455

世界と教育

大塚耕平

世界と教育

前号からのインターバルが短いですが、455号をお送りします。毎年恒例のユーラシアグループの「世界10大政治リスク」と世界終末時計の「残り時間」。メルマガで一緒にお伝えしようと思っていたところ、「残り時間」がなかなか発表されず、このタイミングとなりました。27日、ようやく発表。おそらく「残り時間」を減らすか否か、議論があったのだと思います。まずは「世界10大政治リスク」からです。


1.米国の分断

ユーラシアグループは1998年に政治学者イアン・ブレマーが設立した政治リスク専門のコンサルティング会社。

毎年年初に同社が発表する世界の10大政治リスク。約10年前、僕自身が毎年1月に開催するセミナーで紹介し始めた頃は知らない人が多かったですが、最近はニュースやマーケットの材料にもなり、定着しました。

1月5日、今年の10大リスクが発表されました。第1位は「米国の分断」。バイデン政権発足後も、トランプ支持派が息を吹き返し、米国が混乱することを懸念しています。

第2位は「コロナ問題長期化」。ワクチン接種が円滑に進まず、パンデミックも続き、高水準の財政赤字、失業等、世界に深刻な負の遺産を残すと予想しています。

第3位は「グリーン化」。主要国がカーボンニュートラルの方向に向かっていますが、あまりに野心的な気候変動対策は企業や投資家のコスト増になると指摘。グリーン化の過大評価に伴うリスクに警鐘を鳴らしています。

第4位は「米中対立」。トランプ政権は終わったものの、米中対立の基本構造は変わらず、コロナ対策、技術覇権、安全保障を巡って激化を予想。

第5位は「データ競争」。米中対立に伴うネットや技術のデカップリングによって、データを巡る対立が激化。第4位と連動するリスクです。

第6位は「サイバーリスク」。サイバースペースにおける国家や企業の行動ルール構築が前進せず、サイバー攻撃やデータ盗難のリスクが高まると予測。

第7は「トルコ」。昨年は第10位にランクインしていたトルコ、今年はさらにリスクが高まります。経済や民族対立等、国内の不満を外に向けるため、強硬な対外姿勢を示し、国際的緊張を煽るかもしれません。

第8位は「産油国」。世界のグリーン化の流れに影響されて原油安や通貨安が進むと、中東・北アフリカ産油国の動きが波乱要因になると指摘しています。

第9は「メルケル首相退陣」。EU内での強い発言力に加え、対米中関係で存在感を発揮してきたメルケル首相の退陣は、世界の政治バランスに不安定化させると分析しています。

第10位は「中南米」。コロナの感染拡大も影響し、中南米諸国の従来からの政治・社会・経済問題が一段と深刻化。ポピュリズムの台頭や混乱を予想しています。

次は、1月27日に発表された世界終末時計の残り時間。まずは世界終末時計について復習です。

世界終末時計(Doomsday clock)とは、核戦争等による人類絶滅(終末)を午前0時に準(なぞら)え、終末までの残り時間を「あと何分」と示す時計のことです。

日本への原爆投下から2年後、冷戦時代初期の1947年に米国の科学者等が危機を感じて始めた企画です。具体的には米国「原子力科学者会報」の表紙絵として誕生しました。

原子力科学者会は原爆を開発したマンハッタン計画の参加者等が中心となって組織され、「原子力科学者会報」では核兵器の危険性について警鐘を鳴らしています。

開発して警鐘を鳴らすというのも不条理な話ですが、科学者もやってしまったことの重大さに気がついたということです。

終末時計の時刻は、当初、同誌編集主幹のユダヤ系米国人物理学者ユージン・ラビノウィッチが中心となって決めていましたが、同氏の死後は「会報」の科学安全保障委員会が協議し、時間の修正を行っています。

つまり、人類滅亡の危険性が高まれば残り時間が減り、低まれば残り時間が増えます。時計は「会報」の表紙に掲載されますが、シカゴ大学にはオブジェが存在します。

科学安全保障委員会は、ノーベル賞受賞者を含む各国の科学者や有識者等14人で構成されています。過去最長は17分。最初は残り7分(1947年)からスタートしました。


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