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アンモニア発電

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アンモニア発電

7月及び8月上旬の異常な猛暑の後は、台風の連続と長雨と豪雨。今週後半には猛暑復活の予想ですが、気候変動の影響を例年以上に実感する今年の夏です。

世界各国が21世紀半ばのカーボンニュートラルを目指し始めた中で、日本も遅れを取ることのないよう、技術開発と実用化に腐心することが重要です。

1.マトリョーシカ的構造

日本(2018年)のCO2排出量は、電力部門で4.5億トン、非電力部門で6.1億トン、合計で10.1億トンです。これを実質ゼロにするカーボンニュートラル実現のハードルは当然低くはありません。

非電力部門の内訳は、産業3.0億トン、運輸2.0億トン、民生1.1億トンであり、それぞれの分野が努力しなければなりません。

例えば、非電力・運輸に目を向けると、一番身近なのが自動車です。EV(電気自動車)や水素によるFCV(燃料電池自動車)は非常にわかりやすい努力の事例です。

しかし、最近はそのEVのバッテリーやFCVの水素を製造する過程でのCO2排出量も勘案するLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)という概念も登場し、カーボンニュートラルを巡る戦略構築は非常に輻輳しています。

話が拡散しないようにFCVに目を向けます。例えば2017年に政府は、2020年までにFCV4万台、水素ステーション162ヶ所整備を計画しました。水素ステーションは実現されたものの、肝心のFCVは3800台。なかなか思い通りにはいきません。

こうした状況下、昨年秋、政府は水素を活用したカーボンニュートラル対策のウェイトを非電力部門から電力部門にシフトさせました。

それは、仮に水素ガスタービンによる発電所1基(出力100万kw)が実現すれば、FCV400万台に相当するからです。

しかし、水素発電も「LCAの呪縛」からは逃れられません。発電に使う水素をどのように入手するか、あるいは製造するかという課題に直面します。

海外から入手(輸入)するというのはひとつの考え方ですが、その際には輸送手段とコストがポイントになります。

輸送手段については、LNG(液化天然ガス)の技術やノウハウが似ていることから、日本はその経験を活かせそうです。

コストについては、輸入する場合であっても、国内で生産する場合であっても、課題解決は容易ではありません。

水素は製造方法によって3つに分類されます。製油所や化学プラントで副次的に発生する水素は、その過程でCO2を排出することからグレー水素と呼ばれます。現在、国内で使用されている水素のほとんどがグレー水素です。

天然ガスや褐炭等の化石燃料から水素を製造し、その過程で発生するCO2を回収・貯留(CCS)する場合はブルー水素と呼ばれます。CCSは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略。因みにこれに「Utilization」を加えたCCUSは、回収・貯留したCO2をさらに利用することを意味します。

CO2を排出せずに製造する水素はグリーン水素です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの電力を使い、水の電気分解によって水素を製造します。

蛇足ですが、太陽光や風力のインフラを製造する際にもCO2を排出します。そういう「マトリョーシカ的構造」を言い出すと、カーボンニュートラルは戦略が難しくなります。

ご存じのとおり、マトリョーシカは何重にも重なるロシアの木彫り人形のことです。「マトリョーシカ的構造」は筆者の造語ですが、要は「終りがない」というイメージです。

水素発電を実現するために必要なのは、原料の水素と水素ガスタービンエンジン。後者は既に存在しますので、問題は原料水素の確保です。

輸入するか、製造するか。輸入する場合の水素の液化温度がマイナス253度(天然ガスはマイナス162度)という技術的ハードルはあるものの、LNG等の経験を活かせば問題なさそうです。

しかし、原料コスト、つまり「海外製造コスト+輸送コスト」が高ければ、結局、既存の発電より優位にはなりません。

輸送コスト分だけでも安くしようと思えば、国内製造という結論に至ります。しかも、それがグリーン水素であれば一番望ましい展開です。

そのためには、水素を太陽光、風力等の再生可能エネルギー、あるいは原子力で製造するという発想に至るでしょう。

すると今度は再生可能エネルギーや原子力のコスト問題にぶつかります。エンドレスになりますので、ここではこれ以上の「マトリョーシカ的構造」には踏み込みません。


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