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第6次エネルギー基本計画

事務所

第6次エネルギー基本計画

2.パリ協定

締約国の最高意思決定機関であるCOP(締約国会議)は条約発効翌年から毎年開催されています。事務局はボン(ドイツ)にあります。

原則論の先が難題です。総論賛成、各論反対は人間社会の常。「共通だが差異のある責任」の実効性を担保する先進国と発展途上国の合意、先進国間の調整は容易ではありません。

COP1は1995年にベルリンで開催。COP3までに2000年以降の排出量目標を設定すること、目標達成に必要な具体的措置を決めること、発展途上国に対しても削減努力を促す方法を検討すること等を内容とする「ベルリン・マンデート」を発表。

1997年、京都COP3で締約国は「京都議定書」に合意。6種類のGHGについて、2008年から2012年までの間に先進国全体で1990年対比平均5.2%削減の全体目標と国別目標を決定。そのための手法である排出権取引(ET)やクリーン開発メカニズム(CDM)等を含む政策パッケージは「京都メカニズム」と呼ばれました。

CDMは、先進国が発展途上国に資金・技術を供与してGHG削減対策事業を行い、その削減量を当該先進国の削減達成値に参入できるシステムです。

ところが2001年、GHG排出量世界1位の米国が、発展途上国の不参加を不満として「京都議定書」から離脱。本音は排出量規制が米国経済に悪影響を及ぼすと考えた故です。

たしかに、大量のGHGを排出する中国、インド等の発展途上国に削減義務が課されなければ、地球温暖化の抑止効果は期待できません。

しかし、だからといって最大排出国米国の離脱に他国が理解を示すことはありません。米国の「京都議定書」離脱を巡る論理は、その後登場したトランプ大統領の主張と同じです。

2002年COP8はニューデリーで開催。先進国と発展途上国の対立は続いたものの、「共通だが差異のある責任」を再確認し、「京都議定書」未批准国に対し批准を強く求める「デリー宣言」を採択。

2005年、発効要件である1990年のGHG排出量の少なくとも55%を占める55ヶ国の締結国が批准し、「京都議定書」は発効しました。

発展途上国にも義務を課す制度の確立は2009年のコペンハーゲンCOP15での採択が目標でしたが、COP15では産業革命以前からの気温上昇を2度以内に抑えるという原則目標に合意したものの、発展途上国の義務に関してはまとまりませんでした。

それから6年後。2015年にパリで開催されたCOP21 で「パリ協定」が成立。各国に排出量削減目標の作成・提出、及び目標達成のための国内対策が義務づけられました。

また、各国の対応を国際的に検証していくグローバル・ストックテイク(世界全体での進捗確認)というルールを構築。

「パリ協定」は画期的な国際合意ですが、各国の排出削減実績に対しては拘束力がありません。また、各国目標値を合計しても平均気温2℃引下げ目標には達しません。グローバル・ストックテイクの結果、削減量が足りないと判明した際の対処方針も定められていません。

さらに、GHG排出量、削減量の算出方法も各国裁量。今回のCOP26で多少の標準化議論が行われるようですが、基本は変わりません。各国の事情に配慮した結果であり、「パリ協定」の成否、実効性は未知数です。

「パリ協定」は2016年、中国や米国の批准によって55ヶ国以上及び世界のGHG排出量の55%を超える国の批准という要件を満たし、発効しました。

ところが同年秋、米国トランプ氏が大統領に当選。温暖化そのものを否定し、2017年「パリ協定」離脱を宣言。トランプ大統領の主張は2001年の米国の論理と同じです。

4年後の2021年、バイデン大統領に代わって米国はパリ協定に復帰。今後の展開はどうなるかわかりませんが、そうした中で日本が第6次計画を閣議決定されました。

つまり、各国の対応が不透明な中で日本は第6次計画を閣議決定。各国の戦略と思惑には奥深いものがあるということを認識したうえで、第6次計画に向き合う必要があります。

日本や欧米先進国は足並みを揃えて2050年CNを目指しているのに対し、中露両国は目標年を2060年の10年遅れに設定。しかも、当面2030年まではGHG排出量増加を続ける方針。COP26でも削減目標上積みはしないでしょう。

中国習近平主席は昨年9月の国連総会で「海外での石炭火力発電所の新設は行わない」とCN推進への協力姿勢を示す一方、上述のとおり国内では2030年までは排出量増加。石炭火力も使います。二重基準というより、巧みに立ち回っている印象です。

時と場合によって「中国は発展途上国」と主張し、他国からの支援獲得や国際的な履行義務軽減に対処してきた手腕はある意味で見事。名を捨てて実を取る戦略です。

後述のとおり、再エネ設備の最大サプライヤー国家となった中国にとって、石炭火力発電所を海外輸出しないことは自国の再エネ設備受注増に繋がり、合理的な対応です。

CN目標を先進国比10年遅れにしたことも、その一環。日米欧各国と比べ、10年遅れの対応によって得られる経済的メリット(再エネ等のコスト負担軽減)は大きいと言えます。

また、その間に再エネ技術等も進化します。先行メリットならぬ、後行メリット。より高度な後発技術を活用できるため、GHG削減目標達成にも寄与します。


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