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アンモニア発電

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アンモニア発電

2.逆転の発想

電力部門のエネルギー構成(2018年)は、天然ガス37.1%、石炭31.9%、石油等6.8%、原子力6.2%、再生可能エネルギー18%です。

再送可能エネルギー比率が低いという構造をなかなか変えられない日本。変えられないならば「変えないまま何とかする」という「逆転の発想」から個人的に注目しているのがアンモニアです。

アンモニアは肥料(全体の8割)及び化学製品材料(同2割)として広く利用されています。肥料のうち半分強は尿素の材料となっています。

常温常圧で無色透明の気体であるアンモニアの分子式は「NH3」で、水素(H)と窒素(N)から構成されています。アンモニアは多くの国で生産されていますが、アンモニア合成のために必要な水素の大半は天然ガス等の化石燃料由来です。

そのアンモニアを発電燃料として使用することが研究されています。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない「カーボンフリー」の物質です。発電燃料として使用してカーボンニュートラルにつなげるという発想です。

既に技術開発が進んでおり、石炭火力のボイラーにアンモニアを混ぜて燃焼させる「混焼」は実証実験中。その先にあるのが、アンモニアだけで燃焼させる「専焼」です。

脱硝装置や脱硫装置等は既存設備を利用することができ、投資負担を抑えながらCO2排出を削減できます。ボイラーにアンモニアを送り込むパイプラインを増設し、専用のバーナーに改造すれば燃焼可能です。

火力発電のCO2排出量は日本国内のCO2排出量の約4割を占めているため、アンモニア「混焼」「専焼」が実用化されれば、削減効果は甚大です。

アンモニアは既に多用途で利用されており、生産・輸送技術や安全対策も確立しています。陸上ではパイプラインやタンクローリー、海上ではタンカーで運ばれるほか、サプライチェーンも確立しており、既存インフラを活用できることから、水素よりも初期コストが抑制できます。実用化に向けたハードルが低いことは、次世代エネルギーとして大きな優位性です。

窒素を含むアンモニアは燃焼すると窒素酸化物(NOx)を排出する難点がありますが、アンモニアを20%「混焼」しても、石炭「専焼」と同じ程度に保てることが確認されています。

逆に、アンモニアを火力発電が排出するNOx対策に利用可能です。NOxにアンモニアを結びつけて化学反応を起こせば、窒素(N2)と水(H2O)に還元できるからです。

現在実証実験中の石炭火力「混焼」以外では、ガスタービン「専焼」、燃料電池(船舶用SOFC)、アンモニア工業炉等があります。燃料アンモニアの用途は、発電・産業・輸送の三分野に幅広い可能性があります。

世界のアンモニア生産量(2019年)は約2億トンです。生産国は上位から中国、ロシア、米国、インドの4ヶ国で全体の半分以上を占めます。これらの国はアンモニア生産に欠かせない化石燃料の資源国です。

世界の輸出入量(2018年)は約2000万トン。生産量の1割ほどしかありません。つまり、生産されたアンモニアの9割は、生産国内で主に農業用肥料として消費されています。

輸出第1位はトリニダードトバゴ、以下、ロシア、サウジアラビアと続きます。この3ヶ国で輸出量の約半分を占めます。

輸入第1位は米国。トリニダードトバゴの最大輸出先です。以下、インド、モロッコ、韓国、中国と続き、この4ヶ国で輸入量の約半分を占めます。

日本のアンモニア消費量は2019年で約108万トン。うち約8割を国内生産、約2割をインドネシアとマレーシアから輸入しています。

石炭火力の発電コストは1kWh10.4円。現在のアンモニア価格でアンモニア発電のコストを試算すると、20%「混焼」では12.9円、100%「専焼」では23.5円。

化石燃料にはコスト的に対抗できませんが、水素「専焼」の97.3円と比べれば4分の1程度です。

アンモニア発電実現のためには、高効率の発電技術の開発とともに、製造・輸送コストの安いサプライチェーンの構築が必須です。


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