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MMTとTMTとRMT

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MMTとTMTとRMT

臨時国会で大型補正予算の審議中ですが、財源調達は日銀による事実上の財政 ファイナンスに依存せざるをえない状況です。11月末の日銀総資産対名目GDP 比は過去最悪の135%に達しています。今から9年前、第2次安倍政権発足直前の 2012年11月末の同比率は25%でしたので、実に5.4倍。財政状況、及び日銀の 信頼性がますます議論になると思いますが、議論しているうちに市場の洗礼を 浴びないことを祈ります。某自民党議員やエコノミストから「財政論争につい て意見を聞かせてほしい」と依頼を受けましたので、メルマガ上で認識を整理 します。ご参考になれば幸いです。

1.新「二兎論争」

12月7日、財政運営に関する自民党の2つの会合が開催されました。報道内容及び親しい自民党議員から聞いた話を整理すると以下のとおりです。

ひとつは「財政健全化推進本部」。最高顧問は麻生前財務大臣・元総理。もうひとつは「財政政策検討本部」。最高顧問は安倍元総理。前者は財政健全化を目指し、後者は財政拡大を求める会合のようです。

前者についても、前身の会合名には「再建」という文字が入っていましたが、「再建」が削られて「健全化」になったことから、以前とは少しスタンスが変わったという印象です。

後者の会合では安倍元総理が現在の日本の経済状況を良好と評価し、「今まで積極的な財政出動を行った成果である」と発言したと報じられています。

この会合の事務局長は西田昌司参議院議員。西田議員とは僕も親しい関係ですが、西田議員はMMT派。MMTは現代金融理論(Modern Monetary Theory)の頭文字です。

提唱者は米ニューヨーク州立大学ステファニー・ケルトン教授。ケルトン教授は2016年大統領選で民主党サンダース候補の顧問を務め、MMTが脚光を浴びました。

独自通貨を有する国は通貨を限度なく発行できるため、デフォルト(債務不履行)にはならない。インフレにならない限り、財政赤字は気にしなくてよい、国債はいくら発行してもよいとする理論です。つまり借金は紙幣を刷って返済できるという考え方です。

こうした考えに基づいて積極財政を求める意見が自民党内で強まっています。もちろん、国民の中にも同様の主張が以前より拡大している印象です。

MMT派では、基礎的財政収支PB(プライマリーバランス)目標を撤廃することも議論されています。

PBとは、社会保障、公共事業、防衛など、毎年の政策に必要な支出を毎年の収入(税収等)でどれだけ賄えているかを示す指標です。長年、財政健全化の目安とされてきました。

PB黒字化を提唱したのは小泉政権のブレーンだった竹中平蔵氏。小泉政権は2011年度黒字化を目標に掲げましたが、麻生政権はリーマン・ショック後の景気回復を優先して目標を2019年度に先送り。

その後の民主党政権でも2020年度に1年延ばされた後、安倍政権下でさらに2025年度に先送り。結局、一度も目標は達成されることなく今日に至っています。

現在、国と地方を合わせた債務残高は約1200兆円。こうした中で10月、財務省事務次官が月刊誌に寄稿し、現在の与野党の主張を「バラマキ」と断じて物議を醸しました。

MMT派つまり「財政政策検討本部」の会合では、財務次官寄稿は間違いであり、誤った財政目標のために景気が悪い時に消費増税を行い、悪循環に陥ったと結論づけました。

PB目標の見直しも視野に入れている西田議員は席上、次のように発言したと報じられています。以下、報道及び記者から入手した書き起こしメモのママです。

「財政は国債発行したからといって、破綻するという財務省の論理は正しくない。むしろ、それが社会の不安を作っている。自国建て通貨で出している以上、絶対に破綻しない。ただ、未来永劫いいのかというと、ある種の財政規律をもってやらないとインフレになって、大変なことになってくることは当然ありうるであろうと。ただ、その今、インフレですかという話だから。インフレの心配をして財政出動を止める話には誰が考えてもならない」

ここで、中ほどの部分に要注目です。曰く「未来永劫いいのかというと、ある種の財政規律をもってやらないとインフレになって、大変なことになってくることは当然ありうる」。

MMT肯定論のような結論部分だけが西田議員の発言として報道されることが多いですが、中ほどの部分をよく聞くと、MMT肯定論ではないような気がします。

故小渕首相の時代に「二兎論争」がありました。財政再建と経済成長を二匹の兎に喩え、どちらの兎を追うか、両方追うか、あるいは「二兎を追う者は一兎を獲ず」の諺(ことわざ)どおりなのか。

今回は新「二兎論争」の様相を呈しています。以下、対比のために、財政健全化を追求する考え方をTMT(Traditional Monetary Theory)、伝統的金融理論と記します。


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