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イベルメクチン

大塚 耕平

イベルメクチン

3.大村博士とメルク

イベルメクチンは1981年にヒトより先に動物へ投与開始。ウシの寄生虫駆除にも使われていますが、牛肉に成分が残留するため、許容値が設定されています。水溶性が低い一方、脂溶性が高く、脂肪細胞と肝臓細胞に局在し、ほとんど尿中排泄されません。血中半減期が約47時間と長く、副反応はほとんどなく、臨床上有用な薬物です。 上述のとおりコロナの特徴的症状がサイトカインストーム(免疫暴走)。イベルメクチンはサイトカインストームとウイルス増殖の抑止に有効と期待されています。

既に世界27ヶ国から有効性を認める研究報告が44件公開されています。合計15420人に投与され、予防89%、早期治療82%、死亡率75%の改善が観察されています。ハーバード大学による投与群704例の致死率は1.4%、同数の非投与群は8.5%。人工呼吸器装着患者では7.3%と21.3%の差があります。

時系列で整理します。2020年4月、米国ユタ大学研究チームがイベルメクチンにコロナによる死亡率改善効果があるとする報告書を発表。人工呼吸器使用患者のうち、イベルメクチン未使用症例の死亡率は21.3%、使用症例では7.3%と約3分の1。患者全体では、未使用症例の死亡率8.5%に対して使用症例では1.4%と、約6分の1に抑制されたそうです。

同年4月4日、豪州モナッシュ大学研究チームは、イベルメクチンでウイルス複製を48時間以内に止めることができたと発表。早期実用化を表明。同年5月8日、これらの研究を受け、ペルーは早くもイベルメクチンを治療薬として承認することを発表しました。

2021年1月4日、英国リバプール大学は、イベルメクチン投与患者573人中8人の死亡に対して、プラセボ(偽薬)投与患者510人のうち44人が死亡したと発表。致死率が最大80%改善したほか、ウイルス除去時間を短縮できることも判明と説明。同年3月5日、仏バイオテック企業(メディンセル社)がイベルメクチンの安全性を証明する分析結果を発表。

2021年入り後、報道されただけでも、南アフリカ、スロバキア、チェコ等で治療薬としての承認、採用を発表。因みにアフリカでは、イベルメクチンはオンコセルカ症(糸状虫症)患者にボランティアが配布しているほど安全だとされています。

コロナ対策(とくにワクチン接種)の最先端を走るイスラエルも、イベルメクチンがウイルスの排出量抑制、期間短縮、症状改善に効果があり、既知の用量であれば非常に安全であるとの見解を表明しています。

日本では2020年5月6日に北里大学がイベルメクチンの治験を実施すると発表。同年12月4日、厚労省のコロナ診療手引き(第4版)に国内治験が行われている薬剤としてイベルメクチンを追記。2021年1月26日、東京都がイベルメクチン治験を都立病院等で実施検討と判明、2月9日、東京都医師会長が自宅療養者の重症化防止のための緊急使用提言、3月9日、東京都医師会が自宅療養者に対して副作用を説明したうえで投与検討と発表。

イベルメクチン製造元のメルクが効果に疑問を呈する一方、大村博士は「作用機序」から判断して変異株にも効くうえ、飲むのが簡単で、服用回数も少なくて済むと使用を「作用機序(Mechanism of Action)」は薬学用語。薬が標的分子(タンパク質)にどのように作用して効果が発現するかの「仕組み」。対照語は「作用機構 (Mode of Action)」。薬による細胞レベルの機能的、解剖学的な「変化」を示すそうです。

メルクはなぜ否定的なのか。大村博士は雑誌の中で「メルクはイベルメクチンが使われては困るという考え」と指摘し、企業利益の問題が絡むと述べています。

メルクはワクチン開発に失敗したのち、新治療薬候補モルヌピラビルの治験を進めています。イベルメクチンは1錠700円程度に対し、新薬は1錠数万円と想定され、当然後者を推奨したいでしょう。イベルメクチンの有効性が公認されれば、高い新薬は不要となり、投入した開発費も回収できなくなるリスクがあります。

因みにレムデシビルは1人分24万円です。3月4日、米医学誌(JAMA)がコロンビアにおける治験でイベルメクチンの安全性と有効性は確認できなかったと発表。米ユタ大学の発表論文も取り下げられていることが判明。

3月8日、FDA(米食品医薬品局)がイベルメクチンを使用しないように注意喚起。コロナ治療薬としては未承認であり、リスクがあることを強調しました。

素人には何が正しいのか判断できませんが、新型ワクチン開発技術が確立した直後にコロナパンデミックが発生し、人類史上初めてウイルスベクターワクチンやmRNAワクチンが投与され始めたことも含め、いろいろ考えさせられます。



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