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東芝買収提案

大塚 耕平

東芝買収提案

2.金融緩和とガラパゴス

CVCの目的は本業の成長。したがって、協業することで新たな利益を生み出し得るベンチャー企業、スタートアップ企業が投資対象です。出資者である大企業(CVC)側は、ゼロベースから自社で研究開発を行うよりも、低リスク、低コストで新規事業を立ち上げることが可能です。独創的な技術やアイデアを有するベンチャー企業との連携は、大企業側に新製品や新市場開拓をもたらす可能性があります。大企業が確保しているM&Aや研究開発予算の一部をベンチャー企業に提供することで、イノベーションや新たな市場獲得につながることを期待しています。

ベンチャー企業は様々なリスクを抱えており、計画通りに事業が進捗しないことが多々あります。不確実性の高いベンチャー企業をM&Aによって自社内に取り込むより、CVC経由で出資することでポートフォリオ構築とリスク軽減の一石二鳥です。ベンチャー企業、スタートアップ企業側にとって、自社の事業内容と関連の深い大企業とパイプができることは大きなメリットです。日本企業は長く続いた系列型産業構造の影響が残り、系列外のベンチャー企業、スタートアップ企業との連携は活発とは言えません。情報も不十分です。ベンチャー企業、スタートアップ企業と連携するためには、インターフェイスとなる人や組織が必要であり、それがCVCです。ベンチャーの技術やアイデアを理解し、速いスピードでビジネスを進める機能が求められています。

CVCを使うメリットとしては、第1に有望ベンチャー企業へのコンタクト、第2に新事業の立上げ、新市場参入のリスク低減。大企業は低リスクで新しいビジネスに着手できます。 CVCの組成は、出資元である事業会社が子会社としてジェネラルパートナー(無限責任組合員)を作り、自社がリミテッドパートナー(有限責任組合員)として出資するパターンと、VC等をGPに指名し、自社はLPとして参画する2人組合形式の2つのパターン。それぞれ一長一短があります。前者は、自社の方針をCVCの投資判断に反映させ易いので、自社の戦略が明確な場合に有効な選択です。その反面、投資先発掘や投資判断が主観的かつ近視眼的になり易い懸念があります。

また、ベンチャー企業の発掘、投資、売却、ファンド管理等のVC業務を自力で行う必要があるため、人材等のリソースが必要です。一方後者は、委託するVCの情報網や知見を活用できるため、客観的かつ自らは気づかない視点から投資できるという効果が期待できます。GPに業務委託することで、自らは投資対象との事業検討に集中できます。

ところでPEF(プライベート・エクイティ・ファンド)という呼称もあります。VC、MBO(マネジメント・バイアウト)ファンド、企業再生(ターンアラウンド)ファンド等と呼ばれているものの総称というイメージです。VC、CVC、PEFは、投機筋とも言われるヘッジファンドとは異なります。

欧米では、これらの投資ファンドは銀行と並ぶリスク資金のサプライヤーであり、ファンド・オブ・ファンズも少なくありません。経済のエコシステムの一員です。投資先の事業発展を企図するため、LBO(レバレッジド・バイアウト)すなわち買収先の資産やキャッシュフローを担保として資金調達する場合が多いのも特徴です。

日本は金融緩和の長さと程度が世界で突出していますが、主要国の金融緩和もコロナ対策で深堀りされています。その結果、レバレッジ効果はリーマンショック前を超える水準となっているほか、LBOファイナンスの金利水準も極端に低下しています。金余り状態の証左です。

世界の国債の4分の1がマイナス金利状態の異常な環境下、投資家は利回りを求めてPEFに出資しています。おまけに日本は、「失われた30年」とも揶揄される企業や産業のガラパゴス化から脱しておらず、人材や技術の潜在力はあるものの、次の戦略が見い出せない状態が続いています。 超金融緩和で彷徨うマネーにとって、日本の企業や産業は垂涎の投資対象です。最先端であるために投資されているのではなく、磨けば光る品が骨董品屋の店の奥に散在しているイメージです。


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