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COP26開催中です。温暖化対策をしなければ2100年に平均気温は約3.5度上昇し、生態系は甚大なダメージを受けると予測。そうした事態回避のために気温上昇を1.5度に抑えることが2015年「パリ協定」で定められた目標です。それをもとに「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の2018年報告書「1.5度の地球温暖化」は2050年カーボンニュートラル実現を掲げました。具体的にはCO2排出量を2030年までに2010年比約45%減らし、2050年に実質ゼロとすることです。

1.人新世(アントロポセン)

地層のできた順序を研究する学問は「層序学」と呼ばれます。地質学の一部門であり、地質学は高校の授業で言えば地学の範疇に含まれます。

その層序学によると、地球の歴史の最も大きな区分は「冥王代(6億年)」「始生代(15億年)」「原生代(19.59億年)」「顕生代(5.41億年)」であり、合計46億年になります。

この46億年はさらに細かい「代」(古生代、中生代、新生代等)に分けられ、各「代」は「紀」(白亜紀、第四紀等)に細分化されます。

さらに「紀」は「世」(更新世、完新世等)に分かれ、人間の時代は1万1700年前に始まった「新生代第四紀完新世」に入ると定義されます。これが層序学の最近までの定説です。

「最近まで」と付言したのは、現在は「完新世」の次の「人新世」に入ったとする考えが専門家の間で広がり始めているからです。

その発端となったのはオランダの化学者パウル・クルッツェン博士の発言です。クルッツェン博士は1995年にオゾンホール研究でノーベル賞を受賞しています。

2000年2月、博士はメキシコで行われた地球科学の会議に出席していました。そこで「完新世」つまり1万1700年前から現在に至る地球環境の変化に関する議論を聞いている時に、突然叫んだそうです。曰く「もう完新世ではない、今は人新世だ」。

こうした会議や学会での不規則発言は極めて異例です。僕自身も学会に所属しているので、その異例さはよくわかります。しかもノーベル賞科学者の突然の発言。会場は静まり返ったものの、博士の突然の「新造語」は参加者に強い印象を残し、その会議の期間中に何度も言及されることになったと伝わります。

博士が発言した言葉は「Anthropocene(アントロポセン)」です。日本語ではとりあえず「人新世」と訳されています。

博士は2002年に英国科学誌ネイチャーに「人新世」の概念を正式発表。以後、「人新世」という表現は関係学会や科学誌等で盛んに使われるようになりました。

世界の人口は今や70億人超。農耕や牧畜が始まった紀元前8千年、つまり今から約1万年前は100万人だった人口は約7千倍になりました。

約1万年前から5500年かけて1億人に到達。さらに2500年経過し、紀元前後に2億人に到達。つまり、1億人増えるのに2500年要しました。

紀元1000年に3億人、1650年頃に5億人、1800年に10億人になり、ここから産業革命や近代化の影響で人口増加が加速。1900年に20億人となり、100年で10億人増えました。

化石燃料の大量消費が始まり、1960年には30億人。60年で10億人増え、そこから40億人(1974年)までは14年、50億人(1987年)までは13年、60億人(1999年)、70億人(2011年)までは各12年。そして今は73億人。国連は2050年の世界人口を約100億人と予測しています。

化石燃料大量消費は地球温暖化の原因となりました。未だに温暖化否定論者及び化石燃料原因説否定論者もいますが、少数意見です。

クルッツェン博士は人間の活動が地球史に影響を与える時代に入っていることを重視して「人新世」と称したのです。

米国の著名な生物学者エドワード・オズボーン・ウィルソン博士は「20世紀における人口増加パターンは、霊長類というより細菌の繁殖パターンに近い」と指摘しています。

ウィルソン博士の計算によると、人類の「生物量」は過去に地球に存在したあらゆる大型動物と比べて約100倍も多いそうです。コロナウイルスに悩まされている人間自身が「細菌並み」と指摘されるのは皮肉なことです。

46億年前、岩石惑星として誕生した地球のその後の地質学的歴史、すなわち月の形成、地軸の傾き、生命の誕生等の痕跡は、堆積した地層の中に残されています。

クルッツェン博士はなぜ「人新世」という概念を生み出したのか。それは、後世、地層に現代の特徴的痕跡が残るからです。

「人新世」入りの区切りについても議論されています。産業革命が起きた頃、化石燃料大量消費が始まった頃のほかに、1950年前後も有力候補です。

根拠はもちろん核兵器誕生(1945年)です。自然界には存在しない物質が地層に残ることから、その時代を地質学的に「人新世」と定義する考えです。


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