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インド型三重変異株

大塚 耕平

インド型三重変異株

3.三重変異

インドでは他の変異株も検出されています。ベンガル州を含む4州で検出されたE484QとL452Rに加えP681Rという変異がある三重変異株もそのひとつ。現地ではベンガル株と呼ばれています。ケンブリッジ大学の研究では、P681Rは感染力が高いうえに感染が速く、免疫システムから逃れることをサポートするエスケープ変異という特徴を有しているそうです。

また、ワクチン接種等で抗体を有する人の方が抗体のない人よりもインド型に感染しやすいとの驚くべき見解も含まれています。ベンガル株のことか、従来のインド型のことか判然としません。現在確認中です。 本当に免疫回避力があるならば、現在のワクチンでは効かなくなる可能性があり、由々しき事態。ワクチンの構造変更、改良が必要でしょう。なお、インドでの三重変異はもう1種類検出されているとの情報があり、これも確認中です。

さらに、インド細胞分子生物学研究所(CCMB)の論文がN440Kという新たな変異を有する株を取り上げています。最初に確認されたインド南東部アーンドラ・プラデーシュ州の頭文字を取ってAP型と呼ばれています。潜伏期間が短く、3日程度で重症化。感染力は極めて強く、初期の変異株より少なくとも15倍も毒性が強いと伝わります。実験では10倍から1000倍とも指摘。この数字がそのまま人の感染に当てはまるとは思いませんが、要注意です。

AP型は英国型や従来のインド型を駆逐すると想定されているようですが、ウイルスの複製力と感染力等は分析中。現時点では、N440K変異株は複製力が弱い一方、感染力は強いと見られているようです。同論文によれば、1年前は複製力の強いウイルスが席巻していたそうですが、その後、感染力の強い変異株に取って代わられたことを記しています。ウイルス量が少なくても、感染力が強ければ感染しやすいと言えます。

複製力と感染力は必ずしも比例しません。この2つの両方に秀でた変異株が出てきたら厄介です。世界で接種が進むワクチンが効かない変異株の出現も懸念されます。新たな変異株に対応したワクチンに作り変えることが必要になります。

さて、日本。政府はGW直前にインドからの入国者の水際対策を強化。しかし、入国禁止にしたわけではなく、待機日数を伸ばしたのみ。現在の変異株に対するPCR検査は英国型、南ア型、ブラジル型のN501Y変異しか検出できません。

メルマガ前号でお示ししたとおり、E484Kはスクリーニング対象外。新しいE484Q、L452R、P681R、N440K等は当然対象外。したがって、インド型の検査には1週間から2週間かかるゲノム(全遺伝情報)解析が必要。国立感染研はインド型を検出できるPCR検査導入を検討中だそうです。 東大医科学研究所はインド型が拡大した場合、感染者数や死亡者が増える可能性を指摘しています。

現在の諸対策に関わる問題はいろいろありますが、ひとつは空港検疫。空港検疫では15分から30分で結果が出る抗原検査を使っています。PCR検査は検体中に5個以上のウイルスが存在すれば感知しますが、抗原検査では100個以上必要です。無症状の感染者はウイルス量が少なく、抗原検査では偽陰性となるケースが少なくありません。

検査で偽陰性の感染者が相当数入国している可能性があります。抗原検査をすり抜けたインド型感染者が既に感染を広めていても不思議ではありません。この状態では、ベンガル株やAP株もやがて上陸するでしょう。

空港検疫での感染者の傾向は先行きを暗示しています。英国型と同様に数ヶ月後、あるいは夏頃には流行の主流がインド型に置き換わっていく可能性があります。 政府は強い危機感を持って水際対策を強化すべきであり、インドでの行動歴がある渡航者の入国をより厳しく規制することが適当と考えます。首相が言う通りにワクチン接種が進捗しても、インド型が主流になればワクチンも効かなくなる可能性があります。昨年冬は、春節で中国人観光客が押し寄せ、第1波につながりました。

本気で感染を防ぐためには、あらゆる入国を止めるしかありません。中途半端な対策のままでは、同じ失敗を繰り返すでしょう。 なお、政府は変異株が海外から流入したと想定していますが、国内で同様の変異株が自然発生している可能性も否定できません。今後の監視ポイントです。

(了)



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