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単独孤立文明

大塚耕平

単独孤立文明

総合情報誌「FACTA」で連載はじめました。こちらもご覧ください。

新連載 大塚耕平 「α世代」に託す日本 :FACTA ONLINE
https://facta.co.jp/article/202012017.html


1.米中逆転2028年

1998年創設のコンサルタント会社ユーラシア・グループ。創始者は米国政治学者イアン・ブレマー。同社が1月に公表する「世界の10大リスク」は毎年注目の的。

このメルマガ及び毎年1月開催の僕のセミナーでも紹介していますが、去年は第1位が「米国政治の迷走」、第2位が「米中テクノロジーデカップリング」、第3が「米中関係」。コロナ禍の前でしたので、2020年のベスト3はいずれも米中関連でした。

中国の技術力向上を警戒し、米国は緊張感を高めています。その根拠の一例が特許を巡る動向。特許情報の調査運営企業(アスタミューゼ)公表のデータをご紹介します。

AI、量子コンピュータ、再生医療、自動運転、ブロックチェーン、サイバーセキュリティー、VR(仮想現実)、ドローン、導電性高分子、リチウムイオン電池の先進10分野の特許出願数は2000年から19年までの累計で約34万件。

10分野のうち中国が9分野で首位。量子コンピュータのみ米国が1位。日本は2005年には自動運転など4分野で首位でしたが、現在は全分野で2位以下。

出願人の国別では中国が約13万件と全体の4割。日米(いずれも約2割)の倍。中国を牽引する「BATH(百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ)」4社の10分野出願数は2015年以降で6千件を上回ります。

2015年、中国は「中国製造2025」を打ち出すとともに、第13次5ヶ年計画で「知財強国」を目指す方針を顕示。研究開発費は2017年時点で日本の3倍(約51兆円)、首位米国(約56兆円)に肉薄。現時点では逆転している可能性大です。

何とも気の滅入る情報ばかりですが、上記の調査運営企業は特許内容の影響力、波及力を踏まえ、独自手法で特許の「質」も評価しています。

それによれば10分野の上位10社の全100社中、64社は米企業、18社の日本が続き、中国はファーウェイ1社。中国は多数の企業が出願数嵩上げに寄与している構造です。

WIPO(世界知的所有権機関)が公表する特許国際出願件数というデータもあります。国際特許はPCT(特許協力条約)に基づく制度。1つの加盟国への出願で複数国に出願するのと同じ効果があり、企業や研究機関、大学等の技術力を示す指標とされています。

2019年の世界全体の出願数は265800件(前年比5%増)で過去最多。中国が米国を抜いて初の世界トップになりました。

中国の出願数は58990件(同11%増)。米国は1978年以来40年間首位でしたが57840件(同3%増)で2位転落。日本は52660件(同6%増)で前年と同じ3位。

個別企業では中国ファーウェイが3年連続首位。中国スマートフォン大手オッポは前年17位から5位に躍進。2位の三菱電機は日本企業で唯一トップ10入り。

上位50社のうち6割以上を中国と日本、韓国が占め、アジア勢が技術革新を牽引。出願数全体の52%はアジア、欧米は23%です。

こうした情勢を受けて米中技術覇権争いは一段と激化。今年3月のWIPO事務局長選挙では米国が中国人候補者の当選を阻止。対決姿勢を強めていたトランプ政権からバイデン政権に代わり、今後の両国の動向から目が離せません。

12月10日、日本経済研究センターはアジア太平洋地域15ヶ国・地域を対象に2035年までの経済成長見通しを公表。コロナの影響が今後5年内で収束する標準シナリオと5年超となる深刻化シナリオの2つを想定して経済規模の推移を算出。

昨年時点では2035年までに中国が米国を抜くことはないとしていましたが、今回の調査では標準シナリオでは2029年、深刻化シナリオでは2028年に米中逆転を予測。

コロナの影響で米中の就業者数や研究開発(R&D)費等に差が出ることを想定。米国では感染が再拡大している一方、中国では感染が沈静化しているためです。

深刻化シナリオでは、2035年の中国の名目GDP(香港含む)は41.8兆ドル。日米合算規模(41.6兆ドル)を上回ります。

2035年の1人当り所得では、米国9.4万ドル、日本7万ドルに対し、中国2.8万ドル。しかし、中国は貧富の格差が日米以上に激しいことから、富裕層の所得水準は日米平均を相当上回ると推測できます。


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