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ブラック・エレファント

大塚耕平

ブラック・エレファント

早いもので2021年もまもなく1ヶ月が過ぎます。1月20日、米国バイデン政権がスタート。中国習近平主席は昨日(25日)の世界経済フォーラム(WEF)オンライン会議での講演で「新冷戦、世界を分断」と発言。早速バイデン政権を牽制しています。今年も米中対立の動向から目が離せません。メルマガで適宜、ファクトと情勢分析をお伝えします。


1.中国標準2035

2028年に中国がGDP(国内総生産)で米国を抜いて世界一。昨年12月公表の日本経済研究センターと英国経済ビジネス研究センターの予測が一致しました。

従来、中国が米国を上回るのは2035年頃と予測されていましたが7年前倒し。コロナ禍の経済への影響が中国より米国の方が大きいためです。

先入観、固定観念は恐ろしい。この状況下でも「日本は貿易で挽回できる」と主張する有識者がいることに驚きます。データを客観的に認識することが必要でしょう。

IMFの最新データ(2020年1~5月分)によると、米国の貿易相手のシェア最大はEU18.1%、続いてカナダ13.8%、メキシコ13.6%、中国12.4%。日本はASEAN8.2%にも及ばない5.3%。

「中国との貿易が伸びる」との意見も聞きますが、これも短絡的。中国の最大貿易相手は今やASEAN1014.7%とEU13.9%。対立する米国は11.2%。日本は7.3%にとどまり、韓国6.6%に抜かれる可能性が高い状況です。

ASEANに期待する向きもありますが、地域共通経済圏は域内貿易が中心。ASEANは域内貿易が22.1%を占め、それに匹敵するのは中国18.8%。続いて米国11.1%、EU8.3%、日本は8.0%です。

EUは一層顕著。域内貿易が59.8%、続いて米国6.4%、中国6.0%が並び、日本は何と1.3%に過ぎません。

国際貿易における日本の存在感低下は否めません。根拠なく「たぶん大丈夫」「実はまだ凄い」と思い込むことなく、事実を直視することが重要です。

GIIはWIPO(世界知的所有権機関)が2007年から公表している技術力ランキング。日本は4位からスタートし、2012年に25位まで転落。若干回復して2020年は16位ですが、韓国は10位、中国は14位。既にアジアのトップではありません。

スイスに本拠を置くビジネススクールIMDは1989年から各国の競争力ランキングを発表。日本は1989年から92年まで1位でしたが、2019年は30位、2020年は34位に下がりました。

技術力や競争力は人材に影響されます。英国THEランキングは世界1500校超の大学の教育水準を評価しています。

2021年版では1位から13位まで英米が独占。アジアトップはアジア勢過去最高20位の清華大。100位内の中国勢は6校(前年3校)、日本は東大(36位)、京大(54位)のみです。

教育水準は技術力や競争力のベースとなる科学論文数に顕著に現れます。科学技術・学術政策研究所が公表した科学技術指標2020によると、年平均論文数で中国は30.6万と米国28.1万を抜いて首位。

日本6.5万は前回調査(2010年)から順位を下げ、3位ドイツ6.7万に次ぐ4位。論文数は10年前とほぼ同じですが、他国の論文数が急増しており、相対的存在感は低下。また、注目度の高い(引用率の高い)論文では9位にとどまっています。

技術力、競争力、教育水準、科学論文数は特許数に反映します。特許情報の調査企業(アスタミューゼ)公表のデータが参考になります。

AI、量子コンピュータ、再生医療、自動運転、ブロックチェーン、サイバーセキュリティ、VR(仮想現実)、ドローン、導電性高分子、リチウムイオン電池の先進10分野の特許出願数は、2000年から19年までの累計で約34万。

最新2017年では、10分野のうち中国が9分野で1位。量子コンピュータのみ米国が1位。日本は2005年には自動運転等4分野で1位でしたが、現在は全分野で2位以下。国別では中国が約13万と全体の4割。日米(いずれも約2割)の倍です。

中国は国家戦略「中国製造2025」とともに、知財強国を目指す「中国標準2035」も打ち出しました。研究開発費は2017年で日本の3倍(約51兆円)、米国(約56兆円)に肉薄しています。

こうした状況はユニコーン(企業価値10億ドル以上のスタートアップ企業)数にも反映されます。米調査会社(CBインサイツ)によると、全体数は昨年11月に500社に到達。国別では米国242社、中国119社、日本はわずか3社です。


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