれば会話によって目的の相手まで誘導します。

つまり、ホワイトカラー的な仕事を代替してくれるのがRPAのボット。最近のAI進歩は目覚しく、ディープラーニングによる知能化が進んでおり、やがて本来の用件への内容的な応対も行えるようになるでしょう。そうなれば完全なAI社員です。

ホワイトカラー的仕事が「DX」「RPA」あるいは「ボット」「デジタルレーバー」に代替された後、リアルな人間をどのように扱うか、企業や政府の戦略と姿勢が問われます。

「DX」「RPA」あるいは「ボット」「デジタルレーバー」では代替できない仕事ができる人間が必要になりますが、人間にとってそれが恩恵になるか否かはまだわかりません。

産業革命やIT革命によって労働時間は短縮されるかと思えば、現実はむしろ長時間化。機械やITでは対応できない部分で長時間労働を余儀なくされたからです。

「DX」「RPA」の顛末はわかりませんが、2018年に亡くなったホーキング博士が「次のシンギュラリティ(技術的特異点)は2021年」と予測していたのを思い出しました。ご興味があれば、メルマガ377号(2017年2月10日)をHPバックナンバーからご覧ください。

(了)