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ロビンフッター相場の深層

大塚耕平

ロビンフッター相場の深層

2.ダブルバブル

ロビンフッターというニューカマーも登場した今の株価はバブルか否か。この論争は、実際にバブルが崩壊しない限り、決着しません。

バブル派も非バブル派も金融緩和と財政出動がコロナ禍を支えている事実は否定できず、これを止めることを主張し難い状況です。

株式市場の神様のように扱われたFRB(米連邦準備制度理事会)グリーンスパン元議長も「バブルは終わってみないと分からない」と語っていました。バブル論争よりも、現状に至った経緯、及び今後の展開に影響する要因整理が重要です。

コロナ前の日米株価の傾向と背景は異なりました。日本はアベノミクスに端を発する黒田日銀総裁の異次元緩和。しかも日銀がETFを買って株価を直接支えていました。

一方、米国は米中貿易戦争の影響緩和のための景気対策。トランプ大統領がFRBパウエル議長に緩和を強要。金融緩和が社債市場に影響を与えていました。

信用力の低い企業も社債で資金調達が可能となり、その社債をパッケージングした証券化商品が販売され、低金利下で運用難の金融機関がそれを購入していました。

社債発行企業は調達資金による自社株買いで株価を上昇させ、株主と経営者はストックオプション等で稼得。利害関係者のウィンウィン構造の社債バブルでした。

ところが昨年初からのコロナ禍。社債バブルも、それによる株価高騰も崩壊。すると、リーマンショックから教訓を得ていた政府とFRBは未曾有の規模の財政出動と金融緩和を断行。FRBは社債の大量購入も行い、社債バブルが再燃しました。

コロナ対策の政策効果によって株価も高騰。コロナバブルで最高値を更新する米国株価に連動して日本の株価も高騰。現在に至っています。

非バブル派は、今はバブルではないことの根拠として、リーマンショックや日本の89年バブルとの比較論を語ります。

リーマンショックも89年バブルも、借金が投資に回り過ぎたことで発生しました。しかし、コロナバブルは「借金による投資拡大」ではなく、実体経済に急ブレーキがかかったことに対する財政政策、金融政策の結果として発生しています。

主要国政府はリーマンショックで信用収縮の怖さを経験したため、長短金利がゼロからマイナスゾーンになっても、財政拡大を支える金融緩和を深掘りししました。一度は暴落した株価を回復させ、その後の高騰につながっています。

また、リーマンショックや89年バブルはデリバティブ商品や土地が投機対象。今回はそうした現象は前回ほどは起きておらず、健全な企業株が買われていると主張します。

コロナ禍に対応したDX(デジタル・トランスフォーメーション)や新需要を取り込んだ企業の業績は好調です。それらの株が買われているのであり、現在の株価の動きは理性的、合理的と評価しています。

89年バブルの経験が活かされ、かつてのような意味でのバブルは発生していないとの見方です。

また、今回は日本単独の株高ではない点も強調します。89年バブルは85年プラザ合意後の円高対策としての金融緩和に伴う日本単独バブル。今回はコロナ禍克服のため日米欧3極同時の金融緩和及び財政出動に伴う株価高騰。根本的に異なると主張します。

そして、コロナ禍発生前後で信用リスクを負う主体が変化。コロナ前は専ら民間部門でしたが、コロナ後は政府部門が牽引。とりわけ米国において顕著です。

以上のとおり、非バブル派が今の日本株価はバブルではない、あるいは89年バブルとは異なると主張する根拠はいろいろありますが、現在の状況が超金融緩和による「カネ余り」がもたらす金融相場であることは否定できません。

これが、企業業績の改善が後押しする業績相場に本格的に転換していくかどうか、その点が今後のポイントです。

現在、業績が好転しているのはエネルギーや消費財等、業種に偏りがあります。逆にコロナ禍で現在の業績が芳しくないばかりでなく、コロナ収束後も消費者行動やライフスタイルの変化によって先行きが危ぶまれる業種も少なくありません。

この2極化状況が今後どうなるかも、コロナ後の景気動向や株価に影響を与えます。


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