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N501YとE484K

大塚耕平

N501YとE484K

2.N501YとE484K

昨年1月、国内で初めて確認された中国武漢株は、その後消滅。昨年3月から始まった第1波は欧州株由来。そして現在、欧州株由来のN501Y変異株に置き換わりつつあります。

変異株はなぜ発生するのか。ウイルスは人の細胞に入り込み、遺伝物質のRNAをコピーさせて増殖する際、一定確率でコピーミスを起こし、変異が発生します。

現時点における変異の主流は2つ。ひとつはN501Y。ウイルスタンパク質501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わり、スパイクタンパク質が人の細胞と結合しやすくなったことを意味します。英国で最初に見つかりました。 南ア株とブラジル株は484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リシン)に変化したE484K変異を併せ持つ二重変異株。英国型は感染力が強く、重症化率や死亡率が高いようです。

一方、現時点ではワクチンの効果に大きな影響はないとされています。南ア型、ブラジル型も感染力は高いものの、重症化率は変わらないようです。抗体のウイルス攻撃力を低下させ、再感染リスクを高めると言われています。E484K変異の特徴かもしれません。

変異株は子どもへの感染リスクが高いことも確認されています。国立感染研は4月初時点の大阪と兵庫の新規感染者の約7割が英国型と推定しています。

さらに新たな変異ウイルスも続々見つかっています。フィリピンからの入国者からN501YとE484Kの両方の変異(二重変異)があるウイルスを検出。インドで猛威を振るっている変異ウイルスも検出。やはり二重変異。インド型とは別の二重変異ウイルスも見つかっています。さらにE484K変異のみを有する別のウイルスも約500例見つかっていると聞きます。上記のように抗体の力を弱める傾向が観察されており、要注意です。

ところで、政府がスクリーニング検査の対象としているのはN501Yのみ。E484Kは感染力が弱いとしてスクリーニング対象にしていません。E484Kの感染力はN501Yほど強くなく、ワクチンの効力低下の影響もないとしているほか、検査試薬が十分にないこと等を理由に、検査対象に含めることには慎重のようです。

しかし、今や感染者数はN501Yより多く、子供の感染率、再感染率等に懸念があり、監視の必要性があります。検査負担が大きいことが対象を狭める理由にはなりません。E484Kのみ変異株には、治療上の必要性等から自治体や医療機関が独自検査で対応しています。今後、英国型以外の新たなE484Kのみ変異株の動向に注意が必要です。

コロナ禍を克服するには、もちろんワクチンが重要です。ワクチンについてはメルマガ459号で整理しました。しかし、生産量(供給量)にネックがあるうえ、将来的に変異株がワクチンの有効性を低下させる可能性があります。したがって、治療薬の重要性が一段と増しています。当初話題になったアビガンは治験中。抗寄生虫薬イベルメクチンについてもメルマガ459号でお伝えしました。

今月、バリシチニブ(商品名オルミエント)が承認されました。国内でのコロナ治療薬承認は、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3例目です。米国ではレムデシビルと併用して使用することで効果があるとして、去年11月から緊急使用が認められました。 バリシチニブは関節リウマチやアトピー性皮膚炎の治療薬です。肺炎治療に効果があり、レムデシビルとの併用投与になります。対象となるのは酸素吸入が必要な中等症から重症の成人患者。1日1回錠剤を服用し、投与期間は14日間までです。

バリシチニブは、免疫機能が暴走して炎症が起き、急激に症状が悪化するサイトカインストームを抑える効果が見込まれています。海外治験では、バリシチニブをレムデシビルと併用した場合、レムデシビル単独で使用した患者と比べて回復が早く、死亡率も大幅に低下しています。


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