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タワマン建て替え問題

大塚耕平

タワマン建て替え問題

2.メリットとデメリット

当初は、容積率や日照権等の制約から、タワマンには広い土地が必要となり、土地取得が容易な郊外や河川沿いに立地する物件が中心でした。

1997年、容積率上限が600%に規制緩和され、廊下・階段等が容積率計算から除外され、日影規制を適用除外とする高層住居誘導地区が導入されました。

これを機にタワマン建築ラッシュがスタート。東京湾臨海部のみならず、大都市近郊の鉄道沿線や地方都市にもタワマンが建築され、都心・大都市回帰現象にもつながりました。

日本最高層は大阪市中央区「ザ・キタハマ」(54階、209m)。建築中の最高層は来年竣工の東京都港区「虎ノ門・麻布台プロジェクト西棟」(64階、263m)です。

名古屋のランドマークのひとつである矢田川沿いのザ・シーン城北アストロタワーは1996年竣工。地上45階、160mで、完成当時は日本一でした。

居住者にとってタワマンのメリットは、眺望が良い、駅周辺等の便利な場所が多い、ラウンジ等の共用設備の充実等があげられます。

税制面のメリットもあります。固定資産税が戸数割となるため、相対的に負担が小さくなります。また2017年度税制改正によって、売買価格が高い高層階ほど相対的に高い税率となり、階による不公平感も是正されました。

デメリットもあります。駅に近い便利な場所でも、自分の部屋までの移動が大変です。特に朝の時間帯はエレベーターが混み合います。景観の観点から、洗濯物や布団を干せない場合もあります。

高層階で携帯電話が使いづらいこともあります。携帯基地局の高さは約40m。電波は下向きのため、概ね14階以上は電波が入りにくくなる可能性があります。

災害時の留意も必要です。耐震構造やエレベーター性能は配意されているものの、地震時には階段移動を余儀なくされることがあります。

長周期地震動等への対応は行われていますが、実際に被災してみないと耐震構造やエレベーター性能は検証できません。移動手段を失う高層難民の発生が懸念されます。因みに、高さ100m以上の場合は屋上ヘリポート設置が義務付けられています。

維持管理費、大規模修繕費の負担もあります。分譲マンションの入居者は管理組合に入り、組合が建物の維持管理・修繕計画を立てて将来の老朽化に備えます。タワマンは一般マンションに比べ、その費用が相対的に大きくなります。

タワマンは入居者が多く、管理組合での合意形成が難しい点もあります。低層階と高層階では価格差が大きく、修繕等の原因に対する認識も異なり、区分所有者間の所得・資産格差も影響して、管理費負担等の公平性を巡って難しい問題を抱えます。

上述のとおり、タワマンの建築ラッシュは2000年前後にスタート。約20年経過したことから、最近、第1回の大規模修繕に直面しているタワマンが増えています。

外壁や水漏れ等、修繕項目はいろいろありますが、ゼネコンやデベロッパー関係者から聞いた感じでは、管理費や修繕費は一般マンションより相当高くなっているようです。

今からまた15年、20年経過すると、2回目の大規模修繕の局面となり、2050年を過ぎる頃には3回目に遭遇します。

2000年以降、デベロッパーは子育てファミリー層を対象に拡販したことから、2回目、3回目の大規模修繕の頃には住民が高齢化しており、資金負担力の格差が生じている可能性もあります。

十分な資産を有する区分所有者もいるでしょうが、年金収入等に依存する世帯では大規模修繕費の負担に耐えられないかもしれません。

高度成長期のニュータウンが、2000年頃以降に住民の高齢化問題に直面して現在に至っていますが、それと同様か、あるいはそれ以上に深刻な問題につながるかもしれません。

他にもあります。医療関係者の中には、高層階に住むことの健康面への影響、例えば女性の流産、子供の低体温症、アレルギー疾患等の傾向が指摘されています。

子供の教育面でも、高層階の子どもの方が低層階の子どもより成績が良い傾向があるとの指摘も聞きます。所得水準との関係かもしれません。

一方、高層階の子どもは外に出る機会が少なく、刺激による身体感覚、様々な事象の実体験が乏しい結果として、身体反応に相対的に時間を要する傾向も指摘されています。


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