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官製相場とロビンフッター

大塚耕平

官製相場とロビンフッター

3.靴磨きの少年

ロビンフッド現象による市場の歪(いびつ)な動きの象徴はレンタカー会社Hertz(ハーツ)を巡って起きました。

コロナ禍でレンタカー需要が激減。Hertzは苦境に陥っていましたが、ロビンフッター人気で株価は暴騰。ロビンフッダーは「有名銘柄なので株価は回復する」という考えで買い進み、SNSでも情報が拡散。買いが買いを呼んだ格好です。

経営破綻目前のHertzが新株発行で資金調達する異例の事態になったものの、結局チャプターイレブン(連邦破産法第11章)申請に至りました。

個人投資家は、プロ投資家の判断基準と異なる取引行動をとります。かつて日本のFX(小口外国為替証拠金取引)ブームの中でも、個人投資家「ミセスワタナベ」の市場センチメント無視のドル買いが海外市場を驚かせました。

「ミセスワタナベ」は主婦を中心とした個人投資家の俗称。欧米メディアが命名し、別名「キモノトレーダー」とも呼ばれました。

中国株でも個人投資家が多い上海市場は、機関投資家中心の香港市場よりも値動きが荒く、ファンダメンタルズ無視の展開になりがちです。

個人投資家の資金は回転が速く、デイトレード中心。そのため、個人投資家の影響が大きくなると、値動きが激しく、ボラティリティも高くなります。

ロビンフッドはミレニアル世代に投資機会を提供した一方、株投資をゲームのようにしてしまった面があります。ミレニアル世代が大失敗しないことを祈ります。

メルマガVol.421(2019年5月10日)で取り上げたバフェットの「投資の4条件」について再述しておきます。

バフェットの投資哲学はコロンビア大学時代の恩師、経済学者ベンジャミン・グレアム(1894年生、1976年没)の理論がベース。グレアムも「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれるプロ投資家でした。

グレアムは「市場は短期的には投票機械のように振舞うが、長期的には錘(おもり)を計る機械のように機能する」と表現。つまり、長い目で見ると株価はその企業本来の価値と等しくなることを指摘。

グレアムの影響を受け、バフェットの基本は長期投資。そして、バフェットの「投資の4条件」は、第1に事業内容を理解できること、第2に長期的に好業績が予想されること、第3に経営者に能力があること、第4に価格が魅力的であること。

事業内容を自分が理解できない分野には手を出さないため、ハイテク分野、IT企業投資には消極的でした。

バフェットの居住地であるネブラスカ州オマハで毎年5月に開催されるハサウェイ年次株主総会。「投資の神様」バフェットの話を直接聞ける機会とあって、毎年数万人の株主が世界各地から集合。

その盛り上がりぶりから、別名「資本家のためのウッドストック」。若者世代にはウッドストックが通じないですね(笑)。つまり、大イベントです。

昨年の総会で注目を浴びたのは、バフェットがIT株と中国株を購入し始めたこと。バフェットが中長期的に「IT株が伸びること」「中国の成長が続くこと」を確信したと言えます。

今年の総会は例年と同じ会場からバフェットの発言がオンライン中継されました。直前に公表されたハサウェイの3月末手元資金が過去最大1370億ドル(約15兆円)であったことから、コロナ禍の影響に対するバフェットの見方が注目されました。

リーマンショック時は投資の好機と判断し、優先株取得や経営懸念企業の救済に積極的に乗り出していたのとは対照的。今年前半のコロナ禍での株価急落局面は、バフェットには投資好機とは映っていなかったようです。

オンライン総会で個人投資家の成功の聞かれたバフェットは「先のことは誰にもわからない。投資は長期保有が基本。米国経済は強く、米国株の長期保有が基本」と発言。

また「株は手堅い投資対象で、ギャンブルの道具ではなく、信用取引はよくない」と指摘し、「日々の株価変動は気にせず、購入後は暫く忘れるぐらいがちょうどよい」と発言。

さらに「長期保有するための財務基盤、心の準備ができていなければ株を買うべきではない」と述べ、従来と変わらぬ基本哲学を披露していました。

最後に、第35代アメリカ合衆国大統領JFKの父、ジョセフ・P・ケネディと靴磨きの少年の逸話です。

ケネディは株式投資で大儲けしていた1928年のある日、オフィスに向かう途中で、靴磨きの少年に靴を磨いてもらいました。

靴を磨き終わった後、少年はケネディに向かって「おじさん、株を買うといいよ」と言って、銘柄まで伝えたそうです。

ケネディは「こんな少年までが株の儲け話をするなら、今後さらに新規投資家が現れることはないから、株価は暴落する」と予想し、保有する全株を売却。1929年の大暴落を免れたという逸話です。

バフェットには多くの名言があります。個人的に心にとめている名言は「リスクとは自分が何をやっているかよくわからない時に起こるもの」。

企業経営のみならず、国の舵取りにも共通する示唆と言えます。

(了)



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