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単独孤立文明

大塚 耕平

単独孤立文明

3.牛に引かれて善光寺参り

最後に年末恒例の干支シリーズ。干支は十干十二支で構成されますので「十」と「十二」の最小公倍数「六十」でひと回り。六十歳で自分の誕生年の干支に戻るので「還暦」。十干は「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」、十二支は「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」です。

また、干支は「陰」「陽」の2つ、及び「木」「火」「土」「金」「水」の5つの性質との関連で様々な解説がなされます。陰陽五行説(陰陽思想及び五行思想)です。

水は木を育み、木は火の元となり、火は土を作り、土は金を含み、金が再び水を生む。「五行」の組み合わせにより「相生」「比和」「相剋」「相侮」「相乗」に分類され、相互に強め合ったり、弱め合ったりします。

2021年の干支は「辛丑(かのとうし)」。干支の38番目。陰陽五行では、「辛」は陰の金、「丑」は陰の土。両者は「相生(土生金)」、すなわち相互に強め合う関係です。

十干は太陽の巡りと生命の循環サイクルを表わします。「辛」は8番目なので、初秋、結実の含意。十二支は植物の循環を表します。「丑」は2番目なので、発芽、萌芽の含意。

つまり「これまでの循環が終わり、新たな循環が始まる」しかも「それは相互に強め合って大きな変化につながる」という解釈が成り立ちます。

コロナ禍でこれまでの常識が通用しなくなり、アフターコロナ、ウィズコロナが叫ばれる中、何となく言い得ているような気がします。

「辛」の「金」は冷徹、「陰」は静かに事態が進行する含意。さらに「辛」という漢字は針を表した象形文字。苦痛につながり「つらい」「ひどい」などの含意。静かに辛く大きな変化につながることを想起させます。

「丑」の「土」は発芽の含意。しかも「陰」なので静かに芽吹きます。「丑」という漢字は指に力を込めて曲げた形を示す象形文字。発芽直前の曲がった芽が種子の硬い殻を破る様子を表しています。

十二支の漢字は本来動物とは関係ありませんが、人々が覚えやすいように動物が当てはめられました。「丑」は「牛」です。

古来、牛は人間とともに生きてきた動物であるため、諺や慣用句の多い動物です。いくつかご披露します。

いち押しは「牛に引かれて善光寺参り」。何かの出来事によって、思いがけなく良い方向に導かれることを意味します。

善光寺近くに住む信仰心のない老婆が、外に干していた布を牛が角に引っ掛けて走り去りました。牛を追って行くと善光寺に来てしまい、そこで説法を聞いたのを機に老婆は信仰心を持つようになったという言い伝えです。

現在のコロナ禍が、結果的に世界が良い方向へ転換する契機になれば不幸中の幸いです。

次は「牛耳を執る」。「牛耳る」という日常用語の語源であり、中国の歴史書「春秋左氏伝」の故事に由来します。

春秋戦国時代に諸侯が同盟を結ぶ際、牛の耳を裂いて流れた血を飲んでお互いに忠誠を誓い合ったそうです。その儀式を執り行う盟主を「牛耳を執る」と称するようになり、転じて「支配する」「制する」意味になりました。

米中対立が激化する中、世界を牛耳る国はどちらか。フォルトライン上の単独孤立文明日本が米中の狭間で生き抜くためには、技術覇権を牛耳ることが不可欠です。

日本の未来を担う若者には「食牛の気(しょくぎゅうのき)」「牛を食らうの気」で頑張ってほしいと思います。虎や豹は子どもの時から自分より大きな牛を食べようとするという意味から、幼い頃から大きな目標を持つことの喩えです。

その若者の「角を矯(た)めて牛を殺す」ことは避けなくてはなりません。曲がっている牛の角をまっすぐに矯正しようとして、牛を死なせてしまっては意味がありません。

欠点が長所になる場合もあります。先輩世代の価値観や過去の常識を若者に押し付け、結局才能を潰すようでは日本の復活はありません。

60年前の「辛丑」は1961年。ソ連のガガーリンが有人宇宙飛行に成功し、米国も追随。同年8月「ベルリンの壁」が建設されて東西往来禁止となり、米ソ対立が激化。

2021年「辛丑」の米中対立の帰趨は如何に。衰退気味の日本を立て直すために、努力したいと思います。それでは皆様、良い年をお迎えください。

(了)



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