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ファイブアイズ

大塚 耕平

ファイブアイズ

3.インテリジェンス

FEは敵対国のみならず、同盟国の情報も盗聴します。EUは米国がエシュロンを使ってエアバスの技術情報を盗んだと指摘。1995年の日米自動車交渉では、米国が日本の自動車メーカー幹部の電話を盗聴していたことが知られています。

今年2月、独公共放送ZDF、米ワシントンポスト、スイス公共放送SRFの調査報道によって、中央情報局(CIA)と独連邦情報局(BND)が1970年代にスイスの暗号機器メーカークリプト社を密かに買収し、同社が各国政府に売った無電通信暗号化装置を介して20年以上に亘って日本を含む他国の通信を傍受していたことが明らかになりました。

豪州キャンベラにある戦争記念館には、日本に関する1971年の外交文書が公開されています。タイトルは「1980年代の対潜水艦戦」。冷戦終結に伴い秘密指定が解除されたために公開。FEが豪国防相に提供した文書です。

文書には「日本は1980年までに少なくとも1隻の原子力潜水艦の運用を始める」「日本は豪州の潜在的脅威であり、脅威の一部が潜水艦である」と記されています。

この時期、日本は「防衛計画大綱(51大綱<1976年>)」や「日米防衛協力指針(ガイドライン<1978年>)」を策定。ソ連の脅威に対抗して日米同盟強化を進めていた最中に、米国を含むFEが日本をどのように見ていたかが伺えます。国際社会の現実です。

自国の利益を犠牲にして他国の利益を守る国はない。このことを国会で安倍首相には何度も伝えました。日米同盟は日本の安全保障のための手段であり、目的ではありません。

1993年、米国の政治学者ハンティントンが「文明の衝突」というタイトルの論文を雑誌「フォーリン・アフェアーズ」に発表。

冷戦後の国際紛争は文明間対立が原因となり、文明と文明が接する断層線(フォルト・ライン)で紛争が激化しやすいと指摘。2001年の同時多発テロ事件やそれに続くアフガニスタン紛争、イラク戦争を予見しました。

ハンティントンは、21Cは西欧文明が中華文明、イスラム文明に対して守勢に立たされると予測。西欧文明の基盤(領土、生産力、軍事力等)は縮小すると予測しています。

日本は世界の変化に対処するためにインテリジェンス能力を高めることが必要ですが、それはFEに入ることではなく、自ら情報を収集し、創造することです。FEとの連携は重要ですが、「情報をください」という依存体質では相手にされません。

インテリジェンス(Intelligence)とは、収集された情報を加工、統合、分析、評価及び解釈して生産される成果物(プロダクト)であり、安全保障政策を企画立案・執行するために必要な知識と定義されます。

インテリジェンスは対象となる情報源によって分類されます。ひとつはヒュミント(Human Intelligence、HUMINT)」。人的情報源から得られるインテリジェンスです。

シギント(Signals Intelligence、SIGINT)は会話や通信の傍受によるインテリジェンス。FEの主戦場です。

イミント(Imagery Intelligence、IMINT)は画像から得られるインテリジェンス。衛星や偵察機等を駆使して収集される画像も含まれます。

公開情報を有効活用するのがオシント(Open Source Intelligence、OSINT)。最も簡単かつ低コストで集まり、分析価値、創造性の高い分野です。

オシントとは報道や研究論文等の公開情報から生産されるインテリジェンス。世界中のニュースやレポートを丹念に収集、分析すると、様々な知見が得られます。

インテリジェンスのレベルを上げていくには、他の文明圏のメディアや出版物、研究論文等を高度に分析する能力が求められます。

狭義の安全保障に限らず、経済戦略や通商交渉、技術開発等、あらゆる分野でオシント能力を向上させれば、情報を創造することができます。

日本のインテリジェンスは、FEばりのシギントやイミントではなく、実はヒュミントやオシントこそ欠けています。

(了)



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