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アンモニア発電

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3.LCAの呪縛

CO2排出ゼロのアンモニア発電は是非実現したいところですが、既に具体的な取り組みが始まっています。

東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAが2024年度から碧南火力発電所(愛知県)でアンモニア20%「混焼」に転換する計画です。中部電力が2016年度から進めてきた技術開発をJERAが継承したものです。

国内に27ヶ所の火力発電所を有するJERAは国内のCO2排出量の1割強を占めていることから、昨年10月、同社が2050年CO2排出実質ゼロを宣言したことは画期的です。

再生可能エネルギー拡大のほか、火力発電におけるアンモニア「混焼」や水素「混焼」を導入するとのことです。将来的な「専焼」も想定しているようです。

仮に国内電力会社が保有するすべての石炭火力発電所で20%「混焼」を行うとCO2排出削減量は約4000万トン、将来的に「専焼」が実現すると削減量は約2億トンです。

但し、石炭火力発電1基(100万kW)でアンモニア20%「混焼」を行うと年間約50万tのアンモニアが必要になります。国内全ての石炭火力で20%「混焼」を行うには2000万t必要になり、これは現在の世界全体の貿易量に匹敵します。

こうした事情も見越してか、ノルウェーの肥料大手ヤラ社が豪州で再生可能エネルギーを使ってアンモニアを製造し、日本の火力発電所向け燃料として販売することを計画中です。

同社は仏電力エンジーと提携し、豪州北西部ピルバラの既存プラントで太陽光発電を利用して水素を製造すると報道されています。再生エネでつくるグリーンアンモニアです。日本への供給が実現すれば、発電燃料用グリーンアンモニアの初の国際取引になります。

アンモニアを利用するプロジェクトは、調べてみると他にもあります。例えば、水素の「キャリア」つまり輸送媒体としての利用です。

大量輸送が難しい水素を、輸送技術の確立しているアンモニアに変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法です。

アンモニアを石炭火力のボイラーで「混焼」する以外にも、アンモニアを直接燃焼させてガスタービン発電に使う手法も検討されているそうです。

仮に50万kWh級の大型ガスタービンでアンモニア「専焼」が実現すると、1基で年間110万トンのCO2排出削減効果があると試算されています。

ほかにも、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と呼ばれる燃料電池で利用される水素を燃料アンモニアに置き換えることや、船舶?ディーゼルエンジンや工業炉で燃料アンモニアを利用する技術開発も行われています。

今後が期待されるアンモニアですが、冒頭の水素と同様にアンモニアをどうやって製造するのかという課題に直面します。

アンモニアも「グレー」「ブルー」「グリーン」に3分類されます。アンモニア燃焼の際にはCO2を排出しないものの、アンモニア製造の過程でCO2を排出すれば意味がないという「LCAの呪縛」です。

やはりここでもCCSやCCUSが鍵になるほか、再生可能エネルギーを使ってアンモニアを製造したとしても、その再生可能エネルギーのインフラ製造時のCO2排出が問われる「マトリョーシカ的構造」です。

日本だけのカーボンニュートラルを考えるのであれば、カーボンリサイクルやクレジット(排出枠)によるオフセット、すなわち排出権取引なども利用可能ですが、世界全体、地球単位では「LCAの呪縛」と「マトリョーシカ的構造」から逃れられません。

以上のとおり、水素とアンモニアは、製造、輸送、利用の各段階で密接に関係しています。水素と空気中の窒素を合成すればアンモニアが生成されるし、アンモニアを水素化することもできます。水素とアンモニアは極めて近い関係です。

そのために、産官学各界の中で、FCV等を念頭に置いた水素中心派と、発電を念頭に置いたアンモニア中心派に分かれているような気がします。

コロナ禍で創薬やデジタル等、日本の科学技術が遅れていることが白日の下に晒されましたが、その原因のひとつに、関係者の利害対立によって遅々として物事が進まない、匍匐(ほふく)前進でしか物事が運ばない日本社会の構造や体質があると思います。

カーボンニュートラル対策における水素とアンモニアの鬩ぎ合いが同じ轍を踏むことにならないよう、微力ながら努力したいと思います。

大雑把に言えば、小型輸送はEV、大型輸送はFCV、発電はアンモニアという棲み分けを関係者が共有し、政府も支援して、技術開発と実用化を一気呵成に進めることが肝要です。

スウェーデンとノルウェーのエネルギー企業が主導するオランダの水素火力発電は2025年稼働予定です。天然ガス火力発電から水素への転換です。天然ガスから水素を作る時に発生するCO2は船でノルウェーに送り、CCS処理すると聞いています。

既に再エネ価格が大幅に低下し、コストメリットで先行する欧州等に引き離されないよう、水素とアンモニアでは日本が先行することが期待されます。

(了)



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