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第6次エネルギー基本計画

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第6次エネルギー基本計画

3.戦略と戦術

以上の経緯等を踏まえつつ、第6次計画の課題、及びそれに付随するリスクを整理しておきます。第1にエネルギー確保です。

再エネの19年発電比率実績は18%、2030年目標は36%から38%、原子力は実績6%に対して目標20%から22%。それぞれ実績の約2倍と3倍以上の目標。野心的な目標ですが、無謀との指摘も聞きます。

その一方、LNG火力19年実績37%から2030年目標20%、石炭火力は同32%から同19%、石油は同7%から同2%。いずれも減少させます。

既に中国が日本を抜いて最大LNG輸入国に台頭し、LNG、石炭、石油輸入国としての日本のバーゲニングパワーは低下。輸出国にとっての優先度は落ち、いざという時のエネルギー確保リスクに晒されます。

第2に実現可能性。第6次計画では、産業、業務、家庭、運輸の各部門で省エネ対策を積み上げ。2030年において燃料ベースで6200kl程度(電力量で400億kWhから500億kWh程度)の省エネを前提としています。

公共施設へのソーラーパネル設置等、政府自ら行う対策は進捗管理できますが、民間企業や家庭の対応は強要できません。例えばLED化、公共交通機関の利用促進、トラック輸送効率化等々が想定されますが、具体的な誘導政策は不詳。実現可能性は担保されていません。

第3は中国リスク(その1)。太陽光、風力等、再エネ設備の多くは中国が最大供給国。例えば、太陽光発電設備モジュールは中国企業が世界シェア70%以上。2000年代に世界シェアの過半を占めた日独企業は今や見る影もありません。

世界の再エネ導入は中国企業の成長につながり、中国のエネルギー覇権獲得に寄与する構図です。CNで儲かる中国は、CNの動きを歓迎しています。

第4は中国リスク(その2)。中国製設備が全国津々浦々に設置され、その周辺には防衛施設等もあります。ファーウェイ通信機器と同様の安全保障リスクも懸念されます。

表向きの設置者が日本人、日本企業でも、実際の出資者、事実上のオーナーは中国人、中国企業という事例が多数確認されています。

第5はコスト負担の不条理。現在、電気代に加算されている再エネ促進賦課金は1世帯当たり(21年度)年10,476円、年間2.7兆円。

上記第3の構造から、加算分還流先は外国企業、とりわけ中国企業になります。つまり、再エネコストは日本国民が負担し、その利益還流先は中国企業という不条理です。

第6に国内関連産業振興策の不毛。上述のリスクや不条理を回避するためには、再エネ関連設備の日本サプライヤーを育成することが期待されますが、振興策は不詳。

太陽光だけではありません。世界の陸上風力設備の約55%は中国製。サプライヤー世界上位15社のうち10社は中国企業。洋上風力設備でも中国企業は急成長しており、2020年実績ではシェア50%を上回る見込みです。

第7は上記の諸点に対する日本の戦略、善後策の浅薄さ。グリーン産業育成は第6次計画の達成、それに伴う上述の課題やリスク克服のために必達です。ところが、第6次計画における、洋上風力、地熱、水素、アンモニア等の2030年発電量に占める割合は僅か約1%。

各分野とも各国が積極的に取り組んでおり、熾烈な国際競争下にあります。2030年までに当該産業の育成、成長が日本経済伸長にどのぐらい寄与できるのかがポイントです。

第8は経済見通しの甘さ。2019年度実質GDP550兆円に対して、第6次計画では2030年度660兆円、年率1.3%成長を見込んでいます。しかし民間シンクタンク予想では同600兆円、年率0.7%にとどまっています。

政府見通しを実現するには、第7のグリーン産業育成等を現実化する必要がありますが、それが見通せない状況。そこが問題です。政府は「将来的にはサービス産業が日本経済を牽引する」としていますが、その根拠も保証もありません。

日本経済を牽引してきた製造業の競争力が相対的に低下している中で、その製造業にコスト増の負荷をかける第6次計画のマイナス効果をどうカバーするか。具体策が必要です。根拠のない「サービス業が牽引する」との希望的観測だけでは通用しません。

第9に停電リスク。今年に入り、再エネ先行の米国、豪州、英国、中国等で大規模停電が問題化。日本は島国であるため、欧米諸国のように隣国からの電力供給ネットワークが構築できません。再エネの安定性とバックアップ体制をどうするかが課題です。

第6次計画に付随する現時点で気づいた課題等は以上のとおりですが、週明け月曜日(11月1日)に資源エネルギー庁からヒアリングする予定です。結果的に、原子力の位置づけをどうするかに帰着しますが、冷静な議論ができない日本。最大の問題です。

地球温暖化対策の「目標」の英訳には「Goal」と「Target」が併用されています。「Goal」は最終的な目標。「Target」は具体的な数値目標です。

日本は「Target」を意識して実現不可能な数値目標を掲げていますが、他国は「Goal」と受け止めているような気がします。「パリ協定」の拘束力についても冷静に認識し、国家としての論理的で現実的な戦略と戦術を駆使していくことが肝要です。

(了)



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