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脱炭素と技術革新

大塚耕平

脱炭素と技術革新

3.完全自動運転電動車(AIEV)

パリ協定、PRI、ESG、SDGs、ICPP等の世界の潮流に加え、最近の自然災害頻発に直面し、遂に日本も2050年カーボンニュートラルを宣言したという印象です。

人気取りや、他の案件から眼を逸らさせるための戦術では困ります。掛け声だけでなく、実際に政策対応することが必要です。

政府は来年度税制改正で、脱炭素を図るグリーン投資を行う企業を対象に税制上の優遇措置を設ける見込みです。温効ガス削減につながる製品の生産設備投資や生産工程の省エネ化等が対象になります。

脱炭素への貢献度に応じ、投資額の5%か10%を法人税から控除可能とし、投資額上限は500億円、3年間の時限措置と発表されました。

これは如何にも脆弱。本気度が伝わってきません。脱炭素もDX(デジタル・トランスフォーメーション)も、投資額以上の控除を認める「ハイパー償却」を導入すべきです。

また、温効ガス排出量の4割弱を占める電力に関して、再生可能エネルギー関連技術の開発・実用化に大胆な税制優遇と予算投下を行うことが必要です。

水力を筆頭に、風力、太陽光、太陽熱、地熱、潮力、潮流、波力、揚力、バイオマスなど、あらゆる分野において日本が世界最先端を走る覚悟が問われます。

温効ガス排出量の2割弱を占めるのは自動車は、脱炭素だけでなく、技術革新を巡る各国の主戦場になります。

2050年カーボンニュートラルに続き、政府は急遽、2030年代ガソリン車ゼロの目標を打ち出しました。

国内販売の全新車を電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグ・イン・ハイブリット車(PHV)、水素燃料電池車(FCV)等の電動車にする方針です。東京都は国より早い2030年時点でのゼロ目標を表明しました。

これも世界を追随した対応です。英国は11月にガソリン車販売禁止時期を2035年から2030年に前倒し。米国カリフォルニア州や中国は2035年、フランスは2040年にガソリン車販売禁止を打ち出しました。

ちなみに、英国や米カリフォルニア州はHVを電動車と認めていません。日本の2019年電動車国内販売割合は乗用車で約35%。その大半はガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたHVです。

日本はPHVで世界を先行しています。今後、PHVを電動車に含むか否かを巡って各国間の駆け引きが激化するでしょう。

EVやFCV普及のためには、販売価格引下げのほか、充電設備や水素ステーション等のインフラ整備、高性能車載電池の開発等が急務です。

こうしたことに予算や税制優遇の政策資源を大胆に投入しないと、世界との技術競争には勝てません。ここでも「ハイパー償却」を実行するぐらいの本気度が問われます。

来年度税制改正では、自動車重量税に適用するエコカー減税に現行よりも高い環境性能を求める2030年基準が導入されることから、ガソリン1リットル当りの走行距離は現行17.6kmから25.4kmに引き上げられます。

新基準に対してどの程度の達成率かによって車検時の免税回数等が決められますが、技術革新を促進する大胆な対応が必須。税収のことを気にしている場合ではありません。

さらに、自動運転車の開発・実用化を展望した政策支援も不可欠です。完全自動運転のレベル5も視野に入る状況になっています。

完全自動運転電動車(以下、AIEV<造語です>)実現のための技術やインフラとして、パーツである通常半導体や電力制御に資するパワー半導体は当然のこととして、AI、通信、測位衛星、スマートシティ等が必要となります。

つまり、最新技術の集大成、最終製品が「AIEV」です。この分野で遅れをとると、あらゆる技術・インフラで世界に劣後することになります。予算、税制優遇等、政策資源を徹底的に投入すべきです。

中央銀行(日銀)による財政ファイナンスが恒常化し、当分の間は正常化できなくなった中、この状況を逆手にとった発想の転換も否定しません。

この際、脱炭素、DX、「AIEV」等の推進政策に係わる財源を賄う国債、そのための人材育成に資する教育政策財源を賄う国債を、日銀が優先的に購入することも一案。次期通常国会は本気で推奨したいと思います。

(了)



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