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タワマン建て替え問題

大塚耕平

タワマン建て替え問題

3.建て替え問題

当然ですが、ビル等の建築物は老朽化し、いつかは建て替えが必要です。都心や大都市中心部のオフィスビルは次々と建て替えられています。

オフィスビルと賃貸マンションは建て替えが容易です。それはオーナーが1人または少数だからです。建て替えたいと思えば、入居者が契約どおりに退去するのを待つだけです。

ところが分譲マンションの建て替えはかなり難しい。タワマンはとくに困難です。

全国の旧耐震基準(1981年以前基準)のマンション総数は約104万棟。このうち、これまでに建て替えられた物件は約300棟だそうです。

なぜ分譲マンションは建て替えが難しいのか。ご存じの方も多いと思いますが、あまり詳しくない方向けに簡単に説明します。

マンションの区分所有権は私有財産です。老朽化すれば、区分所有者の多くは建て替えを希望するでしょう。その際、建て替える資金を誰が出すかが問題です。

東京中心部等の好立地の分譲マンションであればこの問題をクリアできます。旧基準で建築され、規制緩和後の容積率が余っている場合がほとんどだからです。

例えば面積1000平方メートルの土地で容積率上限が600%の場合、床面積6000平方メートルまでの分譲マンションが建築できます。

都心の容積率600%の地域にある面積1000平方メートル、床面積2000平方メートル、築50年の分譲マンションを建て替える場合、床面積6000平方メートルまで拡大できます。つまり、4000平方メートル分を建て増すということです。

その4000平方メートル分を新たな購入者に売却する代金で建築費用を捻出します。従来からの入居者は建て替え費用を一切負担せず、従来と同面積の新築の部屋を得られます。

入居者(購入者)が増える分だけ区分所有権は減りますが、新築の部屋が負担なしで入手できるわけですから、建て替えに反対する従来の入居者はいないでしょう。

しかし、場所が都心ではなく、東京郊外で最寄りの駅まで徒歩15分の分譲マンション、しかも容積率上限が建築時と変わっていない場合はどうでしょうか。

この場合、建て替え費用はすべて現在の入居者の負担です。取り壊し費用も含めて、1戸当たり数千万円と想定されます。建て替え期間中の仮住まい費用も発生します。

郊外型の分譲マンションは区分所有者の入れ替わりが少なく、新築時から入居して高齢化しているケースが多いと想定されます。建て替え費用を負担できる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。建て替えについての賛否が分かれる可能性が高いと考えます。

現在の区分所有法等の関連法は、区分所有者の80%が賛成すれば建て替え決定が可能であり、規定上は反対者の住戸の強制買い上げもできます。しかし、その調整役を受けて立つ人は現実にはいないでしょう。こうした実例は聞いたことがありません。

建て替え後に負担した数千万円よりも高い資産価額の住戸を得られるケースなら上記の実例が起こり得るかもしれませんが、郊外型分譲マンションでは難しいでしょう。

では、どうしたらいいのか。私有財産である区分所有権を制限する新法を作るか、現行法の運用規定を変更するしかありません。しかし、仮に新法制を作れても、建て替え費用の問題は残ります。

建て替え時に容積率を大幅に緩和すればよいとの発想も出てきますが、売れなければ意味がありません。場所が郊外では販売の保証はありません。

タワマンの老朽化、建て替え問題も同じです。タワマンの場合は建物の取り壊し費用が一般マンションよりも大きいうえ、さらに容積率を緩和することも容易ではありません。

これは東京五輪選手村周辺、東京ベイエリアのタワマン固有の問題ではなく、日本全体を悩ますブラックエレファント問題です。

高齢化、老朽化によるタワマン廃墟化。ひょっとすると、タワマンという住居形態は壮大な社会実験、リスク資産かもしれません。

今から対策を考える必要がありますが、なかなか妙案が浮かびません。外国資本等が採算度外視で全入居者から高値で買い取って建て替えることは想定可能ですが、東京都心部を外国資本に押さえられることは別の問題を惹起します。

今国会で外資土地取得規制法案がようやく提出されますが、対象土地は防衛施設周辺等に限られています。実はそれ以外も安全保障上の大きな問題です。安全保障は軍事だけではありません。

開発を許可した政府、拡販したデベロッパー等の企業グループは、地震や液状化のリスクも理解していたはずです。解決策に無関係というわけにはいきません。今後、議論をしていきます。

(了)



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